怖れていた通り(怖れてたのかい)NHKBSプレミアムの韓国ドラマ『同伊(トンイ)』があなどりがたく面白いのです。続きが気になってきたのです。困ったことになった。日曜夜はとりわけ録画がビジーなのに。
王国の側近勢力争い陰謀ものとしても、貧しい少女のわらしべ立身出世ものとしてもちょっとコジツケ、無理やり感はぬぐえないんですけれども、最愛の父と兄、兄のように可愛がってくれた兄の親友ら、親しくしてくれた村の人たちが、濡れ衣で大半処刑されたり殺されたりする原因になった高級官吏殺しの真相にトンイが近づけるのか?というメインの興味のほかに、脇役のあの人この人が何を狙ってどんなハラでいるのかというサイドストーリーも結構入り組んでいて、何だかんだで前のめり。
地元韓国で、高校レベルくらいの歴史を学んだ人なら、いささか噴飯ものだったり抗議の電話ものだったりもするのかもしれませんが、こちとら、あちらの国の歴史はからきし存じ上げないので、かなーり大胆に史実改変したり脚色したりしていたとしても、わからないし「違う!」と怒りが湧いてきたりもしないという、娯楽ドラマとして安心感があるのも大きいか。そういう意味では戦国にしろ、幕末にしろ、江戸太平ものにしろ、日本で日本の時代劇はいま、逆につくりにくいのかもしれません。
4話までの、日本で言えば小4~5ぐらいかなと思えた幼女トンイは、かわいいけどオモシロ系のびっくり顔で愛嬌ある感じだったのに、5話からいきなり、何時代のドコだろうと道行く人が皆振り返るようなあっぱれ美人さんになっていてちょっと引きました。
しかしながらありがちな“頑張り屋のまじめ優等生”タイプではなく、結構オッチョコチョイで落ち着きがなくて、働き者ではあるけれども「あー疲れた、“トンイはどこだ!”って誰か呼んだら“死にました”って答えといて」とゴロンとなっちゃうような、人間っぽいところもあるのが好感持てますトンイ。幼女時代はかなり食いしん坊でもあって、お菓子や串焼き、女の子らしく絹の晴れ着などにも軽く釣られちゃうところもあった。欲や我執のまるっきりない清廉キレイキレイな人物は主人公としてつまらないしね。
ただ、韓国連続ドラマを継続視聴するのって恥ずかしながら月河、初体験で、改めて気がついたんですけど、固有名詞覚えるのタイヘンだねー。トンイはタイトルロールだからさすがにすぐ覚えたし、運命のお相手となるらしい粛宗=スクチョンさまってのも、漢字込みだから覚えられた。
あとは、公式サイトでもほとんど、ほんとにまったくシャレになんないくらいカタカナばっかりなんですよ。日本で言えば警視庁高官、警視正ぐらいか警視監か?っていう、トンイ父とも朋友だった渋カッコいいソ・ヨンギはちょっと柴田恭兵さん似。宮廷の、反主流派“ナミン”の首領らしいオ・テソクは中村雅俊さんを悪く太めにして老けさせたような感じで、その甥っ子のオ・ユンは『仮面ライダーX』の速水亮さんの、若くて細かった頃に少し似ている。
トンイと仲良しで、ドジ踏んではトンイに助けられている宮廷楽師で笛吹きのヨンダルは、キャラともども大泉洋さんっぽい。
ナミン派が魂胆あって王宮に送り込んだと思われる女官オクチョン=チャン尚官(サングン)は、大人トンイに遜色ないくらいこちらも美人さんですが、いずれトンイと光と影の関係になるというライバルキャラとして造形されているのか、目もとクチもとに微妙に粘着感があって気性が強(こわ)そう。一時期の賀来千賀子さんに、沖直未さんのお若い頃を混ぜた感じとでも言おうか。
…このブログで、ドラマや映画の役名キャラ名に言及するときは、なるべくもれなくカッコ書きで演じる俳優さんの名前も併記するようにしてきましたが、韓国ドラマに関しては今後もそういうわけで、俳優さん単体に言及する時以外はカンベンさしてもらいます。ホント覚えられないんだもの。みんな音韻がちょっとずつ似てるし。
人名だけでなく官庁名とか歴史用語も相当、難物ですが、こちらは漢字と併記で解説が載ってる分少し覚えやすいかな。トンイが(ぬひ。下働き)として勤める、宮廷音楽をつかさどる王立楽舞団みたいなのが、掌楽院=チャンアゴンというのはすぐ覚えました。「ちゃんあごん」って音楽的な響きですもんね。
トンイの父が生業としていた、死体の検死や処置をする者(←日本でも諸外国でも、禁忌とされ一般人とはもろもろ差別される職業ですね)のことを仵作人=オジャギン、ってのも覚えやすい。おじゃぎん。お“じゃー”って伸ばせば、ドストエフスキーとかの小説に出てきそうだ。スタヴローギン。エフゲニ・オネーギン。コスイギン。フィクションじゃないのが一部混じった。
トンイ父・兄たちが結成していた、地下秘密結社“剣契”は、漢字表記の字ヅラはカッコいいけど読みは“コムゲ”。無関係に韓国料理の“サムゲタン”を思い出してしまいました。どんなんだったっけ。ウチの家族は高齢組も、非高齢組も、香辛料に概してナーバスなので、あの国系の料理には縁が薄いのです。“焦げたチゲ鍋”のようでもある“コムゲ”。
そう言や韓国ドラマのこういう用語って、なんとなくぜんぶうっすら韓国料理店メニューを連想させますね。そうでもない?チゲ、クッパ、ビビンバ、キムチ、オイキムチ。劇中用語として出てきてもおかしくなくないですか。「ブルコギだ!ブルコギの集団が城門に攻めて来たぞ!」「ビビンバで撃退するのだ、ビビンバを撃てー!」「ソルロンタンの方角に集中せよ!」なんて。
時節柄話題の“ユッケ”なんか、下級女官の一部門としてありそう。「スクチョンさまが、チャンサングンさま付きの若いユッケをお召し上げになったそうよ」「ユッケをー?」「イニョン王妃さまのお耳に入ったらどうしましょう」「まさかユッケをねー」なんて会話が成立……しないか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます