フリージア工房 国道723号店

ハロプロメンバーを応援してアイドル音楽を愛するエッセイブログ

MAMORE!!

2014-05-26 21:46:02 | アイドル etc

 今自分が見ているこの景色は夢の中の出来事だという事は、なんとなく理解できていた。でも、もう少しこの夢の世界に浸っていようと、夢の中の自分は冷静に思った。

 自分は東京近郊のどこかの郊外の駅前にある古びたイベントホールに居た。入口には聞いたことのないアイドルグループの名前で、今日ここで握手会が行われると書かれてある。聞いたことのないアイドルグループの名前はよくわからない。なぜ自分がここに居るのかもよくわからないが、夢に整合性を持たせるのは難しいことぐらい、自分の頭の中身だから理解している。自分は冷静なんだ。

 ポケットに手をやると握手券が10枚くらい入っているが、隣にいるヲタたちが「俺は今回45枚ぶっこんだぜ!」などと下品な会話をしている。自分のポケットの10枚なんて一見さんレベルらしい。
 そのヲタたちについていくように会場に入っていく。テニスコートを二面くらい作れそうなフロアスペースにヲタがたくさん居るのが入口から見える。女の子は3割くらいで、割と若い人が多い。
 さて、よくわからないけれど握手をするかと中に入ろうとすると、いきなり警備員に止められた。ボディチェックをするから一列に並べという。係員が服の上から手を当ててチェックでもするのかと思いきや、列は別室に進んでいった。中に入るとパーティションがいくつもあり、前の人から「どうぞ」と声のかかったパーティションの間に入っていく。すぐ自分の番になった。
 言われた所のパーティションの間に入ると、奥に係員が立っていて、床に銭湯の脱衣場にあるようなカゴが置いてある。
 「服を脱いでください」と係員が言う。ちょっとたじろいだが、それが決まりなようなので言われた通りに服を脱ぎ下着姿になる。係員は「失礼します」と言って上着のポケットなどをチェックし始めた。
 ここはなんなんだ?なぜ、ここまで厳重なんだ?

 ボディチェックを終えて握手会の行われているフロアに戻る。いきなり入口で荷物検査が始まった。金属探知機でチェックを受けたあと、カバンの中身まで見られる。夢の中の話だから、その中身が可笑しい。なぜかノートパソコンが三台も入っていて、なぜか駄菓子がたくさん入っていて、野菜ジュースのペットボトルまで入っている。後ろからひそひそ話が聞こえてくる。
「なんだあいつ。ノーパソ三台も持ってるよ」「いかにもなオタクたな」「なんでライバルグループがCMやってる野菜ジュースを持ち込んでるんだ?」「アンチかよ。要注意人物だな」

 いくつもある握手レーンを眺めるが、名前を見ても知らない人だ。ハロプロでもないし、AKBでもないようだし、誰なんだ?あっ、そういえば聞いたことのないアイドルグループだったなと思い出す。これは夢だからな。
 よくわからないので、ルックスで惹かれた娘を選んで列につく。自分の番が来た。

 「あっ、ムラカミ君だ!久しぶり!最近来てくれなかったよね。他のグループに浮気してたの?DD禁止だぞぉ」と一方的に高い声でまくし立てられるが、自分の名前は村上じゃねえ古峰だ。しかも、お前とは初めて握手するんだぜ?と心の中で思ったが、これは夢だからなと自分に言い聞かせて笑顔を返す。
「よっ、久しぶりだな。名前憶えててくれていたんだ。嬉しいな。そんな優しいエレナちゃんを忘れて他のアイドルに浮気なんてするわけ無いだろ」と取り繕った瞬間、素朴な笑顔を見せていた彼女の表情が変わった。
「私の名前憶えてないじゃん!私はエリナたよ。ひどいっ!」
 彼女が突然涙目になってきた。慌ててなだめる自分。しかし、後ろで順番待ちをしていたヲタが、なんか只事ならぬ事態が起きていると思ったのか野次を飛ばしてきた。
「あいつ、エリナちゃんを泣かしているぞ!あっ、さっきのアンチ野郎じゃないか!」

自分はあっという間に警備員とスタッフと、なぜだかヲタたちに取り押さえられていた。ふと気づくと右手にカッターナイフをなぜか握っている。俺はなんでこんなものを持っているのだ!

 別室に連れて行かれた自分は、そこで改めて荷物検査を受けた。カバンの中からノートパソコン三台と野菜ジュースと、駄菓子、、のはずが駄菓子がなくなっている。代わりにカッターナイフが入っている。こんな危ない物を持ち歩く訳がない。必死に説明した。先程、荷物検査をした時には入っていなかったのに!

 スタッフが警察に電話をしている。ちょっと待ってくれ!と叫んだ瞬間、自分の後ろにたくさんのヲタが横一列に並んで怖い顔をして立っている事に気づいた。
「おまえのせいでイベントは中止だ!」と口々に叫ぶ彼らに何かを弁明しようとしたところで目が覚めた。

 目が覚めると自分の部屋にいた。夢から目覚めたのか?机の前で自分は座っていた。
 机の上にはなぜか古いラジオが置いてある。こんな古い物は持っていない。ああ、まだ夢の続きなんだと冷静に思った。

 ラジオからニュースが聞こえてきた。雑音混じりに所々聞こえてくる言葉に身を乗り出した。
「…握手会で……カッターナイフを持って……押収したパソコン三台にそれぞれ別なアイドルグループへの犯行声明文が書かれた文書ファイルがあり…村上容疑者を逮捕…」
 なんで逮捕されているのに俺は部屋にいるんだ?そもそも、俺は村上ではない古峰だと何回言えば…。あっ、これはやっぱり夢なんだなと我に返った。ニュースは続いている。
「事態を重くみた政府は本日2015年4月1日をもって、アイドルの握手会を禁止する法律を作った事を発表した」
 ちょっと待て、法律ってそんなに簡単に成立するのか?しかも、今年は2015年じゃないし。やっぱり夢なんだと安堵の思いにホッとため息をついた時、自分の顔が涙でグチャグチャになっている事に気付いた。
 それは、悲しみでもなく、安心でもなく、ましてや喜びであるはずもなく、夢の世界で起きた出来事に、ただただ涙が止まらず夜は更けていった。

コメント (2)
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