木偶房 日日録

江上之清風 山間之明月

新・ローマ帝国衰亡史 読す

2013年05月30日 | 読後記
新・ローマ帝国衰亡史
         南川高志著       岩波書店刊

21世紀の視点から解釈された新たな「ローマ帝国衰亡史」の試みです。
エドワード・ギボンの「ローマ帝国衰亡史」は、紀元2世紀のアントニウス帝から衰退が始まるとしていますが、
この書では、紀元4世紀のコンスタンティヌス大帝から衰退が始まります。

その衰退の最大の原因は、「ローマ人である」というアイデンティティの喪失にあるとしています。
ローマ帝国は、宏大な地域に住む多様な人々を「ローマ人である」という
単一のアイデンティティの下にまとめ上げた国家でした。
「ローマ人である」ことは、抽象的な概念ではなく軍隊や暮らしに密着した具体性を備えていたため、
帝国に参加すればより良い状況になれることを保証するものでした。
それ故に、ローマ帝国は魅力と威信をもつ「尊敬される国家」たり得たのでした。
ところがこの思想が「排他的ローマ主義」に変質してしまい、
他の民族を軽蔑し排除するようになったため、国家は魅力と威信を失い転落してしまったという訳です。
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紅葉山庭園 見物す

2013年05月28日 | 日日録
駿府城公園の一角に「紅葉山庭園」があります。
入園料150円なので入ってみました。
この庭園は、「里」、「海」、「山里」、「山」の4ゾーンに分かれており、
それぞれに駿河の国の名勝を織り込んでいるそうです。

「海」のゾーンです。遠くに見える築山はきっと富士山です。



「里」のゾーンです。花菖蒲の中に「八つ橋」が架かっています。



実は、軽井沢の我が「木偶房」の庭にも、「八つ橋」を造ってみました。
太すぎて玉切りできないため薪になれずにいた丸太を「八つ橋」風に庭に埋め込みました。
さらにオブジェ化しようと思い立ち黒のキシラデコールを塗ってみました。
塗り終えて眺めてみたら、なんと「巨大な炭」です。・・・やはり失敗かも?



そのうち色も落ち着くだろうと思い返し、当初のイメージ通り周囲に花菖蒲を植えてみます。

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駿府城 見物す

2013年05月27日 | 日日録
用があって静岡に行ったので、駿府城に寄ってきました。
このお城は徳川家康によって築城され、征夷大将軍を秀忠に譲った後は
ここが隠居先になっていました。
静岡は、かつては駿河守護の今川氏の領国支配の中心地でもありました。
その今川氏は、桶狭間で織田信長に破れた後、武田と徳川に攻め滅ぼされてしまいました。
ここは、まさに「強者どもの夢の跡」です。

巽櫓(たつみやぐら)と東御門(ひがしごもん)が復元されています。



堀に架かる東御門橋を渡ると、高麗門です。



門を入ると右手に、櫓門です。



この門を抜けると、駿府城公園です。
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太陽の塔 参拝す

2013年05月26日 | 日日録
用があって万博記念公園に行ったら、駅から「太陽の塔」が見えました。
そういえばここは、日本万国博覧会が開かれた場所です。
子供の頃、未来都市を思わせる様々な施設に夢を見たものでした。
宏大な敷地が、「万博記念公園」として残されており、
小さな子供を連れた若いお母さん達が利用しているようです。



この「太陽の塔」は、万国博覧会のシンボルとしてお祭り広場に立てられたものです。
岡本太郎の作品です。
頭部の黄金の顔が「未来」を表し、腹部の顔が「現在」を表しているそうです。



この公園に訪れる人たちは、この塔を見上げるでもなく、気にかけるでもなく、
路傍に立つ巨木のような、なんでもないものの扱いです。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の一節がふと頭に浮かびました。
・・・ホメラレモセズ、クニモサレズ・・・
「太陽の塔」は、そういうものになったようです。
改めて見上げてみると、
頭部の黄金の顔が「大日如来」 腹部の顔が「不動明王」の顔に見えてきました。
黄金の顔は、目を見開いてじっと遠くを見つめています。

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神は数学者か? 読す

2013年05月25日 | 読後記
神は数学者か? 万能な数学について
        マリオ・リヴィオ著
        千葉敏生訳        早川書房刊

「数学の不条理な有効性」
すなわち「何故数学は自然界を説明するのにこれほどまで有効なのか?」について、
ピタゴラス、プラトン、アルキメデス、ガリレオ、デカルト、ニュートン・・・ゲーデルと
数学の発展の歴史をたどりながら論じています。
ニュートンの「プリンキピア」によって、
人類史上初めて自然現象の説明と観測結果が統合され物理学と数学が
永久に結びついたとするくだりは感動しました。
ユークリッド幾何学の第五公理の否定から非ユークリッド幾何学が
生み出される場面は興奮しました。
数学そのものの展開をドラマチックな物語として堪能できる良書です。

神は数学が得意のようですが、
大日如来が「数即是空 空即是数」と語っていれば、
東洋独自の数学的展開があったかもしれません。
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続・金沢21世紀美術館 訪問す

2013年05月24日 | 書画記
美術館に周囲にいくつかの現代美術が展示されています。
アイスランドの芸術家 オラファー・エリアソンのインスタレーション作品
<カラー・アクティヴィティ・ハウス>です。



三色のガラス衝立ての中を動き回ると、異なる色の風景が次々に展開されます。
衝立てに中から見るとこうです。



ガラスには、減法混色の三原色 イエロー(黄)・マゼンタ(赤紫)・シアン(青緑)が使われています。
色材の三原色と言われる色で、三食混ぜると黒になります。
動き回って二色が重なると色が変化します。
イエローとマゼンタが重なると赤が、マゼンタとシアンが重なると青が、シアンとイエローが重なると緑が現れます。
案外面白いです。

子供の頃、三原色といえば赤・青・黄色でしたが今は違います。
目の光受容細胞が反応する波長を根拠に三原色が定められています。

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金沢21世紀美術館 訪問す

2013年05月23日 | 書画記
金沢21世紀美術館は、
「まちに開かれた公園のような美術館」というコンセプトで設計されているそうです。



ガラスの円筒の中に矩形の白い箱が置かれた平面なのでが全て透けて見えます。
エントランスの前に来ました。中庭が透けて見えます。



丁度開催されていたボーダーラインコレクション展を見ました。
中は撮影禁止です。
「開かれた」というコンセプトでつくられているのに、こういうところが開かれていません。

椅子に腰掛けて何となく外を眺めていると、不思議な体験をしました。
外の樹木が風にそよいでいるのに、耳には風の音が聞こえません。
中では話し声が建物内に反響して反響して空間全体がざわめいています。
目には自然の動き、耳には人の喧噪・・・不思議ですが、あまり快適ではありません。
足下を見ると、床のモルタルにクラックが大繁殖しています。

外からももう一度眺めます。



美しい建物です。実物を肉眼で見るより写真を撮影して写真をみた方がより美しく見えます。

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兼六園(夕顔亭) 見物す

2013年05月22日 | 日日録
時雨亭から日本最古の噴水に行きました。
この噴水は霞ヶ池を水源としているので、池の水面の高さまで吹き上がります。



通常は3.5mの高さまで吹き上がっているそうですが、ちょっと低いようです。

夕顔亭は園内最古の建物で、袖壁に瓢箪の透彫りがあるので夕顔亭と呼ばれています。
昔、瓢箪は夕顔と呼ばれていたそうです。



まだ4時を過ぎたばかりなのにもう戸締まりをはじめています。
この茶室の間取りは 三畳台目 台目切り 本勝手 で
燕庵(えんなん)と同じ古田織部好みです。

茶室の前の瓢(ひさご)池は静寂に包まれています。



と言いたいところですが、
翠滝を背景に記念写真を撮影する人たちの中国語が飛びかっています。

真弓坂の出口から出て、金沢21世紀美術館に向かいます。

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兼六園(時雨亭) 見物す

2013年05月21日 | 日日録
内橋亭から時雨亭に行きました。
ここは平成12年に再現されたといいますからかなり新しい建物です。
行ってみると「本日は貸切のため入亭できません」の立て看板です。



入亭を諦めて周囲を巡ると庭師が剪定作業をしていました。



庭師「兼六園」と染め抜かれた揃いのハッピ姿で「粋」です。
この庭園を歩いて感じるのは、庭の隅々まで手入れが行き届いていることです。
東京にも「後楽園」や「六義園」と行った大名庭園がありますが、
この「兼六園」ほど手入れが行き届いていません。どちらかというと雑です。

時雨亭の前庭に入る道も貸し切りのせいか進入禁止です。
関守石が置いてありました。



茶の文化も行き届いています。
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兼六園(内橋亭) 見物す

2013年05月20日 | 日日録
金沢に行く機会があったので兼六園を見物して来ました。

兼六園は、宋時代の文献「洛陽名園記」から
宏大・幽邃(ゆうすい)・人力・蒼古・水泉・眺望の六勝を
兼ね備えているという意味で「兼六」と命名されているそうです。

中国を手本としているせいか、円安のせいか、園内は中国人観光客で溢れかえっていました。
小松空港には国際線があり、上海、台北、ソウルと直接繋がっている事も一因でしょう。
観光してもらうのは大歓迎ですが、静かに鑑賞するということに無縁な民族なのでしょうね?

霞が池に内橋亭が張り出しています。





人が映らないように撮影すると写真の中には静寂の気が漂っていますが、
実際は、中国語の喧噪が周囲を満たしています。


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