大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・トモコパラドクス・42『ベターハーフ・5』

2018-10-30 06:34:49 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・42 
『ベターハーフ・5』 
        


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


 アズマッチを庇った杏は、トラックに5メ-トルも撥ね飛ばされた。

「杏、大丈夫か!」
「せ……先生こそ大丈夫……」
「大丈夫や、杏が、からだ張って助けてくれたから」
「361……覚えといて」
「なんや、それ?」
「うち跳ねよった車……ナンバーの下三桁」
「す、すぐ救急車呼んだるからな!」

 公園に居た人たちや、通行人の人たちがワラワラと集まってきた。
「まかしとき、うち救急車呼んだるさかい!」
「あたし、今、警察電話したよってに」
「お家の人に電話せなら、あんたスマホは!?」

 杏は、弱々しくスマホを取りだして、オバサンに渡した。
「あ、ボクの生徒やから、ボクが……」
「先生、そばにおって……ウ」
 
 杏の鼻と口から、血が流れてきた。

「喋ったらあかん、おれはずっとそばにおるさかい!」
 杏は、アズマッチの手を取ると、自分の胸に押しつけた。
「杏……」
「……ここ止まるまで……先生と……繋がってたい」
 ゴボっと音がして、杏は大量の血を吐いた。
「杏う!」

 もう、声は出せないが、杏は、口の動きだけで言った。

――ベター……ハーフ――

「うん、杏は、おれのベターハーフや。しっかりせい!」

 杏は頬笑み、そのまま胸の動きが止まった……。

「今だよ、なんとかするの……」
 紀香が言い終わる前に、友子は、無意識に時間を止めていた。

「こうしておけば、いいよね」
 処置を終えて、友子は紀香のところへ戻ってきた。

「今だよ、なんとかするのは!」
「今、やってきた。紀香が叫んでるうちに……」
「ひょっとして、時間……止めた?」
「ちょっとだけ、無意識だったから……」
「……肝臓の破裂が半分になって、肺に刺さった肋骨も一本に減ってる」
「頭のできものは、成長を止めてきた。これで半分の確率で助かる……と、思う」

 そこまで言うと、友子と紀香は一年前の東京の公園にリープした。

「見届けなくてよかったの?」
「あれが限界だった……のか、よく分からない。最後まで見届けたかったけど」
 ちょっと悔しそうに、友子は唇を噛んだ。
「まあ、あれでいいよ。あの二人は、自分の力でベターハーフになっていくよ。友子が全部やったら、ただの奇跡になっちゃう。ちょうど半分でよかったのよ」
「うん……今度のは勉強になった」

「友子、なんか忘れてない?」
「え……?」
 汗みずくの紀香を見ても、友子はピンと来なかった。
「汗よ、汗!」

 友子は、よほど緊張していたんだろう。外気温35度の公園で汗をかくのも忘れていたのだった……。
 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高校ライトノベル・ライトノ... | トップ | 高校ライトノベル・妹が憎た... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

トモコパラドクス」カテゴリの最新記事