イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

You never know

2008-10-25 19:45:31 | 夜ドラマ

『相棒』がドラマとしてよく出来ているなと思うのは、“バランス感覚”でしょう。一点集中しそうで、一点には集中しない。

22日放送のseason7初回SPで言うと、「犯人は(頚動脈一撃による膨大な)返り血をシャワーで洗い流すべく、自前のタオルと着替え持参で犯行に及んだ可能性」「着替え後現場の部屋を出てエレベーターで逃走した人物は、入室した人物とはバッグを掛けた肩が違う故、別人の可能性」を推論指摘したのは右京さん(水谷豊さん)ですが、続く推論「着替えて逃走したと見せかけて、移動しても防犯カメラ2基いずれにも映らない同じ10階フロア内の別の部屋に、逃走せずにとどまっているかも」を引き出すに至ったのは「帽子サングラス鞄という目立つ3点セットを脱いで、防犯カメラ映像とは別の機会に逃走したかも」という“踏み台”に相当するヒントを提示した、メガネの鑑識にして、いまや天下のオフスピナー米沢(六角精児さん)。これがあったから10階客室連泊者ローラーがかけられた。

小笠原(西岡徳馬さん)に犯行自供・任意出頭させる決め手となった接着剤による指紋一時抹消にしても、相棒コンビに同行した米沢さんのブラフ協力はもちろん、「印象に残りやすい禁煙DXツイン予約を入れたのは、携帯でもネットからでもなく、いちばん足のつかない公衆電話」とはじき出した組織犯罪対策5課「ヒマか?」でおなじみ角田課長(山西惇さん)の勘と、(ヒマにまかせた)洗い出しがあったればこそ。これで「鍵はホシがフロントで書いた宿泊カードの指紋(の有無)」と絞れた。

さらには、自供したものの「やりました」以外完黙していた小笠原の所持携帯着信記録調べを可能にし、富司商事非鉄金属本部の部下・田坂を協力者と割り出せたのはなんと捜査一課伊丹(川原和久さん)の一か八かの計算ずく取調中暴行致傷による、内田刑事部長(片桐竜次さん)からの逮捕許可。

さらにさらに、殺害された兼高(四方堂亘さん)の遺品のダイアリーに記された“シンガポール 空”に行き着かせてくれたのは、大河内監察官(神保悟志さん)とのイエローカード談義にもめげずうまいことかいくぐって、相棒コンビに閲覧させてくれた米沢さんの尽力のたまもの。

つまり、“ものすごく洞察力にすぐれた天才的名探偵杉下警部の名推理”だけで、もしくは、“知的な警部と体育会巡査部長の絶妙のコンビネーション”だけであざやかに事件解決、周囲関係者感嘆、で終わる話に、なりそうでなっていない。

もっとマクロに見れば、そもそも亀ちゃん(寺脇康文さん)がホテルロビーで旧友兼高を見かけるきっかけを作ったのは小野田官房長(岸部一徳さん)の「ヒマでしょ?付き合ってよ」→写真展、「誘われついでに、もちょっと付き合わない?夜、パーティーがあんの」→瀬戸内代議士(津川雅彦さん)のチャリティパーティー、という(作為的なくらい)絶妙の勧誘なんですね。

メインストーリーたる“事件解明”に、ひとりのスーパーヒーローだけでなくレギュラー陣ほぼ全員が関わり、前進させている。虚構ドラマの作りとしてこれはスマートかつさわやかです。

被害者が直接の昔馴染みの分か、亀ちゃんの動物的高体温反応と、夫人・美和子さん(鈴木砂羽さん)のジャーナリスト魂が事態を打開する局面が見られなかったように思いますが、ここらは29日放送予定の解決篇に待たれるところか。

そう言えば美和子さん、5月の当地での再放送時のseason6に比べると二の腕や肩など若干ふっくらされたように思いますが、NHK『だんだん』でド演歌大好き肝っ玉お母さんを掛け持ち好演中ですね。今日(25日)の放送分で「めぐみが京都(の大学)に行って、真喜子さんのところに下宿するなら、それでいいと思ちょります、真喜子さんの気持ちもようわかります、私はめぐみの母親だけん」と言い切った場面はカッコよかった。忠(吉田栄作さん)が連れて来た乳飲み子の産みの母が誰か、どんな経緯かをいっさい問い質さずに、自分と忠の間の子として18年間心をこめ育ててきた誇りと自信がそう言わせるのでしょう。

それに比べると「めぐみのことで会って話し合いたい、出雲大社に行く」と手紙で知らせてきた真喜子=花雪さん(石田ひかりさん)は、嘉子さんに言伝でもいいからひと言文中で詫びと礼を含めた断りを書き添える気遣いがあってもよかったですね。再婚にせよ妻を持つ男、しかも地縁血縁の濃厚な郷里在住の男が、昔かかわりのあった女性と家の外で、2人きりで会うというのはかなりの心理的ハードルを越えなければならないことですから。

嘉子さんへの刺激接触をあえて避けるのは、花街に生きてきた女性のたしなみ、粋感覚のしからしむるところと取るべきかな。

忠が真喜子に「君が京都で守ってきた、祇園での生活が崩れるかもしれんけん」と言ったときの“キミが~”呼びはちょっとドキッとしました。大恋愛でそれぞれの夢を中断してまで燃え上がり、親には許されない子供までなした2人ですもんね。昼ドラならここから果てしない焼け棒杭の連鎖が始まるのですが、やはりNHKは世界観、人間観が綺麗事だなあ。

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