お気に入りのレシピから (1) トマト醤

2009年08月28日 | 季節の膳 ‥旬をいただく
 
 夏休みの八月はのんびりできるかな‥ とおもっていましたのに、諸事情あって足早にすぎてしまいました。九月、十月も、どうしたわけでしょう、スケジュールがどんどん勝手に決まってしまいます。こんなときは、急流にさからわず、身をまかせたほうがよさそうですね。ブログに綴りたいこともなかなか記事にできないのですが、折をみて更新してゆきます。


 8月31日は、「野菜の日」です。
 日照不足で野菜の高騰がつづいています。義父母の畑は昨年にひきつづきイノシシに荒されてしまい、やむをえず義父が畑の周囲に柵を立てました。でも、地元産の野菜は元気で安値なので助かっています。


 夏が旬のトマトは、つめた~く冷やしてそのままいただくのがいちばん!ですが、ちょっと見た目はよくないけれど、安価なトマトがたくさん手に入ったら、トマトソースをつくっておきます。


 オリーブオイルを使って、ガーリック、塩、胡椒でシンプルな洋風味のものをよくつくりおきしますが、今回は毎月楽しみにしている某婦人雑誌のレシピから、お醤油と豆板醤で味つけした辛味のソースを。

 プレーン・オムレツやスクランブル・エッグなどの卵料理によく合いますし、冷や奴にかけたり、パスタにからませたり。もちろん、お魚やお肉料理にも合うお役だちソースです ^^


白身魚のフライに


 「トマト醤(じゃん)」と命名されていたこのソース。ピリ辛風味が大好きな主人に好評です ^^
 

夏 二題

2009年08月21日 | 筆すさび ‥俳画
 
 すでに旬をすぎてしまった感があるのですが、夏の画題をふたつ ^^

 昨夏の夏野菜は「かぼちゃ」、今夏は「きゅうり」です。
 主人がきゅうりを嫌うので、わが家の食卓にきゅうりはいっさいのぼりません。この絵も部屋に飾ることなく、すぐにお蔵入り。かわいそうな、きゅうりです。せめて、ブログの記事のてっぺんに載せてあげましょう。


 もうひとつは夏の風物詩です。


 氷といえば、毎年銀座・東京羊羹の喫茶室で「氷クリーム宇治金時」をいただくのを楽しみ♪にしていましたのに、残念なことに昨年喫茶室が閉鎖されてしまいました(泣 だから、というわけではないのですが、手軽な手動のかき氷機を購入して、自宅でつくっています。つくりおきの梅やプラムのシロップ、カルピスなどで楽しんでいます ^^


 日焼顔見合ひてうまし氷水 (水原秋櫻子)

 子どもたちの夏休みも、あと10日あまりですね。
 

『てんかいそうろう』

2009年08月17日 | 本の森
 
 お盆のころから天気が安定して、ようやく夏らしくなりました。蝉たちも元気いっぱい、朝顔や百日紅の花は、「夏はこうでなくっちゃ!」といわんばかりに咲きほこっています。でも、夕風のはこんでくる虫の声は、まるで鈴の音のように軽やか。夏と秋の同居を感じます。


 お手伝い仕事で時おりうかがう会社に気の合う女性がいて、先日ある話のきっかけから「よかったら、読んでみてください」とB5版三枚分にコピーされた短い文章を手渡されました。それは、劇作家で俳優の戌井昭人(いぬいあきと)さんが書かれたエッセイで、タイトルはひらがなで『てんかいそうろう』(※)とあります。漢字にすると「天下居候」なのだけど、このエッセイを読めば、なんとなくひらがながぴったりくる感じがして、おもわずほほえんでしまいます。

 文章を読まなくても、タイトルから何が書かれてあるかだいたい想像できたのだけど、読んでみるとやっぱり予想どおりで、たとえばこんな文があります。

 天下居候‥‥眺めていると、人間なんて宇宙から見たら地球に天下居候なわけで、生きていれば死ぬまで天下居候なのだと、「でも、だからどうした、いいじゃないか、居候をまっとうしな」そんなふうに言われている気がしてきました。そして氏名なんてものは、ただの記号や数字みたいなもので、電話番号や住所と同じなのではないかとさえ思えてきました。

 で、その戌井さんはというと、しばしば名まえを「成井(なるい)」さんと間違えられるそうで、ときに面倒になって「ハイ、ナルイです」とそのまま名のってしまうらしいのです。すると、

 何かがスーッと抜けていくような気がして、少し心地よかったのです。たぶんそれは、社会生活の上で自分にまとわりついた色んな記号みたいなもの、生年月日とか住所とか身長とか体重とかメールアドレスとか電話番号とか、もちろん氏名とか、そういうものだったのではないかと思います。‥‥(略)‥‥そうだ、今ここにいる自分は、ただの天下居候なわけで、氏名なんてどうでもいいのだ、と思えてきたのでした。

 そんなおもいにいたったナルイさんは‥ いえ、イヌイさんは、まったく自由気ままな気分になって、誰にともなく「天下居候させて頂いております」とちょこんと頭をさげました、というところで、このエッセイは終わっています。


 いつだったか、生まれたときはまっさらだった赤ちゃんが、名まえをもらったとたんに不自由な存在になり、そして成長しながら、住所や電話番号、メールアドレス、出身校に学位や資格、地位や名誉などなど、それこそいろいろなものにがんじがらめになって、まことに不自由な暮らしをしているのがわたしたち人間である、と教えていただいたことがあります。

 なるほど、そういったもろもろのものを、すべて自分を自分たらしめるために必要なもの、あるいは付加価値と考えている人は多いのではないでしょうか。でもそれは、父なる天と、母なる大地のあわいに、わずかの間だけ間借りさせていただいているちっぽけな人間の、勝手なおもいこみであり、たいそう傲慢な考えなのかもしれません。足場をかためて安住しているつもりが、じつはたくさんの足かせをして生きているということ。そして、そういったものへの執着が、さまざまな軋轢を生むということも。

 イヌイさんのエッセイを読んで、そうおもえてなりませんでした。


 すてきなエッセイをすすめてくれたお礼を述べると、彼女はこう言いました。「イヌイさんは、名まえにこだわるより、摩擦をさけることを選んだんですよね」。

 わたしは、まるで説法を聞かせていただいたような、有難いきもちになって、「天下居候させていただいております」とおもいながら、ちょこんと頭を下げました ^^


 おしまい


※ 『てんかいそうろう』 は、光村図書出版・日本文藝家協会編の 『父娘の銀座 ベスト・エッセイ 2009』 に収録されています。5ページ余りの短いエッセイです。
 

ひんやりデザート

2009年08月11日 | 季節の膳 ‥旬をいただく
 
 夏のお楽しみのひとつ、ひんやりデザート♪

 梅雨時期につくった青梅煮を漬けていたシロップで、ジュレ(ゼリー)をつくりました。青梅のエキスをたっぷりと含んだジュレは、さわやかなお味とぷるぷるの食感がたまりません ^^

 こちらはキウイソルベ(シャーベット)です。生のキウイそのままのお味に、たねのつぶつぶ感がうれしいひと品です 。キウイの果肉をすこし残す程度にしますと、果肉の食感も楽しめます ^^


 どちらも、お味はもちろん、見た目がとっても涼やか~なのがうれしいおやつ。しばし蝉時雨と暑気を忘れます ^^ さっぱりとしたあと味なので、食後にもおすすめです。


 ‥とはいえ、日照時間がすくなく、残念ながらつめたいデザートをこころから楽しめない夏です。

 大雨の被害をもたらしている台風9号といい、ここ数日つづけて発生した東海地方を中心とする強い地震といい、自然災害の脅威を実感しています。みなさまも、まさかのときの備えをお忘れなく。


 立秋の候となり、残暑はきびしいけれど、近くの畑に赤とんぼがたくさん飛んでいます。耳をすませば、法師蝉に蜩、夕刻の草叢から秋の虫の音が聞こえます。
 

映日荷花別様紅

2009年08月06日 | 季節を感じて ‥一期一会
 
 午前8時15分、町中に鐘の音が鳴りひびき、一分間の黙祷をいたしました。今日6日は広島原爆の日です。


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 蓮田に出かけた友人から古代ハス(大賀ハス)の写真が届きました。二千年前のいのちの神秘を今に伝える花のことは、わたしも四年前の夏の記事「千古の花」に書きました。写真は、開花して三日目の花でしょうか。


 葉は水を、花は夏の光をせいいっぱいあつめて、たった四日間だけのはかないいのちを散らします。「映日荷花別様紅」は、陽光に映える紅蓮の花の気高さと美をたたえた名句で、中国は南宋時代の詩人・楊万里の詩の一節です。

 蓮の葉を荷葉(かよう)、花を荷花(かか)といい、中国では古くから荷花の美を愛でてきましたが、その荷花さえも恥じ入るほどの美しさである「荷花羞玉顔」と李白が詠んだ呉越時代の傾国の美女、西施(せいし)の美貌とは、いったいどんなものだったのでしょう。


 西施といえば、日本では芭蕉が「象潟や雨に西施がねぶの花」と詠んでいます。蓮華よりも合歓の花のほうが美しい?とつまらぬ深読みをするよりも、ここは、雨にうたれてうつむいている合歓の花の姿に、時代に翻弄されたひとりの哀しい美女の面影をしのんでいる、と読むべきでしょうね。


 わたしの住む町の蓮田では、毎年八月第一日曜の早朝に荷葉酒と荷葉茶がふるまわれます。これは、蓮の葉を煎じて飲むのではないんですよ ^^
 

夏のごあいさつ

2009年08月03日 | 筆すさび ‥俳画
 
 頭上にまっ白な夏雲が浮かび、蝉の声が勢いを増して、ようやく夏らしくなってまいりました。みなさまにはお変わりありませんか。

 本日、東海および近畿地方の梅雨が明けたようです。全国的に夏本番を迎えたわけではありませんけど、そろそろブログの背景を盛夏向けに切り替え、暑中お見舞いのごあいさつとさせていただきます。


 大雨の被害にみまわれた地方、冷夏になりそうな東北以北の地方の方々にも、夏の太陽のめぐみがありますように。

 長びく梅雨のせいでなかなか衰えない新型ウイルスが退散しますように。

 全国の子どもたちが、元気いっぱいで無事に夏をすごせますように。


 あの夏の数かぎりなきそしてまたたった一つの表情をせよ
 (小野茂樹)


 この夏は、たったいちどきり、なのですね。
 お元気で、ステキな夏をおすごしください ^^