世の中には知名度はあるけれど世間的にはあまり受け入れられていないジャンルというものがある。
総合格闘技は眉をひそめる人が少なくてもプロレスには冷ややかな視線を送る人の多さ。中身に違いはあれど、どちらも体を張って戦っているのだけれど。
日本独自のジャンルと言えそうな歌謡系ロックはカラオケでよく歌われたりするのに、ヘビーメタルなどハードロックを嘲笑する人の多さ。ちゃんと聴かずにサウンドイメージとファッションで印象を決めつけるなんて。
アイドルというジャンルもどちらかと言えば世間的には受け入れられてはいないジャンル。国民的に人気者になればまだ状況は違うけれど、それでも大人が楽しむジャンルとしては認められているとは言い難い。
女の子が憧れの対象として応援している分には男性がスポーツ選手を応援する感覚に似て、その行為は市民権を得ているけれど、男性が女性アイドルを応援するという行為は、どこか疑似恋愛という印象がつきまとってマニアックなものであるとされる。確かにアイドルヲタは偏執狂かもしれないけれど、その偏執狂としての部分を常識的な行動範囲で包み込めば、それは熱狂的という方向性に言い換える事が出来る訳で。
それでもどこかアイドルを応援するという行為に少しの後ろめたさを引きずりながら、クールに自己批判も織り交ぜながら観ているくらいがちょうどいい。だからアイドルは恐れる事なくあらゆる規格外な事にチャレンジしてほしい。物わかりの良い人のフリをした歌なんて別にアイドルが歌わなくてもいい。
などという屁理屈を浮かべながら聴いてみたら、「ピョコピョコウルトラ」は駄曲でもないし、堕曲でもない。冷静になってみてほしい。モーニング娘。史上もっとも低年齢アイドルグループな仕様になっている今のモーニング娘。が歌うに相応しい歌ってなんだろう?新生第一弾に相応しく歌い上げる曲は「生きるのが下手」とか「悲しみがこだまする」と歌う歌ではなく、ひたすら明るい、能天気なくらい明るい歌だ。
切ない気分に浸りたい人にはちゃんとC/W曲が用意されている。
ひとつ惜しいのは、せっかくここまでやっているのに、こういう歌を楽しんでくれそうな層にこの歌が届いていない事。うまく幼児層に浸透させられないものだろうか?
でも、そこまで支持層が広がる事は、アイドルに後ろめたさがなくなってきて健全な何かになってしまうという矛盾を抱えてしまう。それは、いつか来た道でもあるから終末が予想出来てしまうようで。