イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

日曜プライム『深層捜査』 ~シワ、そして2サスの明日~

2019-09-09 16:51:51 | 夜ドラマ

 昨日(8日)夜10:00過ぎにテレビ朝日『深層捜査スペシャル』を途中乗車視聴したら、久しぶりに吉行和子さんのお姿が。

 旧作の再放送じゃなく動いて演技している吉行さんを見るのは、月河はNHK朝ドラ『ごちそうさん』(2012~13年)以来じゃないかな。劇場映画にはTVより積極的にオファーにこたえておられるようで、山田洋次監督のインタビューで『家族はつらいよ』シリーズのどれかのトレーラー動画は見た様な気がしますが山田監督のあれ系の映画は苦手なもので。

 ある時点から“いつ見てもあんな感じ”な吉行さんも1935年(昭和10年)生まれ今年84歳、お元気で独特のハスキーヴォイスも健在でなにより・・とまじめに画面に目を向けたら、・・アレ?なんかお顔が微妙です。目鼻立ちの配置はそのまま、表面張力だけがブーストアップした感じ。事件のキイパーソンたる市民派女性市長松下由樹さんの、わけあって生き別れた実母という重要な役どころなのに、心なしか撮影も顔アップを避けている。

 どうもその、顔面シワ除去術を受けられたらしいのね。欧米女性がよくやるリフトアップっていうの?伸ばして引っ張って耳の後ろに集める、故人となった大女優さん(必殺!で三味線弾いてた)が耳の形変わるまでやり倒してた系の施術か、あるいはもっと敷居の低い、ヒアルロン酸とかボトックスっての?そういう成分を注射するたぐいか、とにかく、直近でアップで見たお顔とは確実に違う、人工的な、技術的なツルツルパンパン感です。

 女優さんも八十路半ばで現役で顔晒し続ける選択をすれば避けがたいことなのでしょうが、なんとなく、吉行さんってその手の人工造作とは距離置いてる人だと思っていました。

 そこはかとなく猫っぽいルックスと、お若い頃から独特のハスキーヴォイス(幼時から喘息の持病をお持ちだそうです)で、月河が顔と名前と、芸風と言うか持ち味が一致して記憶できたのは1976年の大河ドラマ『風と雲と虹と』の怪老女・螻蛄(けら)婆ぐらいからかな。すでに・・と言っていいか、当時40歳。老女と言っても、通常の人間とは別の時間軸で齢を重ねて来たような役どころだったので、以来、勝手に“実年齢不詳”なイメージを抱いていました。作品によって役柄によって、すごくあだっぽく女っぽくも見えるし、逆にオンナ捨てちゃったような悟りすましたり開き直った感じも出ていたり。

 朝ドラでは『ごち』の前に『つばさ』でヒロイン多部未華子さんのお祖母ちゃん(にして高畑淳子さんの母)を演じておられて、こちらでは結構、イイ感じに気難しくて扱い辛い、こだわりおばあちゃまでした。劇団女優志願の頃からの盟友・富士眞奈美さんも、ヒロイン実家の和菓子屋を買い取ろうともくろむ剛腕女社長の役でゲスト出演、最終的に和解して談笑する場面もありました。

 いつ頃から“誰かのお母さんor義母(姑)”“誰かのお祖母ちゃん”がしっくりくるようになっていたのかな。『愛していると言ってくれ』の豊川悦司さんのお母さんも良かったけど、もっと前、『スチュワーデス物語』のヒロイン堀ちえみさんの毒母も吉行さんだったんじゃなかったかな。どっちかというと、快活でたくましいお母ちゃんより、「“母親”ってめんどくさいよな」と思わせるタイプの母親像を得意としていたイメージもあります。これまたなんとなくですけど。

 2サスの松本清張原作ものでも欠かせない人でした。挙げてけばキリがないし月河もウロになってる作品もありますが、互いのアリバイ証言を成立させるため、わざと近隣住民たちに聞かれるように嫁との不和を演じる俳人老女役『喪失の儀礼』は印象深かった。嫁と姑、血縁のない他人であっても家族内の証言はアリバイとして証拠能力がないとされますが、「日頃あれだけ罵倒し合って仲の悪い嫁姑なら、庇い合う証言はしないだろう」と警察に認めさせるのが目的の、長期にわたる壮大な布石。何度もドラマ化された原作ですが、吉行さんは1994年と2016年の2度、同じ役を演じておられます。

 ・・・まぁ、ねぇ。女優さんも、自分の加齢と、演じる役柄・作品と、“女優としてこう見られたい、こうは見られたくない”理想イメージとの間で揺れ動いているのでしょう。吉行さん級のキャリアでも。

 それに、令和の現代は昭和には無かった技術やツールやおクスリがあって、なんぼでも手に入るし使えますからね。そこらの「そんなにオマエの顔に興味ねーよ」ってレベルの、一般人ドシロウトでも給料と相談してそれなりに、有名大物芸能人ともなればもっとそれなりに使える。使えるなら使うという選択肢がある。

 ただ、顔面限定で表皮がツルパンだと、ナチュラルにシワシワな頸部・喉部とのギャップが露骨すぎて、今作のようにカメラさんが非常に悩ましいことになる。生き別れた娘役の松下由樹さんも、いまはかなり体格的に遠ざかりましたがもともとはしなやか猫系ルックスの人なので、実の母娘設定が似合わしいキャスティングだし、世界遺産富岡製糸場跡でのロケだし感動の場面になる筈が、いろいろ気が散って余計な事を考えてしまいました。

 ところで、テレ朝の『日曜プライム』って、元来、一話完結ワイドドラマ枠ではなかったですよね。『TVタックル』や『激レアさん』の拡大スペシャルをやっていたこともあるし、高校野球のレジェンド特番みたいな、朝日新聞系のテレ朝らしい企画ものをやってたのもちらっと見かけました。横目で素通りしましたけど。

 もう、素直に『土曜ワイド劇場』復活させてくれないかな。同じ9:00スタートなら、土曜の夜のほうが圧倒的に2サスに向いているのに。昨日の『深層捜査』も、もともと土ワイ用のシリーズだったはずです。裏の主題になっている詐病サイコ殺人とか大嶋ドクターの箱庭療法とか、テイストがやっぱり、明日も休みの土曜夜志向なんですよ。

 土ワイ用に企画制作した“在庫”一掃のため、ニチアサヒーロータイム後のAM10:00~の『日曜ワイド』なんてとんでもない時間帯に事件もの刑事ものをぶっこんできた時期もありました。日曜の朝ですよ。再放送かと思ったら新作だったという。しかもシリーズ化する気満々だったり。

 TVドラマの一時期を主力選手として支えた“2サス”は、そもそもはテレ朝の土曜ワイド劇場から育ってきたのです。後発で民放他局がどこも真似するようになり、枠が長時間な分スポンサーをたくさん入れられるから、企業が活況な時は局の稼ぎ頭だったでしょう。

 いま、ドラマが軒並み苦戦している時期こそ、原点に帰って土ワイですよ。江戸川乱歩でも横溝正史でも松本清張でも、山村美紗でも、あるいは実録事件ものでも何でもアリな作風に、いちばん向いているのが土曜夜です。日本のTV界が誇る(?)ジャンル“2サス”に、テレ朝こそもっと愛を持って欲しいと願うものです。

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