イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

まだまだ『新春テレビ放談』 ~“大きく取り込む”は目標か結果か~

2020-01-28 21:31:26 | テレビ番組

 思い返せば、月河がTVBros.の購読をやめたのが約二年前の4月です。「コラムやグラビアがいくら充実しても、テレビ番組表の載らない雑誌になるならとる意味ないな」と、通算すると二十年近く読んでいたのに自分でも意外なくらいあっさり打ち切れました。

 もう2018年春の時点で、テレビ番組は「何曜日何時何分からどこチャンネルで」と決まった“番組”ではなくなって、VOD、youtube、サブスク、レンタル・・とさまざまな媒体で消費される“コンテンツ”へと変容しつつあり、Brosの番組表オミットは的確な判断だったのだなと、いまにして思います。『新春テレビ放談』の中身が、半分は“テレビでないもの”についての話になるのも自然の流れではありました。

 前のエントリに書いたように、物心ついた頃から青春の傍らにテレビがあり、テレビの成熟爛熟とともに齢を重ねてきて、ネットが日常に入って来た時には中年になっていた世代としては複雑な思いもありますが、進化の過程には、変容することで生存競争を乗り切るという側面がありますから、テレビ“番組”の変容、これもまた良しと言っておきましょう。絶滅する、なくなるよりはずっといい。

 さてそんな中でも、“世代間の分断”という、たとえばyoutube利用率を指標としたキイワードがひとつ浮上したおかげで、“ヒットした番組がヒットした理由”はさくさく読み解きやすくなりました。

 読み解きの因数は「大きく取り込む」。=分断された中でも複数の世代、多くの層をつかんで巻き込んだドラマは番組冒頭で紹介された人気コンテンツランキングでも好位につけています。

 この“大きく取り込む”というフレーズの含む中身にはいろんな切り口があって、まずは“当たった組代表”日テレ鈴間Pの『あなたの番です』で採られた、“遮二無二ネットバズらせ”(←秋元康印のアッと驚かせる展開と見せ方、SNS上で考察論議する初期高体温ファンの拡散利用、ツッコませに特化したまとめ動画配信)と“序盤の低視聴率ものかは微動だにしない2クール押さえ”(←幅広く安定した数字を目標にしない。刺さる、エッジの立った、中毒性のある企画でマルチプラットフォーム展開を前提。「暗い怖い胸糞悪い」との反響もB級ホラー調のタッチを貫き“いねーよこんなヤツ!”と言いながら見てもらえるように作る)。

 さらには、

・性的マイノリティの生きかた生き場所など重いテーマに、笑えるあるいは萌えられる要素をスウィーツのように散りばめ口当たりを良くする(『おっさんずラブ』『きのう何食べた?』)

・ヒロインを巡る男性に、対照的なタイプの旬の男性俳優を充てて比較観賞させ“ヒロインが最終的にどちらとくっつくか”見逃がせなくさせる(『凪のお暇』)。

・90年代後半~2000年代に一世を風靡したザ・“キムタク”ドラマの要素に、気鋭の若手演出家の斬新なカメラワークで料理プロセスやレストラン内幕もののリアリティを配し、いま風の新鮮さを出す(『東京グラン・メゾン』) 。

複数クール複数シーズン取ってとにかく多話数、長く放送し、レギュラーキャラを描き込んでいってお馴染み感、思い入れを持たせる(『ドクターX』『相棒』『まだ結婚できない男』、前述『あな番』も)

・・・など、つまりは “複数の面白がりどころ、楽しみどころを仕込み、いろんな趣味嗜好の層がてんでに食いつき、長期間にわたって流入して来られるようにする”というのが、『テレビ放談2020』パネラーの見る当節テレビのヒットの法則だったようです。

 言い換えれば、少し昔のように「高齢者向け」「主婦向け」「20~30代のシングルOL向け」等と、見てほしい客層を絞り込んで、その層が好む要素・手法だけで固めて作るとまず当たらない。『あな番』のように、放送後東京在住の若い視聴者が地方の実家の家族と電話で考察を話し合うような、世代と層を跨ぐトレンドにならないし、狙って絞ったその層がそもそも見てくれなければ悲惨なことになる。絞った通りの客だけどうにか掴めたとしても、ひとつひとつの層のパイはひと昔より軒並み縮小している(絶対的人口減少)ので、枯れ木も山の賑わいになるだけ。客を絞れば絞るほど、あらかじめ負けを認めたに等しくなるのが、いまのテレビなのです。

 テレ東の佐久間Pが「大好きだったし特に後半はめっちゃおもしろいと思ったのに(低視聴率で)ショックだった」と、他局のドラマなのに実感をこめて振り返っていた『いだてん ~東京オリムピック噺~』の敗因もこの近辺にあるような気がします。・・いや、「ような気がする」じゃなくて、ドンズバここだな。ここ近辺にすべてがあるな。(この稿『いだてん』にフォーカスして次も続く)

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