ブクログより
あまりにも現実味にあふれ身につまされる。
実際、年老いた父親が手に負えなくなった長男【年齢は忘れたが成人)を殺害してしまったという痛ましい事件も記憶に新しい。
何か事件が起こると表面化するが、息をひそめてひっそりと暮らしているという家庭は現実にたくさんあるのではないだろうか。
本作の主人公は、せっかく進学校の中学校に入ったのにいじめが原因で学校をやめて引きこもってしまう。
親は最初いじめに気が付かず、いろいろ手をつくして元の生活に戻そうとするが、やがて暴力を振るうようになり、姉の結婚話をきっかけに、姉との対立などで過激化していく。
親も真剣に向き合う時が来た、というより向き合わざるを得ないようになり、事態は方向転換、良いほうに行くのか、悪くなるのか。
本当にどこにでもありそうな話で、いつでも起きていそうで、誰でも当事者になりうるということが恐ろしい。
誰でも子供を思わない親はいなくて、たとえその思いが的外れでも空回りでも、全力で向き合っているはずなのだが、それが子供に届かないもどかしさと悲しさ。
どこでボタンを掛け違えたのか、戻れるものならそこまで戻ってやり直したい、誰もがそう思うに違いない。
小説8050 / 林真理子