~記事紹介~
【 SMAP、ベッキー問題より深刻?「調べず平気で書く」
既存メディア、週刊文春が特別に見える“危険” 】
2016.5.12 11:00
コチラ 産経WEST【甘辛テレビ】
~引用~
「【豊田昌継の甘辛テレビ】
年明けに騒動となったSMAP独立やベッキー不倫問題は、その本質もさることながら、ネットメディアのあり方に注目が集まりました。あの時、それらの関係について談話をお願いしながら機会を逸した方に話を聞きました。テレビとネットの横断業界誌を発行するメディア・コンサルタントの境治さん。年明けの検証をと思っていたところ、既存メディアに警鐘を鳴らすのです。(豊田昌継)
自分で調べず平気で書く…既存メディアが陥った危険
境さんはコピーライターとして、日本テレビ系“劇空間プロ野球”の新聞広告「巨人を観ずに、めしが食えるか。」などの名コピーで脚光を浴び、その後は映像・CM制作のほか、業界誌「Media Border」の発行人として、各界にいろんな提言されています。
SMAP騒動から4カ月余り。その後も桂文枝さんが不倫相手とされる女性歌手に「フェイスブック」を使って“過去”をさらされたり、先月の熊本地震ではネット上にデマや誤報が流れ、一部で混乱があったりもしたようです。そうした、凶器になりかねないネットの危険性を指摘してもらおうと水を向けました。ところが、境さんは“ネットの危険性”という非常にざっくりした問いに対し、噛んで含めるようにこう切り出したのです。
「既存のメディア、ネットメディア、それにツイッターなど…そのすべてがマズイことになっています。自分たちで調べずに平気で書いている。マスメディアもやっています。週刊文春に書かれたことをワイドショーが延々と説明する。新聞も他メディアが書いたことを自社のウェブサイトでなぞる。最も危険なのはそれだと思っています」
いきなり痛い所を突かれました。僕はテレビ朝日の「やじうまワイド」に代表された“新聞読み比べ”が今や情報番組の主流となっていることに、使用料が支払われているとはいえ、違和感を持っていました。
紙でやってはいけないことはネットでもダメ
ところが、境さんが言われる通り、1月のSMAP騒動では「情報ソースが極めて限られている」ことを理由に、テレビ番組の発言内容や識者らの反応をそのまま紹介しました。ビートたけしさん、和田アキ子さんや上沼恵美子さん、マツコ・デラックスさんら「ご意見番」と呼ばれる人たちの番組での発言はネット上で日常的に掲載され、小欄でも何度か取り上げたことがあります。
「ネットには気軽に書けるというメリットがあります。でも、それと裏取りするしないは別。紙でやっちゃいけないことはネットでもダメ。ネットニュースやブログに引っ張られ、既存メディアも感覚がまひしています。スクープを連発する週刊文春は裏取りだけでなく、本人に確認することで脚光を浴びています。でも、これって皆さんがやってきたことを今も愚直に続けているにすぎないとも言えます」
著名人の中には、取材NGの人や、公式ブログをコメント発表の場にする人もおり、そこは若干言い訳をしたいところではありますが、基本的には「おっしゃる通り」と言うしかありません。新聞メディアの中には紙とネットとの共存、あるいはネットへの完全移行を画策する社が少なくありませんが、境さんはこうも指摘します。
「どうマネタイズ(ネット無料サービスから収益を生む方法)しているかを理解せずに、目先のPV(ページビュー=特定のページが開かれた回数)に追われる。でも、コンテンツをやみくもに増やしても、広告費が急激に増えているわけではない。つまり、1PVあたりの価値は格段に下がっている。自分の首を自分で絞めているんです」
低レベルコンテンツは作らなくて済む? 「分散型メディア」の可能性
一方で、境さんは自身の取材・編集活動から、個人で有料コンテンツを配信できるサービス「note」や「ネットフリックス」などを例に、「価値あるコンテンツには金が支払われる文化」ができつつあるとも言います。「だからこそ、目先のPVに追われて質の高いコンテンツ作りを忘れていては、この先に新しい波が来たときに対応できなくなります」
それらを解くヒントとして、境さんは「分散型メディア」というキーワードを披露しました。別表にあるように、コンテンツを「表出」する4つのメディア(あるいは5つ)がある中、送り手がそれらを有効に使い分けすれば、レベルの低いコンテンツは作らなくて済むというわけです。
「今は『Yahoo!』が各メディアの広告収入を左右するほど強力で、僕らも『ヤフトピ』に載るかどうかをつい考えてしまいます。でも、それがいつまでも続くとは思いません。有益な情報を得ようとする人に対し、いかに的確に抽出してもらえるかを送り手が考える。そのためにも、既存メディアには質の高いコンテンツを作り続けてほしい。ネットメディアに『そんな作り方はダメ』と戒めてほしいのです」
視聴率至上主義を批判してきた僕ら新聞メディアにも鳴らされた「警鐘」。コンテンツの価値が着実に下がっている「現実」…複雑な思いでこの原稿を綴っています。 」