雪月花 季節を感じて

2005年~2019年
2019年~Instagramへ移行しました 

花とくらす (一)

2008年03月31日 | 季節を感じて ‥一期一会
 
 この町に移り住んで三年目の春。はじめてカメラをたずさえて自宅近くの桜並木を歩きました。ソメイヨシノばかりが連なる遊歩道は、毎年「これでもか」というほどいっぱいの花をつけ、たくさんの人を呼びます。「花見んと群れつつ人の来るのみぞあたら桜のとがにはありける」と詠んだのは花の歌人、西行でした。西行さん、ソメイヨシノって、山桜よりずっとさみしがり屋なんですよ‥。おかげで、わたしも主人も花と人に酔ってしまい、昨年は遊歩道をはずれた公園の山桜の樹下でお弁当を広げたのでした。

 今年はせめて写真を‥とおもいたち、お花見日和の週末朝早くから出かけました。そうなると、やはりきれいに撮ってあげたくなるもの。いつのまにか、夢中になってシャッターを切っていたわたしです。
 仕事が忙しくて、週末も出勤した主人にも見せてあげたくて。

花逍遥 2008年
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 自宅近くの川沿いにおよそ2kmつづくソメイヨシノの桜並木。この日は快晴、清んだ青空のもとで見る桜は格別でした。スズメが花をむしり蜜を吸ってはぷぃっと捨てる。すると、頭上から花がまるごとくるくる‥と落ちてくるのがステキでした。お花見のあと花疲れをいやしてくれるのは‥ 桜もち ^^  写真撮影:2008年3月29日
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※ 写真にマウスをのせるとスクロールが止まります


 雨上がりの今日は花冷え。「花冷え」という美しい言葉に、すこしでも、一日でも長く、花がもちますように‥という願いをこめて。


 さくらとくらす一週間。
 「花とくらす」と題して、しばらくの間さくらとお話をしようとおもいます ^^

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菜の花漬

2008年03月26日 | 季節の膳 ‥旬をいただく
 
 ひとりごち菜花を漬ける雨夜かな (雪月花)

 キャベツ、菜の花、ふき、アスパラガス、たけのこ‥ 春野菜が出まわる季節はお台所に立つのが楽しみ。お料理の苦手なわたしはレパートリーがすくないため、新聞に毎日載るクッキング・メモを欠かさずチェックします。そのメモから、昨夜は「菜の花の一夜漬け」をつくってみました。ひと晩漬けこんで‥ お昼にいただいてみたら、と~っても美味! 思わず「お茶漬け食べたいっ」って、おもうほど‥ ^^ゞ

 レシピもとっても簡単。100ccのお水に小さじ一杯の塩を溶かし、細く切った昆布と、さっと湯がいた菜の花を漬けただけ。手をかけず、素材の良さを生かしたおいしいおかずを提案する料理研究家って、スゴイ。尊敬しちゃう。クッキング・メモのスクラップブックも、だんだんいっぱいになってきました。いつも助かっています ^^



 春分をすぎ、日の出が早くなりました。ここ数日、西の空にのこる有明の月が美しいです。陰暦の十六日以降、夜明けてなお空にある月。むかしの恋人たちはこの月を恨んだものですけど、闌春の朝の月は金色に輝いてほれぼれするほどきれい。怨嗟の歌などつくれそうにありません。

 今朝の6時前に撮影したお月さま。蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」とは逆の風景です。



 桜はいま3~4分咲き。週末は主人と、週明けは母をさそってお花見です♪

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彼岸明け

2008年03月23日 | 季節を感じて ‥一期一会
 
 昨夜は旧暦如月の十五夜でした。いにしえの歌人が彼岸への道連れにしたお月さま。東の空にあるうちは朱をおびて大きく、いかにも重そうでした。

 目の上に重たき春の月夜かな (雪月花)


 主人の里でお墓参りをいたしました。
 墓苑に区画整理がなされ墓石が新しくなったのですが、「○○家の墓」と刻まれた部分に金泥が流しこまれたと聞いてビックリ。行ってみますと、わが家のお墓だけ刻字が☆金ピカ☆ではありませんか。墓石に、金泥‥? 合わないなぁ。いやしくも当家は禅宗ですぞ、と主人もわたしも苦笑い。「いや、石屋が『やっといてやるよ』と気前良く言うもんだから」と、父は明るく弁解していました。

 ふた月ぶりの里帰り。梅の咲き残る庭に、すみれと白いたんぽぽとカタクリの花が咲いていました。


 おみやげは畑の新じゃがとネギとカキ菜です。おじゃがは主人の好物なので、これからひんぱんに食卓にのぼります。



 いよいよ桜が咲きますね。
 なんとなく、そわそわしています。

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ぬくもり

2008年03月20日 | 小魚庵だより ‥日々の拾遺
 
 春に三日の晴れなし‥ 昨夜から雨が降りつづいています。
 旧暦ダイアリーの七十二候をひとつひとつ追ってみますと、桃の花が咲きはじめる、紋白蝶が舞いはじめる、すずめが巣作りをはじめる‥とあって、わが家の周辺ではその暦どおりです。


 友人がプレゼントしてくれた木のお皿に、はじめてお菓子をのせてみました。お干菓子の淡い色がのると、お花が咲いたようにきれい。なんだかもったいなくて、なかなか食べられませんでした。

 漆器は毎日使うけれど、無垢材のうつわははじめて。手彫りならではのでこぼこ感が、ふれるとぬくもりに変わる。

 そういえば、わたしのお気に入りのお匙(右の写真)と菓子切も表面がでこぼこ。口あたりがとってもやわらかなので愛用しています。肌がふれると、凸凹(でこぼこ)の凹に空気が入るからでしょうか。表面がつるつるの洋紙より、和紙の手ざわりがあたたかなのも、そのせいかも。


 ふと、人も同じかしら‥とおもいました。つるんもいいけれど、凸凹のほうが味があるかも、なんて。


 ‥そうそう、「すずめ、巣作りをはじめる」につづくのは、第十一候「桜、咲きはじめる」です。

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初音

2008年03月17日 | 季節を感じて ‥一期一会
 
 うぐひすの笠おとしたる椿哉 (芭蕉)

 週末、うぐいすの初音を聞きました。
 「グルグル‥ ケキョ、グゥルル、ケキョ」。四度目にようやく「ホ~ゥ、ケキョ!」という歌声に。うぐいすはただいま発声練習中。


 近所にやぶ椿の生垣をもつ古い家がありました。ありました‥と過去形なのは、昨年の秋に家はすっかり壊され、きれいな更地になってしまったから。庭先で優雅に枝をゆらしていた柳の緑も、時折見かけた男の子の姿と自転車も、生垣のやぶ椿も、ある日突然家とともに消えていました。その土地に、まもなく新しい家が四軒も建つのだとか。


 うぐいすの住まいはその更地の向かいのささやかなやぶの中です。椿はもうありません。でも、うぐいすは帰ってきました。なんだかとても、うれしかったのです。

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待つこころ

2008年03月14日 | たまゆら ‥日々是好日(随筆)
 
 まさおさんから、今年もまた東大寺修二会(お水取り)のお写真をいただきました。千二百五十七回目の修二会が滞りなく修されるのを知り、感動します。二週間にわたって、練行衆はわたしたちに代わってあらゆる罪をみ仏に懺悔し、天下安穏・五穀成熟・万民豊楽の祈りを捧げます。そのおかげで、今年もまた誰の上にも平等に春がやってくるのです。そう思えば、歳を重ねるというのはほんとうに有難いことですね。12日の大松明の日に西のほうを向き、数珠をかけた手を合わせました。

東大寺修二会 お松明
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 修二会とは「二月を美しくする」という意味である。‥不合理でなければ「文化」ではありえない。それに堪えて、不断にくりかえすというところに、他とちがった光が出てくるのである。(司馬遼太郎 『奈良散歩』より)  写真撮影: まさおさん
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※ 写真にマウスをのせるとスクロールが止まります

 練行衆の足音を春の音と聞く人があれば、うぐいすの初音に春の訪れを知る人もいます。あるいは、かつて見た花をなつかしみつつ来る春に期待する人もあるでしょう。きびしい冬をたえた分だけ、指折り数えて春を待つ気分は高揚します。


 “春待ち”は楽しいけれど、待つ‥ということは辛抱や忍耐もともないます。いつのころからか、わたしたちは辛抱強く待つということができなくなりました。図書館のパソコンで本を数冊つづけて検索していると、背後から聞こえてくる咳払い。交差点ですこしでも発進が遅れると鳴る後続の車のクラクション。数十分のダイヤの遅れに怒る大人たち。わたしも、数週間連絡をしていなかった知人へのメールに、つい「お久しぶりです」と書いてしまってはっとしました。二、三週間くらいで、「お久しぶり」も「ごぶさた」もないですよね。でも、思わずそう書いてしまうくらい、いまの社会と生活にはスピードが要求されているように思えます。
 パソコンや携帯電話の普及していなかった十数年前、わたしたちはどうやって仕事をし、必要な情報をあつめ、子どもたちを危険から守っていたのでしょうか。

 そんなとき、わたしのお返事が遅いことをお詫びした方から「メール時代になると、ゆっくりと返事を待つということがなくなりがちですよね。いつになるのやら?という待つ気持ちという時もまた、今では贅沢な時間の使い方なのかもしれません」と、温かいお言葉をいただきました。お気遣いに感謝しながら、ほっとした気持ちになりました。


 「待てば甘露(海路)の日和あり」「せまい日本、そんなに急いでどこへゆく」─ いずれも死語ですね(笑 でも、わたしは徳川家康にならって、うぐいすが鳴くまで待ちますよ。さらにむかしの人たちが、雪のふるのを花の舞いにたとえ、雪間からわずかにのぞく春を探したように、楽しみながら待つこころのゆとりをもちましょう。

 時を経て熟成するもの。それをたいせつにしたいのです。

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 一筆箋 ‥季節のおたより、当ブログへのご意見・ご感想をお待ちしています
 

さようなら冬

2008年03月12日 | 小魚庵だより ‥日々の拾遺
 
 昨日は五月初旬の暖かさで、こたつのある部屋が暑苦しく感じられました。にもかかわらず、昨晩はこの冬さいごのぶり大根を煮きました。先に塩をし湯通ししておいたぶりを、ふっくらと煮きあげたお大根の中に入れて30分あまり、アクをすくいながらコトコトと煮て、火を止めてしばらくおいて味を含ませる。家の中はぶり大根のにおいでいっぱい‥


 ぶりは天然のアラ、お大根は地元でとれたもの。丁寧に煮いたぶり大根は、味がすんでほんとうに美味しかった ^^ やっぱり、お料理は手をかけないとだめだなぁとしみじみ反省。


 この冬は義父母の畑のお大根も、煮たりお漬物にしたりして、たくさん食べました。水分が多いので、長く保存してもちっともひからびませんでした。


 ほくほくの冬の滋味をたっぷりと味わって、冬にさようならをした日。ぶり大根に季節の終わりを感じるなんて、食いしん坊のわたしらしいかも。

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文様印(十) 小物づくり

2008年03月06日 | 和楽印 めだか工房
 
 いつのまにか梅林の梅は満開になり、空に淡い花の雲をひろげています。啓蟄になりますと、梅の木の根もとに土筆を探します。土がかたいせいなのか、毎年丈の短いのが数えるほどしか出ないのですけど、見つけるとほっとします。どうか誰にも見つかりませんように、とられたりしませんように‥と祈ります。子どものころ、春の日差しにあふれる土手で両手にあまるほど摘んだ土筆。袴をとる指先が黒く染まったこと、おひたしのほろ苦い味。みななつかしく、もう遠いむかしのことのようです。

 土筆摘むや柔肌色の一掴み (本宮銑太郎)


 今回は、文様印を使った小物をいくつかご紹介します。
 先月ご紹介したカレンダーを改良して、ポストカードとしても使えるようにしました。あるお店で主人がアルバムカレンダーを見つけ、「これ、使えるんじゃない?」というのでさっそく数冊を購入。本来は写真をはさみこみ、アルバムカレンダーとして使うものですが、それにはがきサイズの文様カレンダーを入れています。(上の画像です) ほぼ原寸大のものは こちら です。
 「二葉葵(ふたばあおい)」は京都の賀茂神社の神紋、徳川家の紋章としても知られます。別名、賀茂葵(かもあおい)・葵草(あおいぐさ)・二葉草(ふたばぐさ)。夏の文様なのですけど、芽吹いたばかりの葉っぱの赤ちゃんのように愛らしいので、弥生三月に使ってみました。ポストカードとして使うときは、翌月のカレンダーのほうがよさそう。来月はやっぱり桜の文様かしら。


 お茶を楽しむときはコレです ^^


 和紙や厚紙(クラフト紙)くらいなら、簡易な円切りカッターで円形を切ることができます。コースター制作のポイントはふたつ。ひとつは、連続模様の場合、紙を切る前にはんこを押しておくこと。デザインが自然に見えます。ふたつめは、円形のコースターには円形でない文様を合わせること。○に○を合わせますと、アクセントのないデザインになってしまいます。それでも円形の文を合わせたいときは、レイアウトを幾何学的にきっちりと並べるか、大きさのちがう印を用意してランダムに散らします。


 最近、知人の依頼で家紋印を制作しました。「蝶」の女紋をご所望でしたので、数ある意匠の中から相談して「松葉蝶」という繊細な紋を選びました。こちらが完成品の写真です。消しゴムはんこに木材の持ち手を付けますと、いくらか見栄えがしますね。



 偶然、わたしの実家の紋も「蝶」なので、ついでに自分用に「糸輪覗き蝶(いとわのぞきちょう)」の家紋印をつくっておきました。半分だけのぞいているのがかわいいでしょ。(‥自己満足。) さっそく一筆箋用紙に押しました。並んで写っていますのは吉祥文のひとつ、「根曵松(ねびきまつ)」です。


 ちなみに、「丸に××」とか「糸輪に××」と呼ばれる○に囲まれた家紋は、比較的新しい意匠なのだそうです。とくに覗き紋のようなユーモアあふれるデザインは、江戸時代の職人さんの遊びごころがあふれている気がします。

 これからは、桜の意匠の小物をいくつかつくりたいな‥と思っています ^^


 せっせと小物づくりにいそしんでいますと、時がたつのを忘れてしまい、お昼ごはんを食べる時間すら惜しくなります。子どものころから家にこもるのが好きで、家族で出かけるはずの休日も何かと理由をつけて留守番役になり、絵を描いたりカードをつくったりしながらすごすのが好きでした。父はいつもがっかりしていたようです。でも、娘は大きくなってもちっとも変わっていませんよ、お父さん。
 
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土門挙の本をプレゼント

2008年03月06日 | お知らせ
 
 「小魚庵だより」に書きましたように、主人の友人から土門拳の本をいただいたのですが、そのうちの一冊『古寺を訪ねて3 京・洛北から宇治へ』(小学館文庫、2001年12月初版)がわたしの蔵書と重複していましたため、ご希望の方がいましたら一名さまに差し上げます。本は新品です。

 <お申し込み方法>
 一筆箋に① お名前(ハンドルネーム可)、② 正確なメールアドレス、③ おたより欄に「土門拳の本希望」とお書き添えの上、送信してくださいね。お申し込みは3月9日(日)まで受け付けます。なお、二名以上の方がご希望の場合は抽選になります。
 受付は終了いたしました。 


 一筆箋は こちら です。
 ご応募、お待ちしています。


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