大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・トモコパラドクス・61『友子の夏休み グータラ編・3』

2018-11-18 07:01:37 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・61 
『友子の夏休み グータラ編・3』
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休みも終盤、グータラを決め込む友子であった。


 桜島は、5000メートルの噴煙を上げていた。

 友子は、これだと思った!

 
 友子は、起こりもしない極東戦争のために開発された義体である。そのことが、利権化してしまい。友子は存在し続けなければならない。ストレスはハンパではない。従って、並のグータラでは、発散のしようがない。思い切ったガス抜きが必要だ。

「で、なにしようってのよ?」

 二日続けて遊びに来た紀香が、気乗り薄げにも聞く。
「極東戦争のシミュレーションやってみようかと思って!?」
「起こりもしない?」
「だから、面白いんじゃない。これくらいのことやらないと、あたしたち義体には息抜きにもならないわよ」
「でも、CPUのバーチャルでやっても……ひょっとして、本当にやってみるつもり!?」
 返事の代わりに、友子は身に合わない豪傑笑いで応えた。

――大変であります。尖閣諸島東方海域に、旧ソ連軍の大艦隊が出現いたしました。アドミラル・クズネツォフ級空母3隻を中核とした機動部隊で、総数60隻に及び……いま、関連のニュースが入ってきました。ロシア政府は、この旧ソ連軍の艦隊は、ロシアとはなんの関係もないと、周辺諸国に通達いたしました。続いて……尖閣諸島の西南に旧日本海軍そっくりの大艦隊が出現しました。これが映像であります……海上自衛隊の発表によりますと、大和型戦艦2隻……どうやら、特徴から、前が大和、後方が武蔵のようであります。続いて、長門、陸奥……高速巡洋戦艦、榛名、金剛、比叡、霧島と続き、その周囲を巡洋艦、駆逐艦が続いております――

「なんで、空母出さないのさ」
「作戦よ、作戦」

――中国政府は、日本の陰謀であると非難し、周辺海域の中国の艦船を避難させました。日本政府も、この旧帝国海軍の艦隊は日本政府が関わったものではなく、全くの不審艦隊であると発表いたしました。双方の艦隊の距離は50キロに迫り……あ、今ソ連艦隊の空母群から次々と艦載機が発艦しております!――

「スホーイ33の対艦ミサイルで、ドッカン、ドッカンやっちゃうからね!」
 紀香の鼻息は荒い。友子はおもむろに高速戦艦4隻を艦隊の前方に展開した。まともに勝負しては、友子に勝ち目はない。なんと言っても亜音速で飛んでくるミサイルである。

「全機、ミサイル発射!」

 合計120発の対艦ミサイルである。現代のイージス艦でも、飽和攻撃で、全ミサイルの撃破は難しい。
 友子は、それまでに、着弾観測用の零式観測機と零式三座水偵を12機発艦させていた。
「なに下駄履き飛ばしてんのよ、砲戦になる前に、そっちは全滅よ」
「どうかな……」

 なんと、12機の下駄履きは、120発のミサイルを撃ち落としはじめた!

「そんなバカな!」
「見かけで判断しちゃいけません」
「機銃の弾に自動追尾装置つけるなんて反則だ!」
「勝てば、なんでもありよ」

 そうこうしているうちに、ソ連艦隊は日本艦隊の射程に入ってきた。
 傲然と火を吐く大和、武蔵の46サンチ砲。高速で接近した巡洋戦艦4隻も、主砲を打ち始めた。
 ソ連艦隊も対艦ミサイルを撃つが、そのほとんどが高角砲に撃ち落とされる。
「アナログの高角砲が対艦ミサイル撃ち落とすなんて不合理だ!」
「でも、こっちの主砲はアナログのままよ」

 下駄履きが、本来の弾着観測をし始めたので、日本艦隊の弾は確実に当たり出した。

 結果は、旧日本艦隊の一方的勝利、旧ソ連艦隊は、ほとんどが撃沈された。

「どうだ、庭でバーベキューでも……」
 一郎が、呼びかけると、二人はスホーイ33と零式水偵でドッグファイトの真っ最中であった。二機の背後には沈み行くソ連艦隊。
「お前ら、こんなの国際問題になるぞ……」
 一郎の声に一瞬気を取られた隙に、スホ-イの30ミリ弾が水偵に当たったが、複葉機であるために、主翼の間をすり抜けてしまった。
「今だ!」
 水偵の後部座席の7・7ミリ機銃がスホーイのコックピットをぶち抜いて勝負がついた。
「負けたあ!」
「勝ったあ!」

 次の瞬間、ソ連艦隊も日本艦隊も分子にまで分解され、その姿がきれいに消えた。

 友子たちが、バーベキューをしている間に、周辺諸国は、居なくなった相手に非難のしまくりであった。

 なんの痕跡も残さなかったので、アメリカと日本のゲーム会社が一時疑いの眼差しで見られたが、技術的に不可能であるといわれ、国際的なハッカー集団のせいにされ、決着した。

 友子のウサバラシも、かなり人迷惑ではあった。

コメント
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