木偶房 日日録

江上之清風 山間之明月

桜は本当に美しいのか 読す

2015年03月07日 | 読後記
桜は本当に美しいのか  欲望が生んだ文化装置   水原紫苑著 平凡社刊

桜の文化は、「古今集」によって創造されました。「万葉集」は、梅です。
さくら花ちりぬるかぜのなごりには水なきそらに浪ぞたちける  紀貫之
花の散った後の残像の美を見事に描いた彫刻のような美しい表現です。
春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にときなまし   和泉式部
梅のように長く咲き匂う生命感こそが、和泉式部の歌にはふさわしいものです。
青葉さえみれば心のとまるかな散りにし花の名残と思えば    西行
実に尋常でない西行の花狂いです。花によって西行の心が身から憧れ出てしまいます。
和歌は、王権を中心とする共同体と唱和する歌であり、核となる記号が桜でした。
和歌でなく短歌となった近代の歌は、自我を表現する詩となり、
桜の歌も特権的な地位を失ってしまいました。
古代の万葉集から、現代の桜ソングまで、「桜は本当に美しいのか?」
という問いに結論は得られせんでしたが、
桜を歌わずにはいられない日本の心に少し触れることができました。
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萩焼「ニーチェ」銘す

2015年03月01日 | 茶湯記
萩焼の抹茶碗を入手しました。
萩華山窯の小野光龍の作です。

茶碗の姿を見て、勝手ながら銘を考えました。
銘は、「ニーチェ」とします。
茶碗の正面と裏面で全く様子が異なるからです。
正面は、アポロ的です。

裏面は、ディオニュソス的です。

裏面に汚れたながれがあって,見た瞬間に「いやだな」と思たのですが、
この銘にしてみたら、これぞディオニュソスの現れのようにも
思えてきて余り気にならなくなりました。
なんでも、解釈次第ですね!
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