イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

風呂の中でこいた屁

2007-01-11 16:46:41 | テレビ番組

いきなり品下がったタイトルを付けてしまいましたが紳士淑女の皆様にはいましばらくご辛抱を。…さて、昼ドラ枠では、新年早々お屠蘇気分の横っ面をひっぱたく勢いで『母親失格』が始まりました。

こちらはこのタイトルからして上等。虐待死、いじめ自殺など、子供が痛い目にあう事件が続発、親の養育監督責任が陰に陽に問われているご時勢に『母親失格。この四文字が毎日月~金新聞ラテ欄におどるわけですよ。昼ドラの視聴者層に出産・子育てコンシャスなお年頃の女性が圧倒的に多いのを想定した上で、あえて神経逆撫で、“イタいもの見たさ”の心理に、徹底的につけこむ作戦と見ました。

ダブルヒロインの一方・弘美は淫蕩な母親の虐待に幼時から苦しみ、他方・千賀子は見栄っ張りな教育ママの過干渉に悩み、成長して前者は無認可託児所の保育士、後者は大企業の社長秘書に。母と縁を切りたい弘美が、自立を目指す千賀子のマンションに転がり込む形で同居しているところからドラマは始まりますが、どう見ても弘美のほうが夜遅い仕事なのに千賀子は家事を彼女に任せきり、玉の輿を目指して付き合っている勤務先社長の御曹司と密会するときには「部屋使わせて」と追い出すなど、母を憎まざるを得ない境遇で育った同士、友情に基づいた同居とは言え、根底はイビツであることが露骨に呈示されます。

公的制度の基盤のない無認可施設で働いて、賃借料次第で閉所しなければならない現実を目の当たりにしながら「貯金して私もこんな施設を開きたい」が夢の弘美、御曹司との間に、後援企業社長令嬢である婚約者が恋敵として立ちはだかると、「仕事のできる女と社長(=御曹司の父)に認められて、彼との結婚を許してもらう」と言い張る千賀子。もうハナから「違うだろー!!」と叫びたくなる“イタい矛盾”てんこ盛り。仕事のできる女なんて、息子の嫁にしたくないタイプ№1だろうがよ。

しつこく金の無心に来る母親と弘美の庖丁振りかざし立ち回り、婚約者令嬢がマンションに上がり込み恋敵の千賀子と弘美を間違えて騎乗位でハンドバッグ殴打、千賀子が御曹司と別れさせられ会社もクビになった矢先オエッと妊娠発覚、弘美を保護者代りに同行させて社長宅に「出来たから結婚させて」直談判(→修羅場→退散)、御曹司が惚れたのは実は弘美とわかって「いつからデキてた!?何度寝たの!?(キッチンから金串出して)その手でこのお腹の子掻き出してよ!アンタのおかげで産めなくなった子なんだから!!」(→迫ってる最中にまたオエッ)…“ほらイタいだろう!”“「イタい」と声出して言え、言わないか!聞こえないぞ!?”もっとイタくしてやろうか、どうだ!”と演出、セリフ、視聴者に向かってアジるアジる。

でもこのドラマ、うまいことやったなぁと思うのは、ヒロインがともにかなり異常な育ち方をしてきたため、価値観やものの見かたが歪んでいるということを序盤にはっきり打ち出しているので、劇中で彼女たちが昼ドラにつきものの「この状況でそれはないでしょう」と思えるエキセントリックなセリフを発したり、奇矯で辻褄の合わない行動を取ったりしても、「幼時がアレならそういう人間になっても仕方ないかな」「アリかな」というエクスキューズが用意されているということ。

そんな中、激しいダブルヒロインに挟まれた、影薄く自己主張スーパー下手な御曹司・保(たもつ)役の比留間由哲(よしのり)という俳優さんが、予想外にいい味を出しています。序盤は、バブル期の不動産業でブイブイ言わせてる会社の御曹司にしては、素朴でまじめそうで、はっきり言えば地味で貧乏臭そで、キラキラバブリー感が全然ねぇよと思えたのですが、強い父親(峰岸徹さん)に「オマエはオレの跡継ぎだ跡継ぎだ」と四六時中プレッシャーかけられて「イヤだもん!」と言い返せるだけの反抗心も野心もない、かと言って裕福ゆえ現実的な苦労もせず、いじけて非行に走るには性格が柔和過ぎ、善悪どっちに転んでも大きなことできそうにない、風呂の中でこいた屁の様なアホボンボンってリアルにこんなものかも、という妙な説得力がある。昼ドラのヒロイン相手役と言えば、ヒロインと恋敵の間でユラユラ、フラフラするのが定番で、美形ではあっても男らしさやカッコよさとは対極にあるキャラと相場が決まっていますが、今作のこの役ばっかりは、カッコいい必要がミジンも無い、言わばこれ以上落ちようのない“底値”からのスタートだけに、逆に見やすいのも確かです。比留間という俳優さん、いままでは“誰かの部下その2”的な役で見ることが多かったように思いますが、出発点(役柄のね)、期待値ともに低い分、3月の放送終了の頃には意外な成長が見られるかもしれません。いや見られると思おう。信じよう。ヒロインたちの“イタいだろうアジ”に乗せられるよりは数倍マシだ。

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