今から4年前にやった第81回アカデミー賞授賞式が忘れ難い。
授賞式のコンセプトは「ミュージカル」で、
ホスト役を務めたヒュー・ジャックマンが華麗なダンスとともに
その年、映画界を賑わせた映画をオリジナルの楽曲で歌い上げ紹介。
そのパフォーマンスに酔いしれた。当時「レイチェルの結婚」で
主演女優賞にノミネートされていたアン・ハサウェイも途中から、
彼のパフォーマンスに加わり、壇上でその美声と見事な歌唱力を披露した。
「この2人のミュージカル、いつか見てみたいな~」
と思っていたけど、その願いは叶った。
「レ・ミゼラブル」
今年下半期1番観たかった映画を一昨日観た。
すごい映画だと思う。
間違いなくミュージカル映画史に刻まれるであろう映画だった。
自分も課題図書で読んだことのある、あまりにも有名な原作、
そして世界中で舞台化され、愛され続けているミュージカルをいかに映像化するのか。
前作「英国王のスピーチ」という名作を生み出した監督トム・フーパー。
この映画を観て感じたのは、彼の本作にかける覚悟と揺るぎない自信。
「生声」「生録」「全編楽曲」
吹き替えなしの本人「生声」は普通だが、
これまで観てきたミュージカル映画・ドラマでは通常、
スタジオで別録りした唄声を、あとで本編にくっつけるのだが、
本作は劇中で演技しながら唄った声をそのまま録っている。
また、劇中のセリフは99%唄を通して発せられる。
これも自分が観たことのあるミュージカル映画・ドラマではなかったことだ。
当然ながら、普段の会話の延長であるセリフ回しより、
楽曲でのセリフ回しのほうが感情を表現することは難しい。
前例がないということで、自分にはかなり挑戦的な映画に思えた。
しかし、本作はそれら難題をすべてクリアし、
ある意味、新たなミュージカル映画を創ったともいえる。
それは、紛れも無く本作キャストがもれなく本物だったからだろう。
キャスト陣のパフォーマンスが圧巻だった。
演技力、歌唱力は勿論のこと、感情を唄で表す表現力が
言葉では言い尽くせぬほど素晴らしい。
高潔の人、ジャン・バルジャンを演じたヒュー・ジャックマンと、
ジャン~が愛に生きるきっかけを与えたファンティーヌ演じるアン・ハサウェイ、
彼らの魂のパフォーマンスに吸い込まれ、何度もウルウル・・・
舞台でも同じ役を演じたエポニーヌ役のサマンサ・バークスはさすがといったところ、
コゼット役のアマンダ・サイフリッドをやや食ってしまっている。
ヒュー・ジャックマン同様トニー賞俳優のエディ・レッドメインも期待以上に素晴らしかった。
一緒に観に行った知人は舞台版を知っていたようで、ジャベール役のラッセル・クロウは
物足りなかったらしい。自分は当初心配していたけど、全然よかったけどな~。
ミュージカル映画としては文句のつけようがないが、
ミュージカル(舞台)版「レ・ミゼラブル」を見たことのなかった自分にとっては、
物語の構成にやや違和感をもってしまった。
サシャ・バロン・コーエン(意外な歌の巧さ!)演じるテナルディエらが完全なお笑い要員だったり、
全体的に駆け足気味で、ジャン~とコゼットが親子愛を育む過程もバッサリ切られていたり。。。
ジャン・バルジャンという一人の男の生き様が「レ・ミゼラブル」の魅力と捉えていたが、
中盤以降、その時代に活きた「民衆たちの賛歌」、みたいな内容になっていた。
一緒に行った知人曰く、舞台版も同様の構成らしいが、個人的にはやや肩透かし。
ちなみに知人は、これ以上ない舞台版の映画化!と大絶賛していた。
本作が公開されることを知って舞台版「レ・ミゼラブル」のDVDを観ることを我慢していたが、
その逆で、事前に観ていれば良かったのだと思う。
今年のオスカー。ヒュー・ジャックマン主演男優獲ってほしいな。難しいと思うけど。
前哨戦の結果からも本作でのアン・ハサウェイの助演女優賞は確実の模様だ。
【70点】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます