雪月花 季節を感じて

2005年~2019年
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帯留め(一) 琉球ガラス

2010年08月27日 | きもの日和
 
 涼感をさそう帯留めは、初夏から盛夏の装いの楽しみ。帯に帯留めと紐とを合わせてゆくとき、いつもわくわく、こころが弾みます。着姿の中心にくる帯留めは案外目立つもの。きものを着ているとき、サイズや色かたちに気を配りつつ選びます。

 若紫色のガラスは、桃原正男氏作。色柄ゆたかなとんぼ玉より合わせやすく、帯紐の色を透かしてなじんでくれます。そのせいか、外出先でこの帯留めをよくほめていただきます。


 およそ100年の歴史をもつ琉球ガラス。戦時中に製造施設が破壊され生産中止を余儀なくされたものの、戦後すぐに米軍施設の大量の空きビン等の廃材を活用して再開したのだとか。沖縄の工芸品は、戦争のもたらした惨状をぬきに語れないものばかりですが、琉球ガラスも例外ではありません。

 春夏を通じて全国高校野球の優勝旗が沖縄に渡り、炎暑の夏がすぎようとしています。涼やかな色ガラスにこめられた平和への願いを思わずにいられません。
 

改訂版、出来。

2010年08月23日 | 和楽印 めだか工房
 
 ブティック社さんから「『消しゴムはんこ ちいさな図案集』の改訂版を作ることになりました。消しゴムはんこ、人気がありますね!」とうれしいメールをいただきました。数日前にその改訂版が届きました ^^


 二年前に発行された初版『消しゴムはんこ ちいさな図案集』の売れゆきが順調で、その後すぐに続編の『消しゴムはんこのかわいい図案集』が出来(しゅったい)、昨年の夏には関西系テレビで初版が紹介されました。
 初版時はわたしのささやかなWeb書店「さくら書房」から10冊あまりをみなさまにご購入いただき、昨年までたくさんのご注文もいただきました。ほんとうに有難うございました。(現在はご注文を受け付けておりません)


 改訂版は8ページの増補です。和楽印めだか工房の担当ページについては変更や増減はありませんけど、今後もひきつづき図案集を手にされた方のご参考になればうれしいです♪
 

昭和のかをり

2010年08月17日 | 小魚庵だより ‥日々の拾遺
 
 色えんぴつがなくて困っていると、「古いのでよかったら、たぶん実家にあるよ」と主人。帰省した折に探し出してもらったら、36色入りの立派な色えんぴつセットでした。一本だけ「クリムソン・レッド」という赤色がなくなっているけれど、35色はきれいに残っています。

 「ついでに、これも」と出してくれたのは、タテヨコ7cm、高さが9cmほどの小ぶりなえんぴつ削りです。色はモノトーン、日本製で、手動。なつかしいカタチをしています。なんとなく、昭和の香がしませんか。


ちゃんと削れますよ♪

 昭和といえば。
 近所の友だちが、「昔から大事にしているものを使っていると、(平成生まれの)子どもから『お母さん。それ昭和っぽいから、やめてよ!』と責められるのよ」とこぼしていました。わたしたちが高齢になると、きっと「昭和の生きのこり」だなんて言われるんだわ、と自嘲気味に笑い合ったことでした。


 いまだ炎暑とはいえ、法師蝉や宵の虫の音にわずかな秋の気配を感じるお盆明けです。
 

夏、バーニーズで

2010年08月11日 | たまゆら ‥日々是好日(随筆)
 
 先月から長期の仕事をしています。昨年と同じHさんのお仕事のお手伝いなのですが、昨年とちがうことがひとつあります。それは、もうHさんが会社にいないこと。


 なにかと気の合うHさんでした。語り合うたびに同種の趣味や嗜好を感じて、話がはずみました。といっても、Hさんは常勤、わたしは非常勤ですから、けして多くはなかった機会の中で、いくらか深いところで響き合えたことがうれしかったし、Hさんも忙しい仕事の合間をぬってわたしに声をかけてくれました。

 ところが、六月にひと月ぶりに出社すると、Hさんの退職が決まっていたのです。驚いている間もなく送別会へのお誘いがあり、引き継ぎで大いそがしのHさんに声をかけることができないままその日を迎えました。

 直接退職の理由を聞くこともできず、同僚の友人に後日聞いてみようとおもいながら、六月末にHさんは退職。七月がすぎ、八月になりました。わたしはHさんの残された仕事のお手伝いをしながら、Hさんがいまどうしているのか、新しい仕事はもう決まったかしらと、時おり考えます。


 お別れのしるしに‥とHさんがくださったのは、わたしが十数年愛用しているものと同じバーニーズのハンカチーフでした。やっぱり、趣味が似ていますねと、別れがたいきもちで立ち話をしていたところへ、Hさん宛に仕事の電話が入り、最後の会話は途切れてしまいました。

 Hさんとわたしは、ここちよい距離をたもちながら、ついに交わらなかった二本の線みたいだけれど、不思議にあたたかなきもちが残っています。


 夏、空と海の青に純白の雲が浮かぶ横浜のバーニーズにて。わたしは、一枚のリネンのハンカチーフを買います。ほんとうはHさんに差し上げたかったオレンジシャーベット色の一枚が、わたしのコレクションに加わりました。

イニシャル入りがHさんからいただいたもの。十数年を経ても型くずれしないバーニーズニューヨークのリネンは、以前は麻100%だったけれど、いつからか綿麻になっています。色はきれいな中間色がそろっているので和装にもおすすめ。贈りものにも。

 

紬を学ぶ(四) 糸のかたち

2010年08月06日 | きもの日和
 
 夏の間、N先生の紬織を学ぶお教室は「糸紡ぎ」「草木染め」「織り」の実習です。真綿から糸を紡ぎ、身近な草木で染め、織のデザインを決めて、高機で織ります。

 すでに「糸紡ぎ」と「草木染め」の作業を終えましたが、いずれも気の抜けない、手間のかかる作業です。お蚕さまと草木のいのちをいただき、火と水と、人の手と勘の働きによって成る仕事ですから、祈るようなきもちで取り組みました。

結城紬の縞屋・奥順さんにいただいた繭です。結城では「つくし」とよばれる道具に真綿をからませ糸を引きますが、N先生は「久米島式真綿紡ぎ台」に八角形状に広げた真綿から糸をとります。撚りをかけない、ふっくらとした糸です。

 六人で一時間をかけて紡いだ糸の総量は、わずか12g。染織のおままごとにすぎませんけど、みなで桜の枝を細かなチップにし、それを煮出した染液に浸けると、やわらかな黄色に染まりました。

先生のご厚意で、手持ちの楊柳の半衿も染めました。チップにした柿の小枝で染めると、灰がかった淡い桜色に。柿がこんな色を抱いていたなんて、意外でした。秋、藍木綿のお単衣に合わせてみるつもりです。


 お蚕さまが二、三日間ひとときも休まず吐く糸の長さは、およそ1,300~1,500m。お蚕さまは左右に首をふりながら八の字を描くように糸を吐きます。その糸を手にとりよく観察しますと、糸はまっすぐでなく波状です。N先生はそれを「糸のかたち」といいます。この蚕糸の波状を最大限に生かすことが、先生の糸へのこだわりといっても過言ではなさそうです。

 人に都合よく加工するのでなく、素材そのものの性質にできるかぎり歩みより、そのままを生かす工夫を重ねてゆく。それが、N先生の紬織なのかもしれません。