すこし前のことですが、琵琶湖めぐりの旅をされているご婦人から「わたしのもっともお会いしたかった観音さまです」というお言葉とともに、湖北の観音さまの御影(お写真)をいただきました。
「己高山石道寺(こだかみやましゃくどうじ) 十一面観世音菩薩」。通称「いしみちの観音さま」。無住のお寺にあり、村の人たちの手で守られているこの観音さまは、平安中期の作。欅材の一木彫で、当時の極彩色の面影をわずかに残しています。(重要文化財)
なんてうるわしいお姿。きれいな弓形の眉。豊頬のお顔にのるちいさなお鼻。その先に、ほんのり紅をさしたまるい唇が浮いています。ふくよかな曲線美。ほそい指先‥ ひと目惚れでした。こんなにも慈みにみちた像容の観音さまがおられたなんて。御影を手にしたまま、しばらく放心してしまいました。
─この観音さまにお逢いしなくては。湖北へゆかなくては。
そうおもわずにいられませんでした。
作家の井上靖が、小説『星と祭』(※)に書いています。
「村の娘さんの姿をお借りになってここに現れていらっしゃるのではないか、素朴で、優しくて惚れ惚れする様な魅力をお持ちになっていらっしゃる。野の匂いがぷんぷんする」と。
御影を、手のひらサイズに縮小して持ち歩けるようにしました。
和紙と消しゴムはんこでつくった折本の『般若心経』を添えています。
折本に綴じた『般若心経』の写しです。和紙に印刷しています。
のぞき紋の「撫子」と「蝶」のはんこを押して、装飾経に。
御影と折本を畳紙につつみ、麻袋に入れています。
わたしの御守になりました ^^
いつかきっと、この御守を携えて琵琶湖の十一面観音めぐりをします。
湖北の観音さまにお導きくださったTさま。
あなたさまも、わたしの観音さまです。
深謝。合掌。
※ 『星と祭』 は さくら書房 で紹介しています。
母から、きびなごのいりこを分けてもらいました。
あの「ままかり」の「きびなご」ですよね。そうおもっているのですけど、きびなごは魚偏に「制」と書く「さっぱ」と同じ魚なのでしょうか。(ややこしくて分かりません) 関東ではめずらしいので、もったいなくてお出汁には使えません。
「甘めの酢漬けにするの。そのままでも、和えて食べてもおいしいわよ。カルシウムたっぷり」という母の言を守り、瓶に入れて甘酢漬けにしています。
つまり、きびなごのいりこを酢漬けしてままかりにした、ということ?かしら(笑
塩ゆでしたブロッコリーにぽん酢で下味をつけたものと和えて、いただきました。
お酢でやわらかくなったきびなご、さすが「飯借り(ままかり)」と呼ばれるだけあって美味です、食がすすみます^^ 昨夜はお肉料理でしたから、箸休めにぴったり。甘酢の苦手な主人は、目をつむって口に運んでいましたけど(笑
きびなごを甘酢に漬けながら、はっと気づいたことがありました。
母は、貧血のひどいわたしを気遣って、きびなごを手に入れてくれたのだと。
母の子をおもう気もちは、子の母をおもう気もちに勝る。
わたしのおもいなど母の足もとにも及ばないと、しみじみおもったことでした。
みかん咲く里遠からじ母の声 (雪月花)
連休中に友人から文様印はがきの注文をもらって、せっせとはがき制作にいそしみました。和紙の色を選び、どのはんこを使ってどんなデザインにしよう‥と考えるのが好きです ^^
八種のデザインを、色ちがいで数枚ずつつくりました。そのうちの四枚です。
上から順に、「千鳥」「鉄瓶つなぎ」「蘭花散らし」「根引き松」です。
「根引き松」は神さまの宿る木ですね。ほかの三種はすでにブログ上でご紹介済みの文様印をリニューアルしたもの。最近は、新しい文様印だけでなく、これまでに彫ったはんこのリニューアルをすすめています。できるだけ親しみやすい図柄にしたいし、意匠ももっと洗練させたいとおもっています。
‥そうそう忘れていました。五月のカレンダーは こちら です。
今年の二月、三百年以上の歴史をもつ京友禅を代表する染色家で、人間国宝に指定されていた森口華弘さんと羽田登喜男さんが相次いで逝去されました。自然を師とし、伝統を守るだけでなく活かすことに尽くした、ライバル同士のおふたりでした。
「文様の世界というのは夢を描くものなんや」と、森口氏が語っています。趣味にすぎない消しゴムはんこだけど、ささやかな文様の夢を描けたらいいな。
ご冥福をお祈りいたしつつ。
梅林の梅の実が順調に育っています。
葉が出始めたころ、小指の爪ほどのちいさな梅ぼうやが枝にたくさんついていたのを主人が最初に見つけ、以来ふたりで観察しているのですけど、もうすっかり成長して立派な梅の実です。おいしそう~‥ いえ、青々としてきれいでしょ ^^; まだほっぺにうっすらと紅をのせていて、幼さが残っているのがなんともかわいいんです。
のんびりすごしたゴールデンウィークが明けて、主人はがっかりしながら出勤してゆき、わたしは家のかたづけをしています。
きれいに片づいた部屋の窓から風を入れて、緑茶をいれます。八十八夜をすぎて新茶のおいしい季節。でも、今年はいただきもののお茶がたくさんあるので、そちらの封を切ることにしました。
福岡・八女茶の玉露です。
繊細な茶葉の、深い緑色と甘くふくよかな香がたまりません。
湯ざましでゆっくりとお湯を冷ます。
お湯を注いだらじっくりと蒸らす。
玉露は、このふたつの「間」がたっぷりあるのがいいですよね。
一煎目のお茶の、最後の数口。これが、ふっくらと点てた薄茶のひと口目と同じ味がして、あとを引きます ^^ ついで二煎目をいただき、三煎目も‥
筑後の茶畑を吹きわたる風がしみとおる、連休明けの昼下がりです。
ゴールデンウィークはいかがおすごしですか。
わが家は、前半は主人の里へ帰省、後半は毎年近場でのんびりすごします。友人と美術館めぐりをしたり、主人と街を散策しながら、お気に入りのお店をのぞくのも楽しみのひとつです。
たとえば、ある日偶然に見つけたうつわのお店「百福(ももふく)」さん。通りがかりのサイトだったのにひと目惚れしてしまい、さっそく訪ねました。
店内にいる間、ずっとドキドキ、わくわく。どうやら全国にファンがいる、よく知られたお店のようです。
お店の方と話をしながら、「はじめまして、これからよろしく」の代わりに、菊花文のまめ皿を二枚購入しました。アンティーク? ‥とおもったら、宮岡麻衣子さんという作家の古染付とか。ただいまわが家で活躍中です。
店舗移転後のオープン記念です、と「遊 中川」さんのお懐紙をいただきました。鹿さんがいっぱい ^^
長くおつきあいしたいお店との出合い。
気分はふわふわ、しあわせな気持ちです。
主人と青山界隈を歩く約束をしています。
青山に、おすすめの展示会があるんですよ。TOTOのギャラリー「間」で開催中の「杉本貴志展 水の茶室 鐵の茶室」です。(5月31日まで、休館日に注意) 杉本氏は、「無印良品」の店舗や話題のレストランの空間デザインを手がけたデザイナーで、グラフィックデザイナーの田中一光氏や裏千家の伊住政和氏(両者とも故人)と親交があり、2002年にはニューヨークで行われた「The New Way of Tea」展の茶室を設計。
ギャラリーからすこし離れたところにあるうつわのお店「楓」と、その姉妹店「SHIZEN(しぜん)」もおすすめです。「SHIZEN」は食事もできる和カフェを併設しています。
お気に入りの “和美(わび)” を堪能する連休です ^^