雪月花 季節を感じて

2005年~2019年
2019年~Instagramへ移行しました 

益子の帯留め

2016年03月16日 | きもの日和
  

縁あって入手した濱田庄司(陶芸家、人間国宝)の帯留めです。

2011年秋に訪れた汐留ミュージアムの「濱田庄司スタイル」展にて、大阪グランドホテルのオープン記念品として制作されたという濱田の帯留の数々を見たとき、ひとつでいいからほしいな‥と、ためつすがめつ眺めたことでした。

益子焼特有のとろりとした飴釉と、濱田のあの大きな体躯から想像できない愛らしい赤絵と。どの帯にのせよう?と考えてすぐに思いついたのが、葛布の帯です。

閑かで、どこかなつかしい“工藝的なるもの”に魅かれます。

 

雪が育むきもの

2015年11月13日 | きもの日和
 

雪中に糸となし、雪中に織り、
雪水に洒ぎ、雪上に晒す
雪ありて縮あり
されば越後縮は雪と人と気力
相半ばして名産の名あり
魚沼郡の雪は縮の親といふべし

(鈴木牧之著 『北越雪譜』 より)


※ 写真は塩沢の真綿紬

 手織教室の研修旅行に参加し、新潟の塩沢、十日町、小千谷を訪ねました。十数年前に『北越雪譜』のこの一文に出合って以来の、越後の織の里を訪ねたいという願いがかないました。

 越後の織の里はどこも雪深い町。そのきびしい風土からじつに美しい布が生まれることを、じっさいに見て、肌で感じることができ、感激もひとしおです。主人のきものが訪問先の織物工場の証紙の付いた塩沢紬だったことを思い出し、残布(上の写真)を持参して織り子さんのお名前を調べていただくことに。二週間後、織元から丁寧なお返事が届きました。紬、お召、夏塩沢など、何でも織れてたいへん丁寧な仕事をされる現役の女性とのこと。その方のお顔や、毎日根気よく機に向かっておられるお姿などを想像しながら、ますますこのきものを大事にしたいとおもうのです。

 旅で学んだことひとつひとつを、これからのお稽古と機に向かう姿勢に活かしたい。
 


塩沢の星野織物さん。
訪問当日は貴重なお時間とたくさんのご教示を賜りました。有難うございました。

瑞穂の国のきもの

2015年05月28日 | きもの日和
 

渓流の音に雨添ふ田植かな
(渡辺 水巴)

田んぼの水が空の色を映すみずみずしい季節。整然とならぶ若苗を眺めていて、ふとひらめいたことがある。それは、これは蚊絣のきものと同じ景色だ。蚊絣って、この田んぼの景色の写しなんだ、ということ。

ずいぶん唐突な思いつきだったけれど、それから精緻な蚊絣のきものを見るたび、どうしてもこの田んぼの景色と重なってしまう。蚊絣をさいしょに織った偉大な人も、絣の技法を継ぎ展開してきた人たちや身にまとってきた人たちも、もちろんそんなことを考えなかったろう。でも、その無意識の底流に、きっとこの景色があったはず。 ‥そう思わずにいられない。



微細な藍の薩摩絣。

人はこれを“技術”というけれど、“無意識に湧出するもの”ととらえたら、これこそこの国の個性であり、文化なのだとおもう。

 

ラオスのパーロップ

2015年02月13日 | きもの日和
 

ラオス北部にくらすタイ・ルー族の敷布、パーロップです。パーロップは、母から娘へ、そして孫娘へと受け継がれる伝統的な染織技術により制作されるお嫁入り道具。これは20世紀半ば~後半のもの。

生成りの木綿布に、藍と茶の草木染め木綿糸で龍神、聖鳥、象、木、草花などを浮き織りしています。繊細な手仕事だけど、日本の刺しこぎんや菱刺しに比べると素朴でおおらかな印象。緯糸はすべて手紡ぎで、およそ100cm×200cmあるにもかかわらず、驚くような軽さです。

これを、帯に仕立て替えます。
仕上がりが楽しみ♪



←『清野恵里子のきものの愉しみ帯あそび』(集英社)に、パーロップで仕立てた帯が紹介されています ^^

 

型絵染め

2013年12月10日 | きもの日和
 
 すこし古い、型絵染めの紬のきものを安価で入手しました。手染めの味わいがあり、配色もすてき。後染めのせいか、生地がしっとりしています。なんと、しつけ糸がついたまま。なのに胴裏は黄変して八掛にうっすらシミも見られます。このきもの、いったいどうしたのでしょうね。寸法がちいさく、きものとして再生するのはムリだから、洗い張りをして帯や小物に仕立て替えるつもり。帯のたれ部分は同色の無地にしたいな~ 楽しみです ^^

幻の久留米絣

2013年05月23日 | きもの日和
 
 町のギャラリーでお会いしたご婦人がすてきだったので、許可を得て撮影させていただきました。十字絣の久留米絣に刺しこぎんの八寸名古屋帯というあこがれの取り合わせで、さらりと着こなしておられました。うかがえばご近所にお住まいのお茶の先生とのこと。お祖父さまの羽織を仕立てなおし、「もう何度も手洗いをしたからクタクタなのよ」というめずらしい十字絣のおきものは、久留米絣の人間国宝・森山虎雄氏の作品で、今ではもう織ることのできない逸品。何度も水をくぐり、長い時間をかけて育まれた紺絣は、冴えた藍の地に絣の白がはっとするほど際だっており、お目にかけたとたん「いったい何をお召しなのかしら!?」と目が離せなくなってしまったのでした。木綿とはおもえないほどしなやかで肌になじむ風合いに、日本人が古くから野良着として日常親しんできた紺絣とは、こういうものなのか‥と教えられた気がします。 

縞宇宙

2013年04月15日 | きもの日和
 
 銀座の和光ホールで開催中の「築城則子染織展」へ出かけました。副題に「縞-無限なる宙(そら)-」とあるごとく、“永遠に動きつつ永遠に交わらない”縞宇宙を夢見ごこちで浮遊する気分。この日は小倉縞を生んだ南国の風土に溶けこみたくて、藍の薩摩絣に紅型の帯を合わせたのが功を奏したのでしょうか、ふと背後から声をかけていただき、ふりかえってみると、お声の主は小倉縞のきものと帯をみごとに着こなした築城先生でした。とても恐縮しつつ、ほんのひとときだけ先生とお話をさせていただきました。
 この後は森くみ子さんの藍染め作品も拝見して、大好きなジャパンブルーの海に遊びました。

オリジナルの利休バッグ

2011年11月25日 | きもの日和
 
 雑誌の付録だったウィリアム・モリス(英国の詩人、デザイナー。1934-96)の木綿布で、利休バッグを誂えました。通年使えるよう明るいお色で‥とお願いしたら、こんなステキな仕上がりに。和装はもちろん、洋装にも使えそうです。

 優美な曲線を描く柳の葉の柄名は「ウイローボウ」。モリス自身がたいへん気に入っていたモチーフで、自宅近くのテムズ川沿いに繁茂する柳が川面に映るさまを表現したのだそう。
 じつは、モリスの付録の図柄は全6種類あったため、主人にたのんで書店でこの柄をわざわざ選んできてもらったのです。主人に感謝です ^^

 製作をお願いしたのは、京都の二条丸八のお店です。とても丁寧な仕上がりに大満足。次は更紗の古布でつくってもらいたいな。

 緑は大好きな色だけど、きものや帯には取り入れにくいので、こうして小物で楽しんでいます。
 

搗返し

2011年11月17日 | きもの日和
 
 主人の羽織用に購入した米沢紬の反物。精緻な入れ子菱の地紋にひかれたものの、青味の勝つ藍色が主人の気に入らず、思案の末、京都の悉皆屋さんに色かけ(引き染め)をお願いしました。

 「深みのある、黒に近い濃紺に」とお願いしてから、およそひと月。染め上がった反物は主人の希望どおりの色に生まれ変わりました。写真の手前がもとの色です。


 「濃紺」? それとも、これ以上深く染まらないという「留紺(とめこん)」でしょうか。横文字なら「ミッドナイト・ブルー」と呼びたいこの色にふさわしい表現はないのかしら‥と調べるうち、興味深い色名に出合いました。

 それが「搗返し(かちがえし)」です。
 「搗返し」は四十八あるという藍の色名のひとつで、かつては「別の色に染めた上から、さらに藍を染め重ねた色」(参照サイトはこちらです)を言ったのだそう。とすれば、まさに藍の上から藍を重ねたこの反物にふさわしい色名といえそうです。

 搗返しの色を羽織る主人の姿を想像しながら、羽裏を探しています。
 

染織iwasakiさん

2011年10月26日 | きもの日和
 
 きもの通の友だちから紹介されて以来、ずっと楽しみにしていた染織工房訪問が、とうとう実現しました ^^ 

 シンプルで風合いのよい草木染め手織り紬の魅力に惹かれて、わたしをふくめ四人でお訪ねしたのは、富士山のおひざもとにある染織iwasakiさんです。

 工房は、山あいの自然につつまれた閑かな場所に建つ、築120~130年という古色ゆかしい古民家。岩崎さんご夫妻のあたたかなおもてなしを受けながら、ところ狭しと陳列された美しい染織品の数々に、もう大興奮!のわたしたち。

 お邪魔するなり、染織についてご夫妻を質問攻めしたり、注文する帯や着尺の相談をしたり、ご主人の蘊蓄に耳を傾けたり、奥さまの甲斐甲斐しい割烹着姿と気遣いに感激したり‥と、きもの日和な秋の短日はまたたく間にすぎてゆきました。

風通しのよい広間で岩崎さんのお話を聴きながら、じっさいに生地にふれたり色をたしかめたり‥と、みな真剣。ひとくちに紬といっても、さまざまな糸の組み合わせにより、ひとつひとつ表情も風合いもちがいます。どれもこれもステキで、わたしたちは戸惑うばかり。

 わたしがお願いしたのは「さくらのきもの」。桜染めのきものが着てみたい‥というおもいが、まもなくかたちになります。


あまたの中から選んだ色見本


 岩崎さんのお仕事への真摯な姿勢と情熱を感じながら、すぎてゆくゆたかなひととき。作品もお暮らしぶりも、すべてがおふたりの気さくでほがらかで謙虚なお人柄そのままでした。

岩崎訓久さんと悦子さん。当日はたいへんお世話になりました。
一歩下がって控えめな悦子さんは、綾織りのおきものに割烹着姿。とってもかわいい奥さまです。次回の訓久さんの紬セミナー、みんな楽しみにしています。どうぞよろしくお願いします。


 染織iwasakiさんの秋の工房展は10月30日までです。また、12月3~10日は、東京・高円寺のギャラリー工さんにて展示会が予定されています。東京近郊の方はぜひお出かけくださいね。