雪月花 季節を感じて

2005年~2019年
2019年~Instagramへ移行しました 

帯留め(二) 秋をそえて

2010年11月26日 | きもの日和
 
 秋深まる街をきものでゆくとき、街路樹の紅葉や木の実のひと色を装いに取り入れたくなります。真綿紬や唐棧、紺絣のきものにざっくりとした帯を合わせ、秋色の帯留めをのせる。至福のひとときです。

 手前は会津塗り、奥は飴釉の箸置きを帯留めにしたもの。
 漆のみを塗り重ねてつくられた帯留めはとろりとした味わいです。ところどころにほどこされた螺鈿が、時おりにぶい光を放ちます。
 益子の陶芸家、郡司庸久・慶子ご夫妻による箸置きは、お干菓子の木型を利用してつくられたもの。だから和装にもなじむのでしょう。飴色がとても上品で、見たとたん「これを帯留めにしよう」とおもいました。
 朱漆も飴釉も、黄金色の秋の陽にこそ深みを増します。


 郡司庸久さんの作品展を開催中の益子へ、行ってまいります。
 

奈良の東下り

2010年11月24日 | たまゆら ‥日々是好日(随筆)
 
 奈良在住のお友だちが東京に遊びにきてくれました ^^

 奈良をこよなく愛す友人ふたりと東京国立博物館の特別展「東大寺大仏 天平の至宝」を鑑賞する機会にめぐまれ、幸せでした。秋色に粧う上野の森をきものでならんで歩きながら、すぎゆく時間をつくづく惜しんだことでした。(詳しくは こちら へ)

 平城遷都1300年祭のことし、東京で開催された奈良関連の展観にはできるだけ足を運ぶようにしていたから、わたしにとってはまるで奈良が次々に東下りをしてきたような一年でした。
 昨今は当地へ足を運ばずともあらゆる貴重な文化財に触れることができるけれど、何もかもを安易に(東京に)もってくることには疑問を感じるし、展示の方法を工夫すべき点はすくなくないし、できることなら現地へ足を運んで拝することがもっとも大事ということは、忘れないようにしたい。

 朋有り遠方より来る、亦た楽しからずや。
 ブログを通じてつながるご縁は、ほんとうに有難いこと。相通ずるおもいをもつ者同志が自然に寄り合うことの不思議を、かみしめた晩秋のひと日です。


 しをんさんへ。
 しをんさんとかけて、お漬け物ととく♪
 ー そのこころは?
 しをんさんったら、東京にいらしても “奈良漬け” なんだもの~ ^^

 いつの日か奈良を案内してくださいね。


この春、しをんさんから届いた散華のおたよりには、なにより家族をいたわるきもちが綴られていました。
楽しい東京時間はあっという間にすぎて、再会を待つ時間が流れ始めます。「一期一会」という境地には、容易に近づけません。

 

偲ぶ草

2010年11月19日 | 小魚庵だより ‥日々の拾遺
 
 不謹慎ですけど、お香典返しの話です。

 主人宛に届いたお香典返しが、小瓶に入ったオリーブオイルでした。めずらしくて、主人もわたしも「なぜオリーブオイル??」と不思議がっていたら、喪主のお手紙に「故人の好きだったものをみなさまにお分けします」とのこと。なるほど、亡くなられた方(主人の同僚のお父上)は、このオリーブオイルがお好きだったのね!と合点がゆきました。

 箱書きに「このオリーブオイルはイタリアのトスカーナ地方原産の高級オイル‥云々」とあります。瓶のデザインもお洒落で、一見すると洋酒かオーデコロンのよう。お会いしたことはないけれど、故人のハイセンスなご趣味が偲ばれます。

 「ずいぶんお洒落な人だなぁ。きっと、このオリーブオイルじゃなきゃダメだったんだろうね」。
 「何に使ったのかな? おいしいパンにつけたりしたのかな。食卓に欠かさずあったんだろうね」。

 美しい黄金色の小瓶からお人柄や暮らしぶりにまで話はおよび、亡き人を偲ぶにふさわしい返礼に主人もわたしも感心しきりです。


 このオリーブオイルのために、パンを焼こうとおもいます。
 

999.9

2010年11月16日 | 小魚庵だより ‥日々の拾遺
 
 長年使用した眼鏡が傷み、目の疲れを覚えるようになったので、おもいきってレンズもフレームも新調しました。コンタクトレンズと併用なので、眼鏡をつけるときはくつろげるようレンズは弱めにしています。

 小学生のころから眼鏡と親しんできたわたしにとって、眼鏡は体の一部のようなものだから、ついぞんざいに扱ってしまうことも。新しい眼鏡を手にしたわたしに、主人が「大事にね。つけたまま寝ちゃダメだよ」。

 主人もわたしも、眼鏡は999.9(フォーナインズ)製を愛用。長年お世話になっているお店の方に、今回は和装にもなじむ色とかたちのものをすすめてもらってよろこんでいたら、「このフレームは、いずれ遠近両用レンズになさるときにも対応できます」といわれ、フクザツなきもちに‥ ^^;
 

形見分け

2010年11月10日 | くらしの和
 
 ちょっと贅沢なブックカバーを使っています ^^

 先月、友だちと久しぶりに訪れた旧白洲邸・武相荘。花のない時季ですこしく淋しい風情でしたけど、郊外の茅葺きの民家で季節によりそうくらしをされた白洲次郎・正子ご夫妻の遺愛の品々を拝見するのは楽しみです。

 帰りぎわ、ショップで見つけたのがこのブックカバーです。表も内側も、紬の端布をつないだ渋いデザイン。手にとって見ていたら、お店の方が「正子さんが愛用されていた、田島隆夫さんの紬織です」と教えてくださいました。

 そういえば、端布の柄は邸内に展示されていた正子さんの羽織と同じものです。さらに「正子さんのお嬢さまの(牧山)桂子さんが作られたものです。お忙しい方なのでたくさんはつくりませんけど、お店にあるときはご縁ですよ」とすすめられたら、放っては帰れません‥ ^^;

 そうして手にした逸品です。
 丁寧に芯を入れて仕立ててあるため、紬織の風合いがストレートに伝わってこないのが少々残念なのですが、お母上のたいせつなおきものを潔く形見分けくださった牧山桂子さんのお気持ちに感謝しています。

かつて銀座に呉服店「こうげい」を営んだ白洲正子さんは、田島隆夫氏(染織家・田島拓雄氏のお父上)の紬織を「時間を忘れ、金に換えることを忘れた糸」と書いています。きものの友だちに「田島隆夫の紬織をもっているのよ~」と自慢できるかな(笑

 武相荘をあとにし、思いつきで足を伸ばした城下町のギャラリーで、友だちがステキな染帯をお買い上げするというサプライズも付いて、あの日は楽しいきもの日和でした ^^


 ことしで生誕100年を迎えた白洲正子さん。11月21日まで滋賀県立近代美術館にて開催中の「生誕100年特別展 白洲正子 神と仏、自然への祈り」が、来年三月に東京の世田谷美術館に巡回します。
 

ふつうにくらす

2010年11月04日 | 本の森
 
 しばらくさくら書房を更新できていないけれど、本はちょこちょこ読んでいます。

 いますこしむつかしい本を読んでいて、ちょっと疲れたなぁとおもいながら、気分転換に‥と手にした本が、すこし前に主人が図書館で借りて「おもしろかったよ」と話してくれた、小川糸さんの『ペンギンと暮らす』です。

 小川糸さんは、お料理じょうずでとってもチャーミングな作家さん。最近映画化された『食堂かたつむり』の著者、といったほうが分かりやすいかもしれませんね。


 主人とメダカのつがいを買いに出かけた電車の中で『ペンギンと暮らす』を読んでいたら、ふだんからわたしが考えていることとまったく同じ糸さんの文を見つけて、とってもうれしかったのです ^^

 私はやっぱり、ふつうに暮らすことが大好きだし、それがなかったら生きていけないなぁ、と思う。
 朝起きたら柚子茶を飲んで、洗濯を干して、ペンギン(※)と朝ごはんを食べ、お昼のニュースを見て、本を読んで、夕方は散歩に出かけ、夜ごはんを作って、またペンギンと一緒に食べて、寝る。
 そういう何気ない日常の中に、いっぱい宝物が詰まっている。
  :
 「ふつう」というのは、つまり「自然」ということ。
 私も最近、ずっとそのことを考えている。
 簡単にいうと、「ふつうでいいじゃん!」みたいな感じ。
 ふつう=自然であることは、本当に素晴らしいことなんだ、と思う。
  :

 (※注 文中のペンギンとは、小川糸さんのご主人のことです)

 ほんとうにそのとおり。とおもうのです。

 ふつうのくらしが何よりしあわせ。
 ふつうの手づくりごはんがおいしい。
 ときおり、たいせつな友だちとのおしゃべりや、ちょっぴり刺激的な体験のある贅沢。
 くらしや、人間関係を、複雑にしない。

 たいせつなものを見失わないためのヒケツ。わたしも、糸さんと同じおもいを、ずっとあたためています。


 そんなことを、しみじみと感じた本。
 糸さん、有難う。

 小川糸さんのホームページは こちら です。
 

むかごときのこの炊きこみごはん

2010年11月01日 | 季節の膳 ‥旬をいただく
 
 コロコロかわいい、むかごをいただきました♪

 しめじといっしょに炊いて、むかごときのこの炊きこみごはんに。じつは、むかごごはんを炊くのははじめてです。どんなお味なのかな~と、ワクワク。お芋と同じ歯ざわりだけど、ほんのり苦みがあるのですね。秋のみのりをほくほくいただきました ^^ たくさん炊いたので、明日は主人もわたしもむかごごはんのお弁当です。

 Kさん、ごちそうさまです ^^
 「零余子」という漢字も覚えました。