大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・29〔月曜はしょーもない〕

2017-10-31 06:29:25 | 小説・2

高安女子高生物語・29
〔月曜はしょーもない〕
        


 月曜はしょーもない。

 保育所で物心ついたころから、いつも思てた。
 しょーもないのは、学校がおもんないから。

 言わんでも分かってる?
 

 みんなもそうやねんね。うちは、このしょうーもない月曜を、大学を入れたら六年も辛抱せなあかん。
 え、働いたらもっと……ごもっとも。
 そのへん、うちの親は羨ましい。お父さんも、お母さんも早う退職して、このしょーもない月曜からは、とうに解放されてる。
 せやから、月曜の「いってきまーす」「いってらっしゃーい」は複雑な心境。お父さんなんか、自称作家やさかいに、時に曜日感覚が飛んでしもてる。今朝の「いってらっしゃーい」は、完全に愛娘が痛々しくも悲劇の月曜を迎えたいうシンパシーが無かった。

 お父さんが、仕事してたころはちごた。

 保育所の年長さんになったころには分かってた。

 お父さんは、うちを保育所に送ってから仕事場に行ってた。仕事場がたいがいやいうのも分かってた。府立高校でも有数のシンドイ学校。子供心にも大変やなあて思てた。
 小学校に行くようになってから、お父さんが先に出た。七時過ぎには家を出てた。仕事熱心やいうこともあったけど、半分は通勤途中に生徒と出会わせへんため。登校途中の生徒といっしょになるとろくな事がない。タバコ見つけたり、近所の人とトラブってるとこに出くわしたり。せやから、そのころのお父さんは可哀想やと思てた。
 それが、うちが中学に入ると同時に退職。可哀想は逆転した。
 お父さんは、早よから起きて「仕事」。で、うちは小学校よりもしょーもない中学校に登校。

 今日は、いつもより一分早よ出た。

 ほんで、近鉄が四分延着してて、いつもより一本早い準急に乗ってしもた。
 大阪人の悲しさ。たとえしょーもない学校行くんでも、一本早い電車に間に合いそうやと、走ってしまう。

 で、電車に飛び込んで気いついた。

「あ、先輩!」
「お、明日香!?」

 なんと、早朝の電車に関根先輩と美保先輩が私服で乗ってるのに出くわしてしもた。二人ともなんや落ち着きがない。ほんでから、あきらかに一泊二日程度の旅行の荷物と姿。

 卒業旅行? 

 せやけど学校は二人とも違う……こういうバージョンの卒業旅行は特別やろ……バッグの中味が妄想される。コンドーさん一ダースに勝負パンツ……うう、鼻血が出る!

 鶴橋で、先輩二人は環状線の内回り。学校行くんやったら外回りのはずや。
「どうぞ、楽しんできてください!」
 思わん言葉が口をついて出てくる。
「あ、ありがとう」
 美保先輩がうわずった声で返事を返してきた。こら、もう確実や……。

 桃谷の駅に着いたら、女子トイレから鈴木美咲先輩が出てくるのが見えた。なんや髪の毛いじって、右手で制服伸ばしてる……スカートが、真ん中へんで横に線が入ってる。今の今までたたんでましたいう感じ。
 で、紙袋から、私服らしきものが覗いてる。

「え……!」

 思わず声が出るとこやった。美咲先輩は、その紙袋をコインロッカーに入れた! 気ぃつかれんように直ぐ後ろに近寄る。明らかに朝シャンやった匂いがした。

 美咲先輩お泊まりか……また、頭の中で妄想劇場の幕が上がる。

 しょ しょ 処女じゃない 
 処女じゃない証拠には 
 つんつん 月のモノが三月も ないないない♪


 父親譲りの春歌が思わず口をついて出てくる。
「こら、アスカ!」
 後ろ歩いてた南風先生におこられた。

 なんで、今日はこんな人らに会うんやろ。これも近鉄のダイヤがくるたから。と、近鉄にあてこする。

 教室についたら、一番やった。で……違和感。

 直ぐに気いついた。金曜日まで花といっしょに置いたった佐渡君の机が無くなってた。

 朝からのしょうもないことが、いっぺんに吹き飛んで、心の閉じかけててた傷が開いて血が滲み出してきた……。


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