雪月花 季節を感じて

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東北の手仕事(四) 鉄瓶

2009年10月29日 | くらしの和
 
 「秋の実大アラレ」という名の南部鉄瓶です。

 長い間探しもとめていた鉄瓶ですが、先日旅先でお気に入りのカタチを見つけました。盛岡の老舗、「釜定」のもの。いまはまだ“ならし”の最中で、鉄瓶の内部に湯アカをつけているところです。ふだんは、同じく盛岡の鈴木盛久工房製の鍋敷きに鎮座しています。

 購入したお店も、ずっと訪れたいとおもっていた場所。STARNET は、民芸の里・益子町(栃木県)から自然に寄りそうくらしを提案したり、発信しています。水と緑のゆたかな益子の森に隣接する池のほとりにひっそりとたたずむ、静かな空間です。


 湯の沸く音、湯をそそぐ音、立ちのぼる湯の気‥ 鉄瓶のあるくらしは、楽しい。あたたかな冬になりそうです。


STARNET で主人が購入した汲出し。足尾町(栃木県)に工房を構える郡司庸久さんの作品です。郡司さんは、いま注目の若手実力派。たまたま目にとめたのが郡司さんの作品だったせいか、主人はうれしそう。オフィスで使用中。

 

くらしがたいせつ

2009年10月10日 | くらしの和
 
 『昭和の家事』という記録映画を見ました。明治生まれの一主婦として、大正から昭和の時代を生きた故・小泉スズさんの家事のようすを撮影したもので、「着物をほどく」、「(ほどいた着物で)夏がけふとんを縫う」、「洗い張り(板張りと伸子張り)」、「大根と白菜を漬ける」、「おはぎをつくる」という五部構成になっていました。

 どの家事も、高度成長期をむかえるまでの日本のごくふつうのどの家庭にも見られた光景だそうですが、わたしやわたしの周囲を見回してみますと、いまではほとんど失われてしまった家事ばかりです。

 (主演の)小泉スズさんは器用な方で、中でもお針仕事は得意だったそうですが、お針も台所仕事も、長く使いこんだ古い道具を大事に使いながら、手際よく丁寧に、時間と手間を惜しまず家族のために尽くしてきたその姿に、誰もみな感動せずにはいられません。


 時代は変わり、重労働だった家事から解放されたいま、むかしより時間はたっぷりとあるはずなのに、仕事や娯楽、あるいは自己実現に忙しくて、立派な家や家財道具は持っていても、家の中のくらしの充実は後まわしなのが現実でしょうか。もともと、日本はくらしというものを重視する基盤の弱い国で、まず最初に犠牲にされるのが庶民のくらしなのだそうです。

 家事や主婦の手仕事というのは、作品や技術が後世に残る伝統工芸の世界とちがい、時代の変遷に埋もれてどんどん消えてしまうものだから、せめて映像にして残しておきたい、そして、これをきっかけに、日本のくらしの哲学というものを打ち立ててゆくことができれば、という製作者の願いがしみじみと伝わってくる映画です。きっと再上映されるので、みなさまもご興味があればご覧になってくださいね。いずれテレビで放映されないかな、と願っているのですけど。


 ※ 詳しくは、「昭和のくらし博物館」のホームページをご覧ください。