水曜日に『相棒 Season 8』、木曜日に『不毛地帯』と、録画にせよ連続視聴していると、回によっては直球で“岸部一徳さん祭り”化します。
前者の、警察庁長官官房室長小野田公顕警視監は飄々のらくらとして、対特命係などの場面では親しみやすいように見せかけ、かなりヨロイの厚い、打算上等の、食えない男。
後者の近畿商事東京支店長→副社長里井達也は、見込んで登用した壹岐(唐沢寿明さん)が持ち前の情報収集力・分析力で社長(原田芳雄さん)の覚えめでたくなると途端にわかりやすくやっかみ、ツンケンして足を引っ張ったりする、ケツの穴の小っさい策士。
“打算”“腹芸”“複数枚舌”という共通項を持ちながら、小野田は“本当はいいヤツでは?”を随所にほんの微量チラつかせては次の瞬間隠し、里井は“ぶちキレたら怖いぞ”をそこらじゅうに撒き散らしながら、上に対してだけは謙譲卑屈に装うポーカーフェイス。基本的には“無表情役者”だと思う一徳さんの、侮れぬ持ち味、引き出しの多さ深さが堪能できる週半ばの2日となっています。
『不毛』第8話での立食パーティー席上の「ワタシに隠れてそんなやり方をしていたのかキミはァッ!」一喝は、振り幅の大きさをあまり見せない人なればこその鬼気迫る怖さがあった。器の小ささのさらけ出し方、陰湿さの配合量も絶妙。日頃、一徳さんを、もっぱら“官房長”として鑑賞しているファンには、ことのほか新鮮な噛み応えのある味でした。
官房長は、セリフの端々にちょこちょこ恐妻家ぶりを覗かせるものの、夫人“本体”が画面に登場したことはありませんが、里井副社長の夫人は第8話、江波杏子さんでしたな。こりゃきっついわ。でもあんまり夫君の血糖値やカロリーには関心なさげなゴルフ大好き発展家そう。
同8話では、壹岐の妻・佳子(和久井映見さん)が実質の主役。自決した上官の遺児・千里(小雪さん)を気にかけ、気にかけていることを隠そうとする夫を、妻が気にかけ、さらに気にかけていることを気取られまいとする。息が詰まるような気まずさの中で、壹岐の目の前で佳子はあっさり事故死してしまいます。駆け寄った壹岐の腕の中での最期の言葉「あなた、会議は…」は夫のヘタな言い訳に添ってやる、良妻の純な従順さと受け止めるのが筋でしょうが、取りようによっちゃとことん毒な、一生解けない呪いをかける級の皮肉にも聞こえましたな。死んじゃったので、もう壹岐、詫びも申し開きも、埋め合わせもできない。和久井さんの迫真の演技も相俟ってちょっとした“哀切系ホラー”でした。
悪妻より良妻のほうが実ははるかに怖い。ミセス官房長はどっちかな。
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