これまで日本の歴史や伝統文化、社会、日々のくらし等々、いくつかの観点から「雪月花」について語ってまいりました。読者の方々からご意見・ご感想をいただくことも多く、おかげさまでひとりよがりな雪月花論にとどまることなく、たくさんのことを学ばせていただいています。ほんとうに有難く、感謝のきもちでいっぱいです。
本年の最後に、最近いただいたメールからふたつをご紹介します。それぞれの雪月花論─この国への温かなまなざしとおもい─が伝わるすてきな文章です。
ひとつめは、現在、松下政経塾を代表する塾生としてご活躍中の寺岡さまの論文です。寺岡さまは来年三月をもって松下政経塾の全研修を修了される予定で、その後は日本の教育界を改革すべく重要な役割を担うことと期待されます。(ご経歴等は こちら から閲覧できます)
『斜めから読み取る、日本の伝統精神』と題された論文は、ちょっと変わった切り口から、ゆきすぎたグローバル化と画一化社会への反発から生まれつつある多様性の受容とその必要性を説いています。
→ 『斜めから読み取る、日本の伝統精神』
by 寺岡勝治氏/ 松下政経塾第28期生
寺岡さまは、同サイトにて三月まで毎月異なるテーマで論文を公表されます。ご興味のある方はぜひご覧ください。
ふたつめは、紫草さまからいただいた奈良県立万葉文化館館長・中西進氏の『雪月花の美』です。
『雪月花の美 愛の心を呼ぶ』
雪の上に 照れる月夜(つくよ)に
梅の花 折りて贈らむ 愛(は)しき児(こ)もがも
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『万葉集』巻十八の四一三四番、大伴家持の歌
雪に月が輝く夜、梅の花を折って届けるような、愛する人がほしい
◇
雪がつもり、空には月がかがやく。それだけでも美しいのに、その上にウメの花までほころびていれば、風景の美しさはおどろくばかりですね。しかも作者は、この美しさをウメの一枝に託して、恋人におくりたいと思いました。 風景の美しさが、心の中にまで入りこんで、すてきな女性といっしょに、美しさを楽しみたいと思ったのでしょう。
ところで、雪月花のとり合わせは、中国の詩人・白楽天(772~846年)の詩が日本に入ってきてから日本で喜ばれたといわれてきました。 ところがじつは、白楽天が生まれるよりずっと前、749年12月のこの一首によって大伴家持が発見した美でした。
美しい風景を仲良しといっしょに楽しみたいと思ったことも、すばらしいですね。自然の美しさが、愛の心を呼んだのでしょう。
(以上)
上記の『万葉集』大伴家持の歌は、わたしも二年前の記事「雪月花」に書きました。歌人の佐佐木幸綱氏が、いまわたしたちが美しいとおもうものは、すべて古人が和歌に詠んできたものばかりである、と述べています。古人たちの美の発見があってこその「雪月花」なのですね。
みなさまにとっての「雪月花」とは、何ですか。
紫草さまのしつらえです
どうぞ健やかによいお年をお迎えください。