雪月花 季節を感じて

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ブラジリエの青

2006年06月08日 | 雪月花のつぼ ‥美との邂逅
 
 青水無月の風光に響き合う美しい絵画のお話です。
 アンドレ・ブラジリエ(1929年~)というフランスの画家がいます。この画家の絵との出合いはいつだったのか、もう忘れてしまったけれど、ずいぶん前から好んで鑑賞しています。
 特徴はご覧のとおり、大胆な構図にやわらかなフォルム、鮮やかなブルーとグリーン、草原の風を感じる詩的な作風です。題材は馬(あるいは乗馬)、音楽、そして奥さまのシャンタル夫人を描いたものが多く、わたしは馬と夫人を描いた絵が好きです。

 現在、東京郊外の美術館にてこのブラジリエ展が開催されており、招待券をいただいて出かけたところ、うれしい発見がありました。故・東山魁夷画伯(1908~1999年)が、生前にこの画家と親交があったというのです。画伯のほうがブラジリエの構図と色に感銘を受け、それからふたりは親しくつきあうようになったようです。そういえば、ブラジリエのブルーとグリーンを通りぬけると、画伯の絵の青と緑に容易にたどりつくではありませんか。タッチや色調は異なるにもかかわらず‥ です。

 若い時分に西洋の絵画を学ぶべくドイツとオーストリアに留学した画伯は、晩年に夫人とふたりでふたたびその地を訪れます。また、画伯はモーツァルトの音楽をこよなく愛しました。64歳の一年間に作成された18枚の連作「白い馬の見える風景」(※)には、中欧の神秘的な湖や森が美しい天上の音楽を奏でるように描かれています。大自然の中を自由に駆ける白馬の姿─ それはきっと、モーツァルトの音楽、そしてブラジリエの絵との出合いがすくなからず影響しているにちがいない。‥

 フランスと日本の画壇を代表するふたりの画家の間に育まれた友情と幸福に、思いをはせています。


※ 東山魁夷の白馬の連作については下記が詳しいのでご覧ください。
  ブラジリエの「川面に映る馬」(当記事上の絵)と画伯の「水辺の朝」を
  あわせて見ると、ブラジリエとの交流が想像されます。
  → 美の巨人たち 「白い馬の見える風景」

 
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