トモコパラドクス・42
『ベターハーフ・5』
三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。
アズマッチを庇った杏は、トラックに5メ-トルも撥ね飛ばされた。
「杏、大丈夫か!」
「せ……先生こそ大丈夫……」
「大丈夫や、杏が、からだ張って助けてくれたから」
「361……覚えといて」
「なんや、それ?」
「うち跳ねよった車……ナンバーの下三桁」
「す、すぐ救急車呼んだるからな!」
公園に居た人たちや、通行人の人たちがワラワラと集まってきた。
「まかしとき、うち救急車呼んだるさかい!」
「あたし、今、警察電話したよってに」
「お家の人に電話せなら、あんたスマホは!?」
杏は、弱々しくスマホを取りだして、オバサンに渡した。
「あ、ボクの生徒やから、ボクが……」
「先生、そばにおって……ウ」
杏の鼻と口から、血が流れてきた。
「喋ったらあかん、おれはずっとそばにおるさかい!」
杏は、アズマッチの手を取ると、自分の胸に押しつけた。
「杏……」
「……ここ止まるまで……先生と……繋がってたい」
ゴボっと音がして、杏は大量の血を吐いた。
「杏う!」
もう、声は出せないが、杏は、口の動きだけで言った。
――ベター……ハーフ――
「うん、杏は、おれのベターハーフや。しっかりせい!」
杏は頬笑み、そのまま胸の動きが止まった……。
「今だよ、なんとかするの……」
紀香が言い終わる前に、友子は、無意識に時間を止めていた。
「こうしておけば、いいよね」
処置を終えて、友子は紀香のところへ戻ってきた。
「今だよ、なんとかするのは!」
「今、やってきた。紀香が叫んでるうちに……」
「ひょっとして、時間……止めた?」
「ちょっとだけ、無意識だったから……」
「……肝臓の破裂が半分になって、肺に刺さった肋骨も一本に減ってる」
「頭のできものは、成長を止めてきた。これで半分の確率で助かる……と、思う」
そこまで言うと、友子と紀香は一年前の東京の公園にリープした。
「見届けなくてよかったの?」
「あれが限界だった……のか、よく分からない。最後まで見届けたかったけど」
ちょっと悔しそうに、友子は唇を噛んだ。
「まあ、あれでいいよ。あの二人は、自分の力でベターハーフになっていくよ。友子が全部やったら、ただの奇跡になっちゃう。ちょうど半分でよかったのよ」
「うん……今度のは勉強になった」
「友子、なんか忘れてない?」
「え……?」
汗みずくの紀香を見ても、友子はピンと来なかった。
「汗よ、汗!」
友子は、よほど緊張していたんだろう。外気温35度の公園で汗をかくのも忘れていたのだった……。
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