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「老春探検隊」 日本料理店へ

2012-01-27 01:49:42 | よしなしごと
 「本格的な日本料理を食わせるいい店があるぞ」
 「しかもマニアックな日本酒が飲めるらしい」
 これを聞いて心躍らないとしたらもはや死んだも同じこと、われら「青春」ならぬ「老春探検隊」はSS隊長(ナチスの組織のようだがイニシャルがそうだから仕方がない)を先頭に部下約一名=ROKUで早速探検に乗り出すことにした。
 
 場所などはしちめんどうくさいからあとで纏めて書くが、名古屋駅から徒歩で15分、ということは陽気が良い時期ならふらふら散策しながらでも行けるということだ。しかし、時は睦月も後半、まさに大寒の頃と来てはそうもいくまい。
 
 六時オープンの少し前、まだ真新しい引き戸を開けると玉砂利を敷き詰めた上に飛石というイントロが続く。イントロが長いというのは高級店の証拠である。つい足がすくみそうになるが勇を奮って前進する。
 イントロというのは日常空間とこれから催される宴の空間とを遮断するために必要ないわば緩衝地帯なのだろう。南北朝鮮をへだつのも三八度線という直線ではなく、その回りにはかなり広い緩衝地帯があるのだ。それがないと危なくってしょうがない。

 オッと、これは脱線も甚だしい。
 とやかくするうちに無事に宴の空間にたどり着くことができた。杉の一枚板のカウンターがオープンキッチンと客席をへだつ。カウンターの幅も十分だ。立ち飲みバーと違って食の空間はゆとりがなければならない。

          
 
 われら老春隊は、カウンターの隅に席を占める。カウンターはやはり隅が落ち着く。さあ、メニューを見てと注文をと探しても無駄だ。オープン以後22時までは、オーナーシェフのおまかせ料理を堪能するのがこの店のルールなのだからだ。
 隊長ともども、まな板の恋(オッとー、鯉だった)よろしくすべてを委ねてそれを待つ。

 そのかわり、長い和紙に書かれた日本酒のリストがある。これがまた通り一遍ではない。地酒を集めた店は結構あるが、だいたいは、ウン聞いたことがあるという範囲なのだがここは違う。書かれた20を越えるほどの酒はそうした地酒のさらに奥へと踏み込み、マニアックなまでに追求された品揃えなのである。
 したがって、かなりの日本酒通でもここに自分の知っている銘柄を見出すのは至難であろう。

 それもそのはず、ここのオーナーシェフは、腕利きの料理人であると同時に、日本酒のソムリエでもあり、全国各地の蔵元を飛び回る熱心な酒道精神の持ち主であり、しかるがゆえに可能となった品揃えなのだ。

 それらの中から勧められるままに何種類かを口に含む。その芳醇で多様性に満ちた味に酔う。もちろん日本酒は、土地、酒米、水、精米歩合、麹、杜氏の技などによって様々な多様性をもつことは知っていたが、これほどまでにバラエティに富んでいるものを目のあたりにすると、思わず咽が鳴ろうというものだ。

 もちろん料理とともにいただく。
 長皿に盛られた先付けを見ただけでここには修行を積んだ職人がいて、それぞれに十分な仕事がほどこされていることが分かる。
 盛り付けも上々だ。しばらく眺めてから箸をつける。
 日本料理の粋に達したこの料理は、やはり、京大阪、さらには東京で10年以上の歳月をかけて(しかも熱心に)学んだ者でなければ不可能であろう。
 隊長と会話を交わし、盃を交わし、箸を運ぶうちに程良く次の料理が出てくる。
 どれも厳選された素材にしかるべくちゃんと手がかけられていることが分かる。

 味の百花繚乱のなか、これはもう酒は進むは、話は弾けるはで、怒涛の3時間はあっという間に過ぎ去ったの。
 ゆったりと味を楽しみ、酒の深い味わいを探るにはもってこいの店とみた。

       

 戦い済んで夜が更けて、われわれ老春隊はこの店を制覇した記念に写真に収まったのであった。
 左側がSS隊長、右がその部下=ROKUである。
 私が小さいのではない。隊長がでかすぎるのだ。
 戦中戦後、ほぼ同じ年代を経過してきたにもかかわらず、これだけでかく成長したのは・・・マア、そんなことはどうでもいい。
 余分なことを言ってると肝心なことを忘れる。
 カウンターの向こうからわれら老春隊に優しい眼差しを送っているのはこの店のオーナーシェフである。
 
 で近くの地下鉄の駅まで同道し、そこで「た、隊長、今日のレポートについてですが」と問う私に、「あ、それね、任せたよ」とハードボイルドな声で言い放った隊長は地下鉄の闇へと消えてゆくのであった。

以上のレポートは決してご馳走になってのヨイショではありません
 老春隊二名、ちゃんと正規の料金を払って参りました。
 昨秋の開店以来、ひたすら伝統の味をベースに新しさを求め、さらにそれに合う酒を全国各地から選りすぐってくる若いオーナーシェフへのエールを送りたいと思ったからです。
 
 料金を払う際、気づいたのですが、お酒はそれぞれ一合換算600円均一とお値打ちです。ましてやそれが、その近辺の酒屋でおいそれと手に入らない代物だとしたら余計です。

お店のまとめ
 店名/馳走和醸 すぎ(ちそうわじょう すぎ)
 住所/名古屋市丸の内1-12-23 サンエスケーイワタ丸の内1F
 国際センター駅、丸の内駅からともに徒歩5分
 名古屋駅からは徒歩15分くらいです。
 電話/052-231-1901 営業時間/18時~翌2時
 18時~21時(LO) おまかせコース5,000円
 22時~翌1時(LO) 単品500円~
  コースは要予約だと思います。
  店のキャパもそれほどありませんから、いずれにしても
  まず電話でしょうね。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (T)
2012-01-27 12:41:10
この季節の和食だと、先物のホタルイカとか、九州周辺の山菜、アラなどの刺身など、春を思わせる料理の数々でしょうか。
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Unknown (六文錢)
2012-01-28 02:06:13
>Tさん
 まだ、春爛漫とは行きませんが、マテ貝とはまぐりの潮仕立てに菜の花を添えた椀物などにそれを感じました。
 珍しい所では、焼き物が黒ムツの塩麹漬けだったのですが私は初めてでした。
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