イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

悪知恵袋

2011-03-03 14:43:21 | ニュース

4大学の入試携帯ネット投稿事件は、驚くというよりあきれますね。やられちゃったこと自体より、騒がれ方が。大き過ぎるし、何たって、遅すぎる。

大学にせよ高校にせよ、あるいは国家試験にせよ、試験会場には携帯持ち込み禁止か、最悪でも電源オフが義務づけられて入口でチェックされて、オフしなければ退場失格ぐらいのルールには、とっくになっているとばかり月河は思っていました。

もう78年ぐらい前になるでしょうか、書店での“デジタル万引き”なる行為が一時期、問題になったことがありました。デジカメ機能つき携帯が急速に普及していた頃で、店頭でおもにゲームソフト攻略本や、雑誌のグラビアなどのお目当てのページだけをちゃーっと撮影して、買わずに帰ってしまう客が急増。オンライン通販の台頭とも重なって、売り上げ減や防犯コストに悩んだ“町の本屋さん”は各地で続々閉店、廃業に追い込まれたものです。

ゲームやグラビアのような単なる、その場限りの娯楽にすら、携帯の悪用は堂々と、喜び勇んで行なわれるのです。しかもいまの携帯は(月河もネットに接続しない、通話とワンセグだけの携帯を長年使っているので、よくわからないで書いてますが)本の何ページかを、店主さんの目を盗んで撮り帰る程度じゃ済まない、昔の007ジェームズ・ボンド級の超マルチ機能に進化しているはず。物心ついたら即、デジタル機器が身の回りにあり、玩具代わりに手すさびにして育った世代の若者諸君の中で、ちょっと目端がきいて社会規範意識の不自由な向きならば、後の一生を決めるかもしれない大学入試に臨んで、「携帯使ってラクしてどうにかできないか?」ぐらい、一度は考えてみないほうがむしろおかしい。

今回判明したのは日本では名だたる有名大学ばかりですから、日本を代表するような頭脳の学者先生がたも少なからず抱えているのでしょうが、学者先生も、入試管理の事務方も、いまどきの携帯の怖さを甘く見すぎている。

“携帯の怖さ”を、と言うより、“携帯という現代の超007ツールが若者たちに向かって押し広げるモラルハザードの深淵”を、と言うべきかもしれない。デジタル万引きの話題と前後して、「告別式の“最後のお別れ”=蓋棺時に、棺越しに携帯で故人の最後の顔を撮影しようとする列席客が目につくようになった」と葬儀屋さんが呆れるのを聞いたこともあります。

やっていいことと悪いこととの垣根を、携帯というものはこの10年ほどでえらく突き崩しました。手の内にすっぽり入る、ポケットにも入るサイズの小ささ、人知れずひとりで操作し、結果をチェックできる個人性、秘匿性は、持ち馴染むうちに人の心の中の、いろんなところを“液状化”させるのです。

人生後半戦に入ってから携帯の普及と遭遇した学者先生がたは、そういう皮膚感覚、“精神の内臓感覚”がまったくピンと来ておられないようで。ニュース映像の、問題の4大学の立派な時計塔や創立者銅像などを見ていて、久しぶりに“学者バカ”という言葉を思い出しました。

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