goo blog サービス終了のお知らせ 

から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ザ・ボーイズ 【感想】

2019-08-10 07:00:00 | 海外ドラマ


最低で最高。新たな傑作ドラマシリーズの誕生だ。アマプラの鮮やかなカウンターパンチ。これ、単品映画にしても十分面白いのでは!?シーズン2が今から待ち遠しい。

「超能力者は正義の味方」という”決めつけ”は、ヒーローに憧れる人間たちが生み出した幻想に過ぎない。実際に、超人的な能力をもった人間がいたとしたら、人助けよりも、自分の好きなようにその力を操りたいと思うだろう。過去のヒーロー映画にもヴィランとして悪事を働く超能力者が登場するが、彼らを倒す超能力者が正義の味方として登場したりする。ところが、本作の場合、超能力を持つヒーローたちは、表の顔は正義の味方、裏の顔、いやむしろ、本当の顔は悪党である。そして、そんな彼らに挑むのが「ボーイズ」というノーマルな人間チームである。

ヴォートという民間会社が、超能力者を雇用しており、国内の犯罪現場や海外の紛争地域に出向き、その超人的な力で事態を制圧する。社会のなかで、警察、軍事の両面で、公的な役割を担っている。あくまで民間の営利活動であることがポイントで、彼らの活躍は、その後のキャラクタービジネス、コマーシャル契約など、莫大な収益を生むことに繋がる。超能力者はスーパーヒーローとして名声を得るとともに、多額の報酬によって富を得る。彼らの活躍の場はマーケティングによってシナリオ化され、リスク管理もしっかりされている。新しいスーパーヒーローの使い方だ。正義は金になる。

ヴォート社が雇用する超能力者のなかでも、最高クラスのチームが「セブン」といわれる。その中身はDCヒーローをそのままパクっている。スーパーマンもどき、ワンダーウーマンもどき、アクアマンもどき、フラッシュもどき。。。。原作はアメコミのようだけど、DC側とどのように折り合いをつけたのかが気になる。リーダーはやはりスーパーマンで、本作では「ホームランダー」という名前の中年男だ。本家同様、圧倒的な力を持ち、空を飛び、透視をして、目からビームを出す。ひとひねりで人間を殺せる。アメリカの象徴として国旗柄のマントを着ているあたりは、マーベルのキャプテン・アメリカが少しブレンドされているか。

このホームランダーが、このドラマの中心にいる。地球上において彼は無敵である。彼ひとりで1つの国を滅ぼすこともできそうだ。「君たちが本当のヒーローだ」とありがちな労いの言葉を周りにかけ、人格者を装いながらも、裏の顔は人間をクズ同然に見ているド悪党。人知れず不都合な人間を無慈悲に暗殺する。彼に目を付けられたら人間は”終わり”、絶対的恐怖として君臨している。

物語の発端は、電器店で働く青年(主人公)の恋人が、セブンのフラッシュもどきに殺されたことによる。不可避な事故として処理されるが、事件の真相を究明していくなかで、超能力者たちの裏の姿が明らかになっていく。そして、半ば巻き込まれた格好だが、ヴォート社、なかでもホームランダーに強い恨みを持つ男が、主人公に接触し、同じ目的のもと、超能力者たちに復讐をたくらむ。男を演じるカール・アーバンが相変わらずカッコいい。

タイトルの「ザ・ボーイズ」は、彼らがヴォート社を転覆させるために結成したチーム名だ。といっても彼らが名乗ったシーンはなく、カール・アーバン演じる男が組織していたチームが、主人公と出会ったことで再結成された模様。但し、今回のシーズン1では、ヴォート社の秘密を暴くのみに留まる。「ザ・ボーイズ」が反撃する期待は序盤で一気に高まるものの、終盤に向けて、逃げる動きに支配される。セブンに顔バレしてからのスリルが楽しいけれど、ちょっと物足りなし。

シーズン2で本格的な反撃が始まるのでは?と、お楽しみが残されたという見方もできる。だが、主人公の描き方はいささか残念。せっかく、後戻りできない「ボタン」を押してしまったのだから、もっと運命を狂わせ、新たな人格が覚醒するくらいの遊びを持たせても良かった。「ブレイキング・バッド」や「ファーゴ」まで行かないにせよ、もっと主人公を面白く描けたはず。

ストーリーもさることながら、ブラックコメディとグロで埋め尽くされる世界観が堪らない。この土俵はネットフリックスの独壇場と思っていたが、アマゾンプライムも、堂々の18禁をブっこんできた。アマプラを見直した。

内臓をぶちまけるスプラッター、歓迎儀式のフ●ラ、アナル爆弾、顔騎による脳みそ潰し、母乳プレイ、魚人の悲しい性、すっかりデブなオッサンになったハーレイ・ジョエル・オスメントは顔面がつぶれるほど殴打される。。。製作陣のおふざけを多分に感じる下品で過激な描写が連発する。あのエリザベス・シューもその餌食になってしまった(笑)。

本シーズンの実質的主役は「ザ・ボーイズ」ではなく、セブンのリーダーであるホームランダーだ。彼の変態性と狂気が全てのスリルの源泉になっている。飛行機のシークエンスでは「空中では踏ん張れない」と本家を完全にイジっているし。彼の存在感が圧倒的に際立っていた本シーズンから、シーズン2では「ザ・ボーイズ」をはじめ、他のキャラクターも目立ってほしいところ。

ラストシーンで大きなミステリーの答えが1つ解明され、かつ、シーズン2への興味が湧き立つ。かなり完璧に近い幕切れ。シーズン2では、いったいどんな展開が待ち受け、どんな新キャラが登場するのか、今から楽しみである。

【80点】

最新の画像もっと見る

コメントを投稿