染色家・吉岡幸雄先生(「染司よしおか」五代目ご当主)による日本の色についてのお話会に参加するため、紫野和久傳丸の内店へうかがいました。
テーマは「藍」。吉岡先生が収集された、日本のみならず世界中のたいへん貴重な藍染めの布や紙などを拝見しました。
ジャパン・ブルーとも呼ばれる藍は、日本ならではの色と思われがちですが、紀元前ものむかしから世界各地で藍染めが行われており、それぞれの風土に適した藍の研究がなされてきました。
わたしも、先日「世界の絣」展でナイジェリア(アフリカ)の木綿の紺絣を目にしたとき、それが日本のものに酷似していて驚きました。絹が中国を出発点にシルクロードを経て世界へ流通したように、もしかするとかつて「藍ロード」なるものが存在し、どこかの国を拠点に世界各地へ普及していったのかしらとそのときは考えましたが、先生の研究によれば、どうやら藍染めは自然発生的らしいです。
また、藍には高貴な藍と庶民の藍というふたつの系統があるという先生のご主張も興味深く、たとえば「辻が花」や「茶屋辻」といった将軍家にのみゆるされた美しく清んだ藍と、麻や木綿の紺絣の、濃くしっかりと染められた庶民の藍という、この日本に見られるふたつの藍の流れが、どの国にもみられるそうです。
「紺地銀泥経」(東大寺二月堂焼経。奈良期)、「紺地金泥経」(神護寺経。平安期)、茶屋辻の帷子(徳川家大奥のご婦人の夏衣。江戸元禄期)といった国宝級の残欠などをじっさいに手にふれ拝見しながら、数千年ものあいだ世界中の人々を魅了してきた「藍」という色の不思議と底知れない魅力に、ますますひきこまれたひとときでした。
このお話会への参加者は当選者のみの10名で、和久傳さんのお土産付きという、なんともぜいたくな丸の内イベントでした。藍を意識した和装で参加しました ^^
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和久傳さんのお持たせ
12月20~25日に日本橋高島屋にて「王朝のかさね色 吉岡幸雄の仕事展」が開催されます。期間中毎日、吉岡先生の解説があります。