今週初め、『任侠ヘルパー』サウンドトラックCDをやっと入手。
アルバムイメージをひと言で言って“気合いの入ったアナクロ”。
弱きをたすけ強きをくじく“任侠”という空中楼閣的な概念に、“世間的には困ったものだけれど、でも好ましき”アナクロニズムを見たからこそ、この曲たちが出来上がったのでしょう。
全篇のテーマ曲とも言うべきあの♪おーまいそ~『ALL MY SOUL』をはじめ、主だった曲の随所に『ウエストサイド物語』の匂いがあります。
アウトロー、マイノリティ、そして怒れる若者たち。社会体制との軋轢、闘い。“義理”という名の自己犠牲。所属階層・組織が違うゆえに、心は通い合っていても結ばれるには至れない一抹悲しい恋。いずれも“もう時代遅れなんだけど、でも、だからこそ時代を打開する原動力になり得る”マグマが宿るモチーフばかり。
早速デジタルウォークマンに落とし込んで出勤“突撃”時のテーマにしていますが、いいねぇ。実に前方推進力の高いチューンが揃っています。
任侠、ヤクザが主人公になるお話にふさわしい、アップテンポの勇壮な曲やケレン味たっぷりな曲だけではなく、80年代前半のディスコを思わせる手作り感あふれる『鷹山組』や、おとぼけユーモラスな『四方木連合』、反対にちょっとテクノ風な無機感に満ちた『抗争』などバラエティに富んでいて、夜ドラマの劇伴もなかなかやってくれます。
終盤の、夕焼け空のようなあてどない寂寥を湛える『ハートフルバード』『遥かなる空』『Lonesome Falcon』に胸をかきむしられつつ、『Big Easy D type』の母性的な包容力に身を委ね、『ALL MY SOUL‐Strings Version‐』の、甘美な中にもあくまでストイックなリタルダンドの自己確認に至る一連のシークエンスは、朝でも夜でも、何度聴いてもいいですね。どんなに意気がっても、時には弱く甘っちょろい自分を、受け容れながら抗い、抗いながら受け容れて行く。任侠ならぬ平穏凡庸な小市民にとっても、人生ってそんなものなのでしょう。
強いて駄目出すとすれば、ジャケットデザインがお座なりかな。ドラマ公式サイトトップと同じ、パンチパーマ草彅剛さんはイメージショットとして仕方がないとは言え、題字の“ヘルパー”部分は水色ギンガム(ご丁寧に“パ”の半濁点の中がハートマーク)じゃなく、タイヨウのイメージカラー=ひまわりイエローにすればよかったのにね。きっとドラマ内容の詳細が決まる前にジャケデザが先行走り出しちゃったのでしょうね。いかにもコマーシャリズムのゴールデンタイムドラマ劇伴らしい、こんな行き届かなさもいっそ好ましい。
月河にとっては昼帯『夏の秘密』サウンドトラックと並ぶ、2009年をレベゼンするアルバムになりました。
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