雪月花 季節を感じて

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それぞれの、雪月花

2009年12月30日 | 雪月花のつぼ ‥美との邂逅
 
 これまで日本の歴史や伝統文化、社会、日々のくらし等々、いくつかの観点から「雪月花」について語ってまいりました。読者の方々からご意見・ご感想をいただくことも多く、おかげさまでひとりよがりな雪月花論にとどまることなく、たくさんのことを学ばせていただいています。ほんとうに有難く、感謝のきもちでいっぱいです。

 本年の最後に、最近いただいたメールからふたつをご紹介します。それぞれの雪月花論─この国への温かなまなざしとおもい─が伝わるすてきな文章です。


 ひとつめは、現在、松下政経塾を代表する塾生としてご活躍中の寺岡さまの論文です。寺岡さまは来年三月をもって松下政経塾の全研修を修了される予定で、その後は日本の教育界を改革すべく重要な役割を担うことと期待されます。(ご経歴等は こちら から閲覧できます)
 『斜めから読み取る、日本の伝統精神』と題された論文は、ちょっと変わった切り口から、ゆきすぎたグローバル化と画一化社会への反発から生まれつつある多様性の受容とその必要性を説いています。

 → 『斜めから読み取る、日本の伝統精神
   by 寺岡勝治氏/ 松下政経塾第28期生

 寺岡さまは、同サイトにて三月まで毎月異なるテーマで論文を公表されます。ご興味のある方はぜひご覧ください。


 ふたつめは、紫草さまからいただいた奈良県立万葉文化館館長・中西進氏の『雪月花の美』です。

 『雪月花の美 愛の心を呼ぶ』

 雪の上に 照れる月夜(つくよ)に
 梅の花 折りて贈らむ 愛(は)しき児(こ)もがも
   ◇
 『万葉集』巻十八の四一三四番、大伴家持の歌
 雪に月が輝く夜、梅の花を折って届けるような、愛する人がほしい
   ◇
 雪がつもり、空には月がかがやく。それだけでも美しいのに、その上にウメの花までほころびていれば、風景の美しさはおどろくばかりですね。しかも作者は、この美しさをウメの一枝に託して、恋人におくりたいと思いました。 風景の美しさが、心の中にまで入りこんで、すてきな女性といっしょに、美しさを楽しみたいと思ったのでしょう。
 ところで、雪月花のとり合わせは、中国の詩人・白楽天(772~846年)の詩が日本に入ってきてから日本で喜ばれたといわれてきました。 ところがじつは、白楽天が生まれるよりずっと前、749年12月のこの一首によって大伴家持が発見した美でした。
 美しい風景を仲良しといっしょに楽しみたいと思ったことも、すばらしいですね。自然の美しさが、愛の心を呼んだのでしょう。
 (以上)



 上記の『万葉集』大伴家持の歌は、わたしも二年前の記事「雪月花」に書きました。歌人の佐佐木幸綱氏が、いまわたしたちが美しいとおもうものは、すべて古人が和歌に詠んできたものばかりである、と述べています。古人たちの美の発見があってこその「雪月花」なのですね。

 みなさまにとっての「雪月花」とは、何ですか。


紫草さまのしつらえです



 どうぞ健やかによいお年をお迎えください。
 

「さくら書房」からお知らせ

2009年12月28日 | お知らせ
 
 雪月花のネット書店「さくら書房」をご利用のみなさまへ、お知らせです。

 「セブンアンドワイ」から新しい「セブンネットショッピング」への移行完了とともに、「さくら書房」も新装オープンしています。

 旧システムでは、更新したコーナーに「new! 」のマークが付きましたが、新システムでは付かないようです。そこで、今後は更新したコーナーを常に「さくら書房」のトップページにくるようにします。よろしくお願いします。


 みなさまから毎月2~10冊の本を「さくら書房」から購入していただいています。有難うございます。「さくら書房」はアフィリエイトではありません。ひきつづきお気軽にアクセスしてくださいね ^^
 

和紋テープ

2009年12月26日 | くらしの和
 
 年末年始は何かと贈りものの多い季節ですね。ちょっとしたギフトのラッピングに欠かせないマスキング・テープは、和柄のものを愛用しています。

 日本の伝統紋様の代表格である「麻の葉」「矢羽根」「鮫小紋」の三種の柄のテープが色ちがいで二本ずつ入っています。


 これを使うために、誰かに何かをプレゼントしたくなります ^^ もちろん、ラッピング以外にも、使い道はたくさんありますよ。詳細は こちら です。
 

合格

2009年12月21日 | きもの日和
 
 十月に受験した、きもの文化検定4級の合格証がようやく届きました ^^

 マークシート方式による100問だけの四肢択一方式のテストですが(実技試験はなし)、きものについての知識をカタチにしておこうとおもい、受験しました。久しぶりの会場試験で緊張しましたけど、こうして合格証を手にするとうれしいものですね。来年は3級を受けてみようかしらと検討中。


 着付けは覚えたけれど、きものについての座学はいったいどうしたらよいのか分からない‥という方が、わたしの周囲に案外多いのです。そのような方に、きもの文化検定はひとつの良い手段かもしれません。もちろん、着付けだけでなく知識にも自信ありという方にも。また、きものを購入したり管理するための最低限の知識としても役立ちます。

 きもの文化検定の公式ホームページは、こちら です。
 さっそく、模擬試験(5・4級)に挑戦してみたい方は、こちら からどうぞ。
 

ティータイム

2009年12月11日 | 筆すさび ‥俳画
 
 カステラに見えますか?(焦げ茶の部分が、チョコレートに見えるのですけど‥) このような単純な絵ほどむつかしいです。先生のお手本は、やや渇筆でカステラのふんわり感をうまく表現しています。

 カステラというと、父をおもいだします。
 物資不足の時代、日々の食べものにも困っていた父の友人が、家の近くの菓子店からカステラの底についていた紙 ─カステラのおこげと粗目糖がついていた─ をたくさんもらってきて、それで食いつないでいたんだ‥と、父はきまって家族でカステラを食べるときに涙ぐみながら語っていました。


 俳画のお稽古も、この秋から四年目をむかえました ^^


 

東北の手仕事(六) 続・北限の絣

2009年12月07日 | きもの日和
 
 すこし前にご紹介した「北限の絣」・白鷹紬の後日談です。
 「白たか織」の S氏宛にお礼状を送りました後、しばらく経って S氏から宅配便で封書が届きました。荷物名の欄に「布」とある封を切ると、中に白鷹紬の残布でつくったとおもわれる白茶色の巾着袋(上の写真)に、お手紙が添えられていました。

 お手紙には、手書きでわたしへの返礼と、亀甲綾は織るのにたいへんな技術と時間を要すること、さらに今後も白鷹らしい織物を織り続けてまいりますと、S氏の白鷹紬へのおもいが綴られていました。

「白たか織」の伝統工芸士、S氏からのお手紙。「ぶっかけ染め」とも呼ばれる板締絣技法から生まれる、精緻な白鷹お召や亀甲綾の織物が、この“手”から生まれるのですね。
Sさま、有難うございました。

 巾着は、表と裏が異なった織の布で仕立てられています。片方は細かな亀甲絣で菱形の模様を織り出した鬼シボ状の白鷹お召、もう片方は縦縞の地に格子柄が浮き出ており、どちらもつややかでぜいたくな手ざわりです。亀甲綾のきものを着て出かけるとき、小物を入れて携帯しています。


 この国の各地にすばらしい織物があり、またそれを紡ぐ技術がいまも生きていること。そのことに、こころから感謝せずにいられません。長く大事にしなくては、バチがあたりますね。