イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

コメザワ?

2009-01-30 19:36:45 | 夜ドラマ

放送が前後しますが、『相棒season7128日のほうの“超能力少年”は、往年の『怪奇大作戦』をちょっと思い出す味でした。何せ、幽霊とゴシックの国・英国はロンドン帰りの右京さん(水谷豊さん)が「お化けと超能力はボク、信じています」とみずから任ずるほど、オカルト親和性の高い人ですからね。一歩間違えばホラー色おどろおどろしい、終わってもすっきりしないような話に堕してもおかしくなかったのに、理系技術のプロでありつつオタクマインドを兼ね備えた、鑑識米沢さん(六角精児さん)の仕事ぶりと存在感がいい緩衝材になりました。

虫歯に被せた異種の金属が接触して、盗聴電波をキャッチし脳内に音声として伝達していた、という謎解き。そんなこと実際有りかぁ?と思うけど、有りか無しかより、少年の経験した現象が母親をはじめとする周囲の大人たちに投げかけた波紋や動揺のあやのほうが重要。ここらも『怪奇』に似ています。

実行犯が偶然、盗聴器の仕掛けられた(前の住人がストーキングされていた)アパートに住んでいたため、クラブママと犯行の打ち合わせをする電話を少年の口中“受信機”が傍受してしまったことで事件が思わぬ展開となったのですが、母親の主張する“息子の超能力”と、銀座クラブ強盗殺人事件、あくまで前者をベースにしながら後者の捜査部分もなおざりにしない好バランスで、“どちらかがもう一方のための牽強付会”という感をさせなかったところが良かった。

少年(or少女)時代の一時期、わずかに持っていた超能力で世上もてはやされたために、成人後の人生が歪むというモチーフは、『古畑任三郎』“殺人公開放送”を思い出さずにいられませんが、大人に褒められたい、「他の子が誰も出来ないことを、キミはできるね」と評価されたい盛りの年代の、特に男の子にとっては、母親に褒められる感覚、「お母さんがボクを誇りに思って幸せそう」「いつもより強く抱き締めてくれた」という所感は際立ってスペシャルな、失いたくないものなのでしょう。

「でもゲームもやりたいし、学校でいじめられるのはイヤだし、ヘンな声が聞こえるのも、本当は気持ちが悪い」“普通のガキ”の感覚も備えている“超能力少年”拓海くん役を、名子役田中碧海(おうが)くんが好演。サルウィンに旅立った亀山くん(寺脇康文さん)も右京さんよりは子供の扱いを得意としていたけれど、今回の拓海くんはヤンチャ、反抗的方向の悪ガキではなく、母親(濱田マリさん)のプレッシャーで心折れかかっているおとなしい子な分、やはり米沢さん向きでした。

一時チヤホヤされたのに、能力不足や境遇の巡り合わせで地に落ちた少女期の挫折感をずっと心の奥で眠らせ、結婚後、子供の代で取り返さんとして再覚醒、子の望まぬ、適性も無いお稽古事を強いる母親は多いと聞きます。濱田マリさんが演じたおかげで、“めでたしめでたしの後もいろいろ難問ありそうだけど、深刻なだけでなくちょっと笑える”キャラになったのも良かった。シャレにならない言動の人物を演じても、微量笑いを催させるというのはいまのドラマ界で俳優さんに望まれる資質のひとつです。

少年が傍受した近所の夫婦の離婚相談会話も、並外れて嫉妬深い夫が妻の不貞を疑って自宅内に仕掛けた盗聴器の作用だったし、少年自身の家にも、息子の育て方の対立から離婚した前夫が息子の声聞きたさに盗聴器を設置していた。“本来は聞けない、知り得ない他人の会話や事情をこっそり知りたい”願望は普通人が普通に幾許かは抱くもので、盗聴とはそういう人間のせこい、思うだけなら罪にならない欲が編み出した“超能力のニセモノ”とも言える。

ニセモノが起こした副作用が、“我が子に超能力あれよかし”と切望してやまない母親の受信アンテナに捉えられて、ホンモノとして喧伝されてしまった皮肉。まるっきりのカラ騒ぎで、母子ともに傷ついて退場ではなく、池に捨てられた凶器の銃発見の役には立ち、少年はご褒美のチョコレートにありついたという、身の丈に合った救いを設けてあったのも良きバランス感覚だったと思います。

強盗殺人パートでは、売上不振のため不仲の夫の生命保険金を狙ったクラブママ(岩本千春さん)と、偶然夫婦間のトラブルを知った、元起業家のおしぼり配送マンとの間に、共謀はあったが男女関係はなかったというのが、そりゃそうかもしれないけど、なんかちょっとよかったですね。ムダに感情臭くないというか、ドロドロしてなくて。ママ役岩本さんは、1985年の映画『ひとひらの雪』の頃の美貌をじゅうぶんとどめているし、元起業家役の佐藤B作ジュニア佐藤銀平さんも、イケメンではないけれど水商売の年増女性が構ってあげたくなるタイプ。なのに2人とも“銀座で店を盛り返したい”“もう一度起業したい”と、自分&カネのことしか考えてないのが軽く苦笑ものでした。

寄席の出囃子になってる米沢さんの着信音(しかしまあこの人は落語にゲームにギターに女子アナ、どんだけ趣味広いのかと)とか、コンビニより魚屋さんかいっそブックオフ向きな捜一ヤング芹沢(山中崇史さん)「いらっしゃいまセエ~」とか今週も惜しみなくネタ満載。コンビニのスタンドにも“キリン芸能”の最新号あったし、“漫画ヨンデー”ってのも売ってたな。“週刊習慣”は休刊したかな。

射殺された夫に保険はかかっていたが、犯行時クラブママは縛り上げられていたからシロ、でも「共犯がいた可能性もあるだろう?」と最初にズバリ指摘したのは、なにげなく中薗参事官(小野了さん)でしたね。今期は小野さん『非婚同盟』東亜製鋼の幹部(←宴席で結構上席)もあるし、この人の場合、新しい役柄のたびに、持ち上げなきゃならない上司が増えて大変そう。

そう言えば、水谷豊さんが28日深夜にご自宅内で、開いていたドアの角に頭部をぶつけて流血、自力で病院に行って額の真ん中を8針縫う処置を受けたという報もありましたっけ。「おやおや」。役者の商売道具である顔面に負傷とは、水谷さんも役柄とは別に結構ソコツですね。『相棒』の撮影には影響無しとのことですが、普通に8針縫うって、麻酔も要るだろうしかなりな重傷感ですよ。跡が残らないように、早く癒合するようにとお医者さんも気を遣っての縫合だったんでしょうが、今season中、一話ぐらい、ブラックジャックみたいな“前髪あり”の右京さんが見られたりしないかな。

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