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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

アメリカザリガニの駆除? 排外主義的対応よりも共生可能な自然環境の保全こそが・・・・。

2021-07-16 11:39:06 | よしなしごと

 一週間ほど前だろうか、アメリカザリガニは有害外来種だから捕獲してもリリースするなという報道がなされた。
 えっ、いまさらなんのこと?と思った。
 というのは、私の近辺ではアメリカザリガニはとっくに「絶滅」しているからだ。

         

 半世紀ほど前、ここに居を構えた折は、四方八方田圃だったことがもあって、わが家の敷地から1メートルも離れないところに無数にそれらはいた。
 周囲の田への給水も、自然の水路、小川などで行われていたため、そこには、メダカやフナ、ドジョウ、モロコ、それにウナギやナマズなどもいた。ミジスマシ、アメンボ、ゲンゴロウ、タガメなどの水棲昆虫もいた。
 しかし、いまやそれらは見事に絶滅しつくした。
 
 なぜか?
 日本の田園地帯は、山からの流れが、小川や細かい水路を辿って田に給水され、さらにそれが河川へ集約されて海に至るという弥生以来の水との有機的関わりとして成り立っていた。
 しかし、それが大きく変わったのが前世紀後半の合理化時代だった。人は自然との辛抱強い共存共生を放棄し、力ずくでそれを従わせることにした。

 何を言おうとしているかというと、この辺の田に沿って流れていた小川のほとんどすべてがコンクリート製のU字溝に取って代わられ、そこを流れる水は、もはや上流からの自然な流れではなく、ところどころに設置された強力な揚水ポンプによる給水になってしまったのだ。

      https://www.youtube.com/watch?v=H2mgxoxpnQU
    これはわが家から100mぐらいの箇所にある揚水ポンプを私が撮したもの

 これは確かに便利かもしれない。水飢饉に関係なく、必要な折に給水することができるからだ。そして同時に、必要のない折には、その給水を止めることもできるのだ。
 稲は、田植え以来、ずーっと水に浸かっているわけではない。その生育の途中で水を断つこともあるし、稲刈りの秋や冬場には水は邪魔にさえなる。

 で、それはどうなるのか?ポンプによる揚水は停止される。するとU字溝はどうなるのか?そう、干上がるのだ。一年の大半は、まったく水のない、カリカリに干上がったコンクリートの河床が露出する。

         

 では、メダカやフナ、ドジョウ、モロコ、それにウナギやナマズ、さらにはミジスマシ、アメンボ、ゲンゴロウ、タガメなどの水棲昆虫たちはどうなるのか?
 そう、絶滅のほかはなかったである。
 カエルすらも減少し、うちの庭にまでやってきていたトノサマガエルなどはここんとこまったく見たこともない。
 田圃のカエルもうんと減り、前のようなオーケストラ編成の鳴き声は望むべくもなく、せいぜい弦楽四重奏止まりの室内楽程度でしかない。
 そういえば、夜陰を彩っていたあのウシガエルの声を聞かなくなってからもう何年経つのだろう。

 「アメリカザリガニを駆除しろ」と今さら言われて驚いた私の事情をおわかりいただけるであろうか。前世紀後半の田園合理化は、外来種はおろか、在来種をも一掃したのである。
 で、私は思うのだ。この辺りからアメリカザリガニがいなくなった現在よりも、それがいた頃のほうが在来種も豊かで、生態系にとっても遥かに健全だったのではなかろうか。

 これは極論かもしれないが、外来種はそんなに悪いのか?もともと、生物は外来種を完全に拒むことはできず、それらを混じえながら新たな生態系を構築してきたのではないか。
 とくに植物などは、現今の花屋の店先には外来のものが溢れ、それらの野生化したものが自然を彩るまでに至っている。

         
        時折井戸水が流される水はきれいだが、水棲動物の影は皆無

 もちろん、当初から従来の生態系を著しく破壊したり、大きな損害をもたらすものを故意に持ち込んでいいと言ってるわけではないが、外来種への異常な警戒心より、むしろ前半で述べた従来の在来種をも根こそぎ駆逐するような自然改造や環境破壊こそ問題にすべきではないか。

 もうひとつ、外来種への過敏は反応には何やらきな臭いものがあるようにも思う。ときおり、港湾などでセアカゴケグモやヒアリの外来種が発見されたと大きく報じられることがあるが、一部では、すでに棲みついているとも言われているし、その割にその被害についてはほとんど聞かない。
 ただただ、「外部から、得体の知れないものがやってきた」という恐怖感を煽るものになっているのではないか。

 そしてこの排外的なイメージは、海外からの労働者や難民、亡命者の排除の動きと連動していることが多いようにも思う。ようするに、尊皇攘夷的な排外主義一般の扇動にも通じているのではないかと思う。

 必要なのは、生物が共生できる環境こそが大切なのであって、それは人間社会でも同じである。
 入管の人権無視の外国人の取り扱い、病人の治療もせず殺してしまう扱い、それとと並行して、「アメリカザリガニは絶滅させましょう」が叫ばれているようにも思えるのだ。


なお、この動画に上げたのはわが家から100mほどのところにある揚水ポンプには個人的な恨みもある。
 これが掘られたおかげで、わが家の井戸が干上がったのだ。ようするに同じ水脈からの揚水のため、その力の強さでねじ伏せられたのだ。
 おかげで、もうひとつ下の水脈まで、ン十万円をかけて掘り直さねばならなくなった。まあ、水質は良くなったが・・・・。


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