フリージア工房 国道723号店

ハロプロメンバーを応援してアイドル音楽を愛するエッセイブログ

アイドル音楽はポップであるべきか

2022-04-23 23:42:24 | アイドル etc

 Juice=Juiceのアルバムが発売されました。一枚はベスト盤で、あれもこれも収録されたお得な二枚組です。ベスト盤に収録されているシングル曲で私が特に好きなのが「ポップミュージック」。このタイトルを初めて聞いた時、私は思いました。「ハロプロはポップミュージックだろうか」と。
 ハロプロが目指してきたのは「大衆向け」な音楽なのかどうかは定義として難しい。長年ハロプロ楽曲を手掛けてきたつんく氏の作る音楽は万人向けかどうかというと、そうではないという印象で(だが、それがいい)、ゆえにハロプロから大ヒットが生まれなくなって久しいのだと思っています。
 近年、アイドル音楽から売れる楽曲が生まれるのは難しい状況が出来上がっています。アイドルが閉じた世界になっているのが一因。もはやCD売上がヒットを示す数字ではなくなって久しい。そういう状況の中でヒットしたと言える曲は数えるほどでしょう。
 では、ハロプロの曲を世の人の心に響かせるのは無理なのか。そんなことはない。曲のパワーで売上を伸ばした曲もある。でも、世間にまでそのパワーを届けるのが容易ではない。ハロプロが音楽番組に出る機会は少ない。サブスクリプションへの不参加もある。要するに、ヲタをやっていて、新曲が発表されたら欠かさずチェックしているような人でないと、なかなか曲自体は届きにくい現状もある。
 しかし、世間に音楽が届いたところで万人の心に突き刺さる必要もあるのかとも思ってもいます。
 それは、つんく氏が作り上げた「ハロプロらしさ」が活かされた作りで仕上がっている一連の楽曲は、おそらく万人に受けようというつもりは無いのではないかと想像できるからです。それがハロプロ楽曲とも言える。
 それでいいじゃないかと、私は思っています。

 音楽面に力を入れるアイドル。実はそれなりに存在していました。
 売上は大事だが、万人受け、或いは多くの人に受けることを目指すのではなく、好きになってもらえる人に向かって音楽を作る。むしろ、そのこだわりを前面に押し出していこう。どうせメディア展開を派手に出来ないのだから万人受けを意識する必要はない。もっと言えば、「これぞアイドルポップス」という枠に嵌める必要もない。そんな考えが窺えるアイドルが増えてきたのは、2012年くらいだったでしょうか。多数のアイドルが参加するフェスが盛況になり始めたのもこの頃です。
 面白い音楽をアイドルに歌わせようという試みは一定数以上のアイドルヲタに支持され、そういったアイドルを指して「楽曲派」なる言葉も生まれました。
 このムーブメントは当ブログにも影響を与え、様々なアイドルグループをブログで紹介させていただき、その中には後にハロプロメンバーとなる子が在籍しているケースもありました。
 それらのアイドルの存在が、ハロプロにも影響を与えたと考えています。これは音楽面に力を入れるアイドルが増え、音楽事務所が手掛けるアイドルであるハロプロも刺激を受けたのではないかと。
 様々な要因が重なったとはいえ、2015年以降、ハロプロは色んなミュージシャンやクリエイターが楽曲作成に参加し始めます。作詞や作曲はアップフロント所属ミュージシャンに限らず、広く依頼を募るようになり、結果としてハロプロの音楽の幅が広がったのでした。この開国路線とでも言いたくなる変化があったからこそ、今もハロプロがあるのだと思っています。

 でも、ハロプロの音楽性の多様化が世間に広く浸透しなかったように、世の「楽曲派」アイドルも人気面で苦戦します。一定数以上のアイドルヲタに支持され、それなりに動員できるようになったグループもあるし、その中からアリーナクラスの会場まで昇りつめたグループもあります。けれど、残念ながら「楽曲派」アイドルの多くはアイドルという枠を超えて世間に広がることはなく、ライブハウスで内容の濃いステージを提供し続けるにとどまりました。
 音楽的に面白いから売れる訳ではない。むしろ、面白いがゆえに大衆性が欠乏してファンが広がっていかないというのは何もアイドルに限った話ではなく、他の音楽ジャンルでもよくあることだし、音楽以外でも勝負できる世界であるアイドルよりも、ミュージシャンの方がシビアな問題でしょう。
 でも、アイドル音楽は定義が曖昧だから多様性が魅力であり、万人に受けなくても成立し、活動が持続できた、筈でした。
 ここ数年、「楽曲派」と呼ばれてきたグループが続々と店じまいしています。小さなライブハウスで他のグループと一緒にライブをやっているようなアイドルから、アリーナクラス或いはドームで出来るようなアイドルまで。

 昨日、私がハロプロ以外で一番推しているグループが事実上の解散を発表しました。グループは残るみたいですが、メンバーは全員抜けてしまうので、応援してきた人にとっては解散と同義です。
 そのグループがやってきた音楽はポップなミュージックではなく、いわゆるオルタナティブロックというジャンルでした。
 そういうジャンルが大衆性を持つことはなく、でも、そういう音楽が好きな人。または、一昔前の洋楽ロックが好きな人の耳に強烈に刺さる音楽を彼女たちは届けていました。
 ハロプロ音楽は多彩ではありますがオルタナ系はほぼないので、私は自分の求めている「オルタナを歌うアイドル」という欲求を、このアイドルに見出して、更に、良曲揃いでスタッフが(会場での音響なども含めて)サウンド作りに拘っている姿に共感して応援し続けてきました。
 そのグループはステージに立ち始めて六年。私が存在を知り応援するようになって五年が経過しました。彼女たちはワンマンライブ会場としてはビヨーンズがファーストワンマンライブを開催した会場にまで昇りつめましたし、メジャーレーベルに移籍してNHKの音楽番組に出演をしたこともありましたが、昇れたのはそこまででした。

 私は全てのアイドルが音楽に力を入れるべきだとは思っていないし、全てのアイドルがポップなアイドル音楽をやるべしとも思っていない。
 音楽性に拘った楽曲を披露してくれるアイドルが地道に活動していける世界であってほしいだけです。
 残念なのは、現実はそうなってはいないという点です。
 アイドルが世代交代していくのは当たり前ですが、上記のようにここ数年去っていった「楽曲派」アイドルたちは、そのフォロワーを生み出せていません。つまり、アイドル音楽界に於いて「楽曲派」という言葉は消滅しつつあります。
 それは結果であり、それが答え。少し寂しい気持ちになりながら、アイドル音楽に普遍性って必要なのだろうかと思っている今日この頃であります。

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