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ベター・コール・ソウル シーズン3 【感想】

2017-07-01 08:00:00 | 海外ドラマ


今月最終話がNetflixより配信された「ベター・コール・ソウル」のシーズン3を観終わった。
シーズン3もペースダウンせず、素晴らしい完成度。
本家「ブレイキング・バッド」(BB)を最も近くに感じたシーズンであり、BBを崇拝するファンには必見といえる。ついに「ソウル・グッドマン」のルーツが明らかになった!

本シーズンも「ソウル」こと弁護士ジミーと、仕事人マイクの両輪でエピソードが続く。前シーズンではよく見られた、2人のツーショットシーンは中盤以降ほとんどなくなり、それぞれで独立した物語が展開する。

兄のチャックに弱みを握られたジミーは、弁護士資格の剥奪という最大の危機を迎える。その危機をどう乗り越えられるかが前半のハイライトだ。恋人であるキムとの関係は良好であり、今回の事態に対しても弁護士としてキムがジミーの減刑を訴える。「電磁波アレルギー」という聞いたことのないチャックの病気が個人的にずっと引っかかっていたが、その謎の解明によってジミーの裁判が終結する。ジミーにとってはハッピーエンドであったが、チャックとの埋められない溝が決定的なものになった。最終話(「灯り」)が切な過ぎる。冒頭シーンで、2人が少年時代に育んだ兄弟愛の象徴であった「灯り」が、最終話のラストカットでは決別の象徴となる「灯り」に変わった。

これまでずっと利己的に生きてきたジミーに対して、兄のチャックは「いつか報いを受ける」と口を酸っぱく言い続けていた。チャックとの裁判で勝利し、難を逃れたかのように見えたが、ジミーがこれまでやってきたことの報いがひたひたと忍び寄ってくる。彼自身へのダメージというよりは、周りの人間を傷つける状況に ハマる。しかも、それが常態化する気配を帯びてくる。愛するキムの事故や、老人ホームのお婆ちゃんたちの不仲など、不幸な事件の発端はすべてジミーが捲いた種によるものだ。「壊すのは簡単だが、立て直すのは難しい」と呟きながら、ジミーは「正しいこと」を模索する。自身の生き方を見つめ直し、自身への不利益を顧みず、良心を優先した最終話のエピソードに感動してしまった。

ジミーの相方のキムは、本シーズンでますます存在感が増してきた。仕事ができなくなったジミーに変わり、大忙しの日々を送る。とにかく彼女は仕事がデキる。小さな個人事務所にいながら、大企業のクライアントから絶対的な信頼を勝ち得る仕事ぶりで、見ていて非常に痛快だ。その影には並々ならぬ努力があり、一生懸命仕事に奮闘するキムに「ガンバレ!」とエールを送る。真っ直ぐで負けず嫌いで頑張り屋のキムが、本シーズンでも魅力的だ。仕事からオフって髪を下ろした姿も素敵。こんな彼女とジミーが別れることになるなんて。。。。今のところ、2人の絆の強さが変わった気配はないが、2人のすれ違いが徐々に見えてきた。



ジミーを中心としたパートは、本家BBと比べるとはっきりいって地味だ。北米での評価は相変わらず高いものの、一般の視聴者数がシーズンを追うごとに減ってきているのもわかる気がする。自分は大好きだけど。

その一方で、仕事人マイクのパートはイッキにBBの色が濃くなる。前シーズンから登場したヘクターに続き、あのガスがいよいよ登場。そして後半では、な、なんと、ウォルターに毒殺されたリディアも登場する。あくまでマイクがエピソードの中心にいるが、ヘクターとガスの対立関係など、BBに繋がる前日譚がしっかり盛り込まれている。BBファンには堪らない。BBでは描かれなかった、ヘクターがガスを恨む背景(BBではガスがヘクターを恨む経緯が描かれていた)や、マイクとガスが手を組むことになった原点、そして、ヘクターが車椅子のチンチンおじさんになった経緯が描かれる。

ガスは本シーズンでもカリスマ性を発揮する。小さなファーストフード店の店長は世を忍ぶ仮の姿(ロスポジョス復活!)。正体はメキシコからアメリカにドラッグを流通させる裏社会ビジネスの天才だ。彼を「売人」呼ばわりするマイクに対して、リディアが放つ「彼のことを何も知らないのね」が説得力を持つ。彼の店に恐喝して乗り込んできたヘクターを帰したのち、怯える従業員たちに対してめちゃくちゃカッコいいホラ話を聞かせる演説シーンが絶品。「君たちの勇気に感謝する。カウンセリングの費用を保証し、24時間分の残業代を払おう」という気前を見せ、従業員たちを鼓舞する。このあたりの人心掌握術もガスらしい一面だ。



マイクのパートでは、BBらしい脚本の特徴がこれまで以上に多く見られた。説明なき無言の描写を通して「いったい何をやっているのだろう?」と多くの想像を巡らすが、視聴者の想像を超える展開で着地する。関係性が全く見えない「無料診療所」からシーンで始まるエピソードが見事。マイクが放った一発の銃弾だけで、ヘクターが持つドラッグの供給ラインを断絶させてしまう。その準備にかかるマイクの様子からは全く先が読めず、それらの伏線が綺麗に回収されたラストに唸ってしまった。たった1人でヘクターに大ダメージを与えたマイクは、間接的にガスの利益に加担したことになり、その礼としてガスはマイクに金を渡すが、マイクは突き返す。あくまで自分のためにやったことだと。マイクが相変わらずカッコよく、ガスが彼を気に入るのも無理はない。



ヘクターの腹心、ナチョも本シーズンでは目立っていた。ヘクターに対する陰謀と、そこから放出されるスリルだけでなく、堅気の父を思いやるナチョの姿が丁寧に描かれる。「錠剤カプセル」の発注だけでナチョの狙いを見通すマイクと、それをわかっているナチョの対話シーンが見応えあり。本シーズンでナチョという新キャラを配置した理由がよくわかった。



シーズン1から思っていたことだがマイクのパートだけに絞れば、おそらく視聴者数を稼げたと思われる。特に本シーズンではBBらしいスリルとスケールが出てきた。個人的には、ジミーことソウルのパートも同じくらい好きなので本ドラマの構成を支持する。自分と同様にBBに夢中になった知人も、シーズン1の途中で離脱し、多くのBBファンがそんな具合なんだろうなと感じる。さすがに今回のシーズン3はBBファンは見なきゃダメだと思うけど。

先日、次のシーズン4の製作が決まったらしい。本シーズンの最終話を見た感じだと、あのまま終了でもおかしくなったので、継続が決まってテンションが上がった。次のシーズンでジミーとキムが別れると予想。「ハウス・オブ・カード」(シーズン4)の落胆を挽回してくれるほど、最高に面白かった。

【90点】

ベター・コール・ソウル シーズン1 【感想】
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