今年も残すところ二週間余りですね。みなさまも年末年始のご準備等で外出の機会が多いことと思います。街もいそがしく動いているときですし、風邪が流行っていますから気をつけてお出かけください。
さて、「美の源流」というテーマで二回にわたりご意見ご感想をお寄せくださいまして有難うございました。このテーマについてお話ししたいことはまだあるのですけれども、しばらくみなさまからの情報を整理したり、すすめていただいた関連書籍を読む時間をとり、さらに考えを深めてゆきたいので、ここでちょっとひと息‥ 冬空を見上げようと思います。
オリオン座や冬の流星群など冬の夜空は星が主役になりますが、月は秋のころより輝きを増しています。
冬の月寂寞として高きかな (日野草城)
今宵(14日)は今月5日の望月から数えて九日目の月です。凍てつく夜空に煌々とかがやく月の光を受けていますと、しみついた師走の喧噪は去り、全身がすきとおってゆくようです。
冬枯れのけしきこそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。‥‥
年の暮れはてて、人ごとにいそぎあへるころぞ、またなくあはれなる。
すさまじきものにして見る人もなき月の、
寒けくすめる廿日(はつか)あまりの空こそ、心細きものなれ。
(『徒然草』第十九段より)
兼好先生は冬月のかかる空ほど心細いものはないというけれど、殺伐とした枯れ野をたったひとり西へゆく月もまた寂しくはないのでしょうか。
冬の日、後夜の鐘の音きこえければ峰の坊へのぼるに、月雲よりいでて道をおくる。
峰にいたりて禅堂にいらんとするとき、月また雲をおひてむかひの峰に
かくれなんとするよそほひ、ひとしれず月のわれにともなふかと見えければ
雲をいでてわれにともなふ冬の月 風や身にしむ雪やつめたき
(明恵上人)
冬の月と同じ孤独を友にした明恵上人は、「風が身にしみないか、雪はつめたくないか」と月にやさしく語りかけています。
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住まいの近くに住居の一階部分をティールームにしている家がありまして、そこで定期的に手づくりのものの展示やミニコンサートなどが行われます。わたしは時折町の図書館からの帰り道などにお茶をいただきに立ち寄るのですが、先日は近所の主婦たちが集まって趣味で作っているというアクセサリーを展示即売していて、その中に下弦の月をモチーフにした銀のブローチがありました。アクアカラーの大きな石がひとつと、その上下に繊細なカッティングをほどこしたガラス玉がふたつ嵌めこまれていて、それらの石をつなぐ銀の模様も申し分のないデザインでした。ただ、サイズがかなり大きいのと(縦の長さが8センチくらいありました)思いのほか高価だったので買うのを断念。でも、デザインがとても好きだったので、帰宅してすぐ記憶をたよりに絵に残しました。石の水色が効いているので、ムーン・ドロップ、「月のしずく」と名づけました ^^
このブローチなら聖夜の装いにもピッタリだし、もうすこしサイズがちいさければ、帽子や襟もとにつけたりチェーンをとおしてネックレスにしてみたかったのだけど、「催眠状態から抜けるため一度頭を冷やす」という“お買い物の鉄則”を守り、このお月さまとのご縁はあきらめました。もし予報がはずれて今夜が雨もようでなければ‥ これと同じかたちをした月のしずくがわたしのこころを満たしてくれることでしょう。
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一筆箋