大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)034・部室棟が見える窓

2024-05-18 06:18:47 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
034・部室棟が見える窓                      
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです





 へーーここがタコ部屋やねんなあーー!


「よかったら入りませんか」

 千歳が勧めると「うん、ありがとう! よっこらせ!」と、ミリーは窓から入って来た。

「あ、ごめん!」

「わ! あわわわ……」

  グニュ(#'▢'#)

 間近に着地したミリーは、狭い床にタタラを踏んで、延ばした両手で千歳の胸を掴んでしまった。

「いや、ほんまにごめん(;'∀')!」

「あ、あ、ごめんはいいですから、手をど、ど、どけてください꜀(>д<꜀ )」

「ごめんごめん!」

 慌ててどけた手を、握ったり開いたりするミリー。

「自分以外のオッパイ初めて触った……アハハ、なんやったら、うちのオッパイ触ってみる?」

 胸を突きだしたミリーに、両手をブンブン振ってイラナイイラナイをする千歳。

「今からお茶にするから、空いてるとこ座れや」

「うん、おおきに!」

「えと、紅茶とコーヒーどちらにします?」

「うちはコーヒー、あったらミルクも砂糖も」

「おれもコーヒー」

「あたしは紅茶」

「はい、じゃ、これお茶うけです」
 
 千歳は器用に身体を捻って、背もたれの後ろからお菓子の袋を三つばかり取り出した。

「千歳の車いすって、いろんなものが付いてるのねえ」

「電動にしたんで、ちょっと余裕なんです」

「えー、そうやったんか、気いつけへんかった」

「へー、どれどれ」

「あ、やだ、じろじろ見ないでくださいよー」

「そだね、ここ狭いから、今度、広いところで見せてよね!」

「え、あ、えと……」

「先輩、お湯が噴いてる!」

「わ、あわわわ」

 いつのまにか、狭さが距離の近さになり嬉しくなってきた。

「ここから、部室棟がよう見えるんやねえ……」

 コーヒーカップを両手で包むようにして、ミリーが呟いた。

「部室棟たすかってよかったねえ」

「ほんまや、こんどばっかりはアカンかと思たもんな」

「汚い建物としか思ってなかったけど、すごいものだったのね」

「わたしもビックリです、なんかの縁でしょうねえ、ひいお祖父さまの設計だなんてね……」

「補強すんねんやろか、解体修理するんやろか」

「ここから、ゆっくりと見届けですねー」

 そこまで聞いて、ミリーが振り返った。

「ね、うち、演劇部に入れてくれへんやろか?」

「「「え(゚д゚)!?」」」

「部室棟が、どないなっていくか、ここから見てみとなってきたよって」

「お、おう!」

「いいじゃん!」

「ぜひとも!」


 度重なる危機と妥協と思惑の末に、演劇部は定足数の四人になった……。



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局     



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