大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・092『新学年は2年3組』

2024-04-12 10:04:42 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
092『新学年は2年3組』   




 関西で新学年の二日目でクラス替えをやった中学があった。

 三年生だけなんだけど、臨時休校にしてクラス替えをやり直したというから一大事なわけで、全国ニュースになっていた。


 それと同じくらいの一大事がうちの学校でもあった!


 なんと、新しい二年のクラス、お仲間のほとんどがいっしょの2年3組!

 ロコ、たみ子、真知子、佳奈子、それにメグリ(わたし)の五人はもちろんのこと、委員長の高峰君や10円男の加藤高明なんかもいっしょなんだ!

 そして、担任はコワモテの藤田先生じゃなくて、4組の担任だった花園先生だよ(^▽^)!


「これはね……」


 真知子が腕組みしながら前かがみになる。つられてわたしたちも顔を寄せる放課後の食堂。

「去年の4組って、ちょっと大変だったみたいなのよ……」

「「「「ああ……」」」」

 4組は文化祭前に栗原さんが亡くなって、急きょ担任の花園先生が栗原さんがやるはずだったジュリエットの役をやった。

 本番は大成功で、ご両親も感謝されていたという話だけど、どこかギスギスしているという噂はあった。
 他にも生徒同士のトラブルや、授業の先生との行き違いとか、結果的には丸く収まったということだったけどね。

「担任にしたら、すごいプレッシャーだったと思うのよ」

「「「「うんうん」」」」

「初めての担任だったし、これ以上こじれたら、ね……」

「分かります! 花園先生辞めちゃうかもですね!」

「声大きい」

「すみません(;'∀')」

 たみ子に言われて首をすくめるロコ。みんなは、さらに首を寄せる。

「それで……自分で言うのもなんだけど、学年でいちばんまとまりのある5組の主要メンバーを花園先生のクラスにいれたんだと思う」

「「「「そうなんだ!」」」」

「これは責任重大です!」

「……生意気な言い方かもしれないけど、ちょっと甘いんじゃないかな」

 佳奈子が少し身を起こす。

「なんでですか?」

「もし、花園先生が教師を天職だと思うんなら、少々むつかしいクラスでも担任すべきだと思うよ。若い時に楽しちゃったら、あとが大変だと思う」

 佳奈子は二年になったばかりだというのにバレー部の部長をやらされている。三年はさっさと引退しちゃうし、新入部員はまだ思うほどには入ってないらしいし、そういう身の上と引き比べると、微妙に批判的になる。

「ごめん、やっぱクラブ気になるから行って来る」

 佳奈子はカバンを抱えて食堂を出て行く。でも、少し行ったところで明るく手を振って、けなげに体育館に駆けていった。


 そして、わが身のラッキーさを感謝し、新クラス2年3組の無事を祈るために近場の宮之森神社にみんなで行った。


 ジャララ~ン  パンパン

 お作法通り鈴を鳴らし二礼二拍手一礼して神頼み。

「えと、ここの御祭神てなんだたっけ?」

 お願いしてから、たみ子が不敬なことを言う。

「八幡様ですよ、誉田別命(ほんだわけのみこと)、応神天皇ですね」

「あ、そうだったんだ」

「知らずにお願いしてしまったぁ」

「じゃ、もう一回お詫びも兼ねて」

 真知子の音頭で10円のお賽銭を入れて、もう一回頭を下げる。

 帰りにお守りを二つ買う。

 一つは花園先生に、もう一つは佳奈子に。

 
 お金を払って顔を上げると、なんと巫女さんは御神楽さん( ゚Д゚)!

 ビックリしていると、口の形だけで――アルバイト――と言ってウィンクした。

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 7組) 上杉(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第137話《さくらの中間テスト》

2024-04-12 06:51:53 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第137話《さくらの中間テスト》さくら 




 朝からやってもちゅうかん(昼間)テスト……なんて親父ギャグが出てくる。

 フゥワ~~( ´⚰︎` ) 

 あくびを噛み殺す……要は退屈なんだ。

 今は二限目の日本史。日本史って暗記科目。だから暗記したことをみんな書いたら、あとは退屈なだけ。

 終わりのベルがなるまで、あと15分……ちょっと長い。

 あ……気が付いたら答案用紙の端っこに招き猫の落書きをしている。

 〇と△を組み合わせた保育所の頃からの定番。

 日本史の先生は、こういうの嫌がるから消しておく。

 消したあと、息を吹きかけて消しゴムのカスを飛ばす。

 おやぁ……?

 気づくと机の上に蟻が歩いている……消しゴムのカスに出会って、触角で何ものなのか確かめている。

「バカね、それは消しゴムのカス。食べ物じゃないわよ」

 教えてやると、まるで、それが聞こえたみたいに蟻が触角を停めてこちらを向いた。

「そんなこと分かってるわよ」

 蟻が口をきいた。

「え?」とは思ったけど、さほどには驚かない。あたしはひい祖母ちゃんの霊とだって話ができる。

「んじゃ、どうして、そんなカスに興味があるわけ?」

「考えてるのよ、なんの役に立つか」

「蟻さんが考える?」

「バカにしちゃいけない、蟻だって考えるわ。人間とは考え方が違うけど」

「どう違うの?」

 蟻さんは、直射日光が苦手なようで、机の日陰になっている方に移動した。

「蟻はね、情報を共有して、何万匹って蟻が一斉に考えてるの。それぞれ何万分の一かの脳みそ使ってね」

「なんだか、あなたって話し方が女っぽいけど、女の子?」

「そんなことも知らないの? 蟻はみんな女の子よ」

「へえ、女の子ばっかでたいへんなんだ。そうだ、昔から不思議だったんだけど『アリとキリギリス』の結論て二つあるじゃん。どっちが正しいの?」

「ああ、最後に蟻がキリギリスを助けるか見捨てるかね?」

「そうそう。保育所のころは、助けるって聞いたんだけど、お父さんの図書館で調べたら、蟻はキリギリスを見捨てるの。どっち?」

「両方とも不正解よ」

「両方とも!?」


 あやうく大きな声になるところだった。


「蟻とキリギリスはコミニケーションなんかとらないの。死んだキリギリスは解体して食糧にするだけ」

「へえ、そうなんだ……」

「ちなみに、元のイソップ童話は見捨てることになってるけど、あれは寓話だからね。それと人間だって蟻が持ってる能力が少し残ってるのよ」

「ほんと?」

「サッカーとか野球とかバレーボールとかの団体競技、なんか全員で一つみたいになることあるじゃない。あれって、蟻同士のシンパシーといっしょね」

「ああ……なるほどね」

「さくら、あなた答え間違ってるわよ」

「え、どこ?」

「硫黄島の読みは『いおうとう』太平洋戦争は『大東亜戦争』が正しいの」

「え、だって、こう習ったよ」

「教えてる方が間違えてるの。注釈付けて書き直す。ほらほら!」

「でも、だって……」

 意志が弱いので書き直すけど、口ごたえしてしまう。

「その読み方と、呼び方は戦後アメリカが日本に強制した呼び方。日本人なら正しい表現をしましょう」

「蟻さんが、どうして、そんな昔のことまで知ってるの?」

「言ったじゃない、蟻は情報を共有してるって。共有って横だけじゃなくて縦にもね……」

「縦って……むかしむかしのこととか?」

「そう、さくらだってひい祖母ちゃんとお話しできるじゃん。それの、もっとすごいの。さあ、もう時間ないわよ急いで急いで!」

 あたしは急いで書き直した。最後の(。)を打ったところで鐘が鳴った。

 鐘が鳴ったら目が覚めた。答案は……ちゃんと書き直してある。消しゴムのカスもきれいに無くなっていた。

 カスにも使い道はあるらしい。



☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  由紀子       さくらの母 ペンネーム釈迦堂一葉(しゃかどういちは)
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • クロウド          Claude Leotard  陸自隊員 
  • 孫大人(孫文章)      忠八の祖父の友人 孫家とは日清戦争の頃からの付き合い
  • 孫文桜           孫大人の孫娘、日ごろはサクラと呼ばれる
  • 周恩華           謎の留学生
 
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