雪月花 季節を感じて

2005年~2019年
2019年~Instagramへ移行しました 

時をさかのぼる

2014年03月06日 | くらしの和
 
 毎月28日に行われる成田山川越別院の蚤の市に、きもので出かけるのが楽しみです。昨年十一月の市で見かけてからずっと気になっていた、古い総桐の箪笥。三か月の間うんうん考えつづけて、このたびとうとう手に入れました。わが家のにわかづくりの和室の片すみに、ひっそり鎮座しています。
 購入したお店にはいつもほどよく手入れされた家具が数点並んでいて、抽斗のすべりはよいし、後付けの金具も吟味されているようす。店主にうかがうと、もとはこうした家具の修理を生業にしていらしたのだとか。この箪笥は戦後のつくりらしく、骨董ではなく“再生家具”なのだけれど、あちらこちらに親しみのわく経年の小キズを抱えて、にぶい光を放ちながら浮かぶ木目がとても美しい。これから、ひとつひとつの抽斗の中敷きにするための更紗や木綿の古布を吟味するつもりです。

 このごろ古いものにひかれます。というより、古いものがやたらに話しかけてくる‥という妙な感じがつづいています。でも、高価なものとおつきあいできる身分ではないから、「古道具」「古民具」というほどのものをすこしずつ、さがしたい。
 

和菓子の音

2011年08月19日 | くらしの和
 
 きものの友だちと立ち寄った虎屋さんのギャラリーで“和菓子の音”を見つけました。

 三種の虎屋製和菓子の菓銘、意匠、味わいから連想される情景を、音楽家の大友良英さんが音で表現しています。曲目は菓銘のまま「夜の梅」「水の宿」「残月」。ちょっとおもしろい試みです。

 わたしのCDケースに「307/500」と印字されていますから、限定500部かも? 気になる方は、お早めにとらや東京ミッドタウン店へどうぞ ^^
 

麻が好き

2011年08月05日 | くらしの和
 
 蒸し暑い夏を快適にすごすために、麻は欠かせない素材ですよね。

 写真左は小千谷麻の長襦袢。何度も洗ううちに風合いがこなれて、おろしたてのころより着ごこちよくなりました。もうすこしへたってくれるとますますよくなりそうなので、せっせと酷使しています。

 右は数年越しの願いがかない、この夏ついに購入した麻の夏掛けふとんです。これで一日のおよそ三分の一を麻とすごせるのですから、とってもしあわせな気分 ^^


 もともと麻が大好きで、夏のあいだ中はできるだけ麻にふれてすごしたい。そうおもうとつい和装も麻のものが増えてしまい、たまに絹物にふさわしい場に出かけるときになってあわててしまいます。それでも麻を着たい、麻で出かけられないかなぁ‥と、分かっていながら堂々めぐりする始末。来夏までにはこの課題を解決したいものです。

 来週はふた月ぶりに紬塾の友人たちと出かけます。きものだけでなく、趣味や嗜好の近い友と語らうひとときは格別。さらにドレスコードは麻のきもの、「小千谷縮」です。こんなにうれしいことはありません ^^(‥進歩がないなぁ)


 紬塾の中野みどり先生がブログで「涼しげ」について綴られています。ぜひご覧ください。
 

紫陽花のゆびわ

2011年06月24日 | くらしの和
 
 初夏から雨季にかけてたびたびつけるビーズのゆびわです。

 四年ほど前に知人がつくってくれたもので、小指にちょうどよいピンキーリング。雨のしずくに輝く紫陽花のようだから、「紫陽花のゆびわ」と名づけてたいせつにしています。和装にも合わせます。

 やんちゃな男の子ふたりを育てながら「ビーズは気分転換になるんですよ」と話してくれた彼女。最近はお目にかかる機会がないけれど、元気にしているかしら。
 

クラフトフェアまつもと

2011年06月04日 | くらしの和
 
 毎年、五月最終週の土日に松本のあがたの森公園にて開催される「クラフトフェアまつもと」。全国から応募した1,400組もの出展希望者の中から、審査を通過したおよそ300組の工芸家さんたちが作品の展示即売を行います。

 木工、漆、陶磁器、皮革、ガラス、染織、食料品、手工芸用の素材や道具‥等々、全国のあらゆる手仕事があがたの森に集います。その魅力は、なんといっても、つくり手と使い手が直接ふれあえること。素材や道具へのこだわり、制作の苦労、ものづくりへの熱いおもいに耳をかたむけて手にする品々は、まるでいのちを吹きこまれたようにいきいきしています。納得して手に入れた品々を使うとき、つくり手の顔が浮かべば、おろそかには扱えません。

 クラフトフェアだけでなく、「工芸の五月」の五月いっぱいは「暮らしと工芸」をテーマに松本のあちこちでさまざまな催しが行われます。町全体が日常を楽しむ工夫にあふれ、ゆたかな自然と人と美しいモノをゆるやかにつないでいます。きらきらした時の破片がふりつもるように、松本は日々ゆっくりと歴史を刻んでいるよう。

 工芸の町・松本で出合ったくらしの道具とともに、わが家にも松本時間が流れはじめました。

ガラス工芸家・前田一郎さん(長野市)のグラス。かたちも大きさも厚みもすこしずつちがうので、たくさんの在庫の中から2つを選びました。やや黄みがかったガラス全体に星をちりばめたように気泡が。ほどよい厚みがあるのに軽みを感じる、不思議な手ざわりです。

陶芸家・佐藤崇さん(北九州市)のパン皿。陶のパン皿を長い間探しもとめていたので、ようやく「これだ」とおもうものに出合えてうれしかったです。毎日活躍中。

麻専門の工房「青土」さん(宇治市)のかや布のテーブルセンター。食卓のまん中に自然布があるとほっとします。「青土」さんはきもの通で布好きな友人のおすすめ ^^

陶芸家・田中一光さん(松本市)のフリーカップは、マットな藍の濃淡色が気に入って主人が購入したもの。本来は蕎麦猪口だけれど、主人はお湯呑みとして使っています。


 2011年10月15日(土)16日(日)には、あがたの森公園にて「クラフトピクニック」が開催されます。(雨天決行)
 

工芸の五月

2011年05月19日 | くらしの和
 
 毎年五月いっぱい、長野県松本市で開催される「工芸の五月」。かつての民芸運動に刺激され、くらしに寄りそう美しいものと「用の美」を追究しつづけているつくり手やその使い手さんたちが、工芸の町・松本に集います。

 以前からずっと行きたかった松本。数年前までは松本城(国宝)のある自然ゆたかな城下町というイメージでしたけれど、「工芸の五月」のことを知ってから、がらりと印象が変わりました。

 五月の最終土曜日と日曜日の「クラフトフェアまつもと」では、たくさんの工芸家さんたちの作品が展示即売されます。


 初夏の城下町を散策し、おいしいものをいただいて、クラフトフェアをのんびり見てまわる‥。あたためてきた計画が、まもなく実現します。

 クラフトフェアにくわしい友だちからステキな松本情報をたくさんもらって、旅の準備は万端。あとは、お天気に恵まれますように‥と祈るばかりです。
 

紬を学ぶ(番外編) 裂織

2011年02月09日 | くらしの和
 
 うさぎの香合をのせている敷ものは、中野みどり先生作の裂織(さきおり)マットです。じつはこれ、先生の裂織作品第一号!なんですよ ^^

 ご愛用のインド更紗の座布団カバーがすりきれてしまったため、カバーを洗濯し、それを裂いたものを緯糸としてこのマットを織られたのだそう。黒茶色の糸は紬糸です。

 そういえば、先生のご自宅兼工房のおざぶはインド更紗でした。紬塾で「モノのいのちを使い切る」ことを教えてくださった先生のおもいが、この裂織の布にもこめられています。

 長年、制約の多い着尺を制作されてきた先生にとって、「マット類は自由ですので、ほんとうに夢なの」だとか。素材も色もデザインも、先生のセンスあふれる裂織の傑作や大作が、近いうちに見られるかも‥ 楽しみです♪
 

閑かなうつわ

2010年12月13日 | くらしの和
 
 漆工芸家の手塚俊明さんの作品展へ出かけました。

 初夏にはじめて工房を訪ねたときから気になっていた無地のお椀です。「木取り」「荒挽き」「仕上げ挽き」といった木地づくりから、漆を塗り重ねて仕上げるまでの、すべての工程を手塚さんはおひとりでなさいます。

 手塚さんは、漆工芸家で東京芸術大学名誉教授の磯矢阿伎良氏(1904~1987)に師事、現在はパートナーで同じく漆工芸家の戸枝恭子さんとともに創作活動をつづけています。奥多摩の美しい渓谷を望む工房は、ラジオやテレビなどのメディアを一切遮断した環境。ゆたかな緑につつまれ、そこに生息する動物たちの息づかいが聞こえます。

 閑寂なくらしと、作家ご自身の朴訥なお人柄が、そのまま凝り固まってお椀のかたちになったような、しずかなたたずまい。光と親和する色。まるいフォルム。あたたかな手ざわり。使いこむほどにより深く豊かな表情へと変化するという豊穣な時の経過を、これからゆっくりと味わいます。
 

形見分け

2010年11月10日 | くらしの和
 
 ちょっと贅沢なブックカバーを使っています ^^

 先月、友だちと久しぶりに訪れた旧白洲邸・武相荘。花のない時季ですこしく淋しい風情でしたけど、郊外の茅葺きの民家で季節によりそうくらしをされた白洲次郎・正子ご夫妻の遺愛の品々を拝見するのは楽しみです。

 帰りぎわ、ショップで見つけたのがこのブックカバーです。表も内側も、紬の端布をつないだ渋いデザイン。手にとって見ていたら、お店の方が「正子さんが愛用されていた、田島隆夫さんの紬織です」と教えてくださいました。

 そういえば、端布の柄は邸内に展示されていた正子さんの羽織と同じものです。さらに「正子さんのお嬢さまの(牧山)桂子さんが作られたものです。お忙しい方なのでたくさんはつくりませんけど、お店にあるときはご縁ですよ」とすすめられたら、放っては帰れません‥ ^^;

 そうして手にした逸品です。
 丁寧に芯を入れて仕立ててあるため、紬織の風合いがストレートに伝わってこないのが少々残念なのですが、お母上のたいせつなおきものを潔く形見分けくださった牧山桂子さんのお気持ちに感謝しています。

かつて銀座に呉服店「こうげい」を営んだ白洲正子さんは、田島隆夫氏(染織家・田島拓雄氏のお父上)の紬織を「時間を忘れ、金に換えることを忘れた糸」と書いています。きものの友だちに「田島隆夫の紬織をもっているのよ~」と自慢できるかな(笑

 武相荘をあとにし、思いつきで足を伸ばした城下町のギャラリーで、友だちがステキな染帯をお買い上げするというサプライズも付いて、あの日は楽しいきもの日和でした ^^


 ことしで生誕100年を迎えた白洲正子さん。11月21日まで滋賀県立近代美術館にて開催中の「生誕100年特別展 白洲正子 神と仏、自然への祈り」が、来年三月に東京の世田谷美術館に巡回します。
 

涼をよぶうつわ

2010年05月14日 | くらしの和
 
 日だまりはあたたかいけれど、空気のひんやりとした初夏のひと日。久しぶりに「美しき五月」という文字どおりの清々しい日でしたのに、先週末から風邪をこじらせて寝こんでしまい、楽しみにしていた約束を反古にしてしまったわたし。そういえば、昨年の今ごろも体調をくずしていました。

 病院で処方された薬が効かず、こまめに水分を摂取しても体の熱がとれません。心配して早めに会社を出てくれる主人に買物を頼み、なんとかごはんだけを炊くという、即席のさみしい食卓がつづきましたが、染付けの飯碗に炊きたてのごはんをよそうとき、つめたい磁器の感触が、指先から熱のこもった体にすぅーっと伝わり、なんだかきもちがいいな‥ と、新鮮な発見。


 「衣替えをするように、飯椀も夏向きのものに替えてみよう」

 そう思いたち、いつものうつわのお店でもとめた松葉と麦わら手の飯椀なのです。どちらも、女性の手ならではのやわらかな味わいと、白い肌に浮かぶ藍色がなんとも涼やか。素朴であたたかな土もののほうが好き、とおもっていたのに、いまさら磁器の魅力を身をもって実感したのでした。


宮岡麻衣子さん作の愛用のうつわたち。左は納豆専用?の輪花鉢、右は麦わら手飯椀の高台です。宮岡さんのうつわは高台に特徴があって、江戸期の古いものをずいぶん研究していられるのでは‥と思わせる、美しいフォルムと絵付け。

 ついでにお湯呑みも‥ 主人とわたしそれぞれの好みのものに、替えてしまいました ^^ゞ (左は、主人のお気に入りの郡司庸久さんのもの)



 夏日かとおもえば、遅霜注意報が出るという不安定な気候です。みなさまも十分気をつけておすごしください。