大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 20『俺はモブ夫だ!』

2018-09-01 07:14:34 | 小説・2

メガ盛りマイマイ 
 20『俺はモブ夫だ!』





 新藤君は芽刈さんの崇拝者なんだよね。

 梶山はかましてきやがった。
 かましてというのは俺の主観だ。

 雰囲気は、ドラマの主人公が台詞が三つくらいしかないモブキャラに憐憫の情を示しつつ自分こそがドラマの主人公であると宣言するのに似ている。

 宣言はするけども、けして奢らず、モブ夫を慰める。んでもって「憂さ晴らしに行こうぜ」とか言ってゲーセンとかにモブ夫を引っ張り出す。その前に「腹が減っては……」とか言って飯を奢ってくれる。ま、駅向こうの新装開店のラーメン屋とか。
 で、このラーメン屋が絶品で「う、美味いですね!」と感動の声を上げると「そーだろそーだろ(*^^)v」と歯磨きのCMみたいに健康的な歯を覗かせてガッツポーズ。
 あーやっぱ勝てねー……とか思っていると、思いのほかの猫舌で「アッチチチーーーーー!」とドジを踏む。
 カウンターの中のバイトのネーチャンが、それを見てクスっと笑ったりする。
 完璧なヒーローじゃなくて、どこかドジであることがトレンドだ。
 ゲーセンに行くと格ゲーだ。意外なことに奴は強い。
 ヒーローというのはオールマイティーだ、ウィークポイントは猫舌ぐらいのもんで、それも育ちの良さから「熱いものは苦手」ということだったりする。
「あ、すまん、つい熱くなっちまった」とか言うけど、ゲーセンのオーディエンスの視線は地味に落ち込むモブ夫には冷たい。
「得意なのやろうぜ!」
 奴は、あくまでもヒーロー的な気の良さからモブ夫の気を引きたてようとする。
「あれなら負けない」
 モブ夫が示すのはクレーンゲームだ。
 モブ夫は、いつの日か彼女を連れて、クレーンゲームで彼女が好きなプライズ品をゲットしてやろうと、腕に磨きをかけていた。
 だから、難易度の高い奥のぬいぐるみなんかを易々とゲット。
「スゴイよ、俺なんかじゃ半日やってもとれないよ!」
 自分のことのように喜ぶ奴は、一つ向こうの筐体で苦労している三人連れの女に子に声を掛ける。
「なんだったら俺たちにやらせてくれない? きっと獲ってあげるから」
 俺たちと言うところがミソだ、あいつが獲るからと言うと高い確率で断られる。奴は、そういう気配りが企まずに出来てしまう。
 で、じっさい自分がやって失敗を見せた上で、自然にモブ夫に晴れ舞台を用意する。
 でもって、モブ夫は一発で女の子の目当てのプライズ品をゲット。
「「「うわ、どーもありがとう!」」」
 女の子たちはお礼を言うけど「それじゃ!」と振り返っての二三歩先。

「やだ、モブ夫の手の汗が付いてる」
「あの人が獲ってくれたのだったら文句なしだったのに」
「シ、聞こえるよ」


 しっかり聞こえたモブ夫の肩を、奴は優しくポンと叩きやがる!


 俺の妄想は果てしない。


 しかし、梶山は俺を誘うこともしなくって、ポツリと言う。
「僕だってデートに誘っていなされてる、まあ、五十歩百歩だ。お互い励もうぜ」
 奴は、飲み終わった俺の空き缶も引き取って行儀よく空き缶用のゴミ箱に捨てに行く。

 実は、俺、あいつの兄貴だったりするんだぜ。

 けしてアドバンテージにならない現実を呟いてみたりする。
 

 放課後

 舞を迎えに来たヤローを目撃して、俺も梶山もブッタマゲタ。

 サイドカー付のハーレーに打ち跨ったハリウッドスターかというようなイケメンだったのだ!


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