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ダウントン・アビー シーズン6(ファイナル) 【感想】

2016-12-17 09:00:00 | 海外ドラマ


もう感無量。
「ダウントン・アビー」の終幕を見送り深い余韻に浸る。あぁ、ダウントンの面々ともう会えなくなると思うと寂しい気持ちでいっぱいになる。極上の美術、極上の衣装、極上の風景、極上の演技、極上のユーモア、極上のドラマ。一話一話のたびに感動を噛みしめる。人を愛すること、信じること、思いやること、敬うこと、寛容であること、誠実であること。。。。それってこんなに美しく尊いこと。自身の人生の生き方について見直してしまう。

スターチャンネルで録り貯めていたダウントン・アビーのファイナルシーズン(シーズン6)を、結構な時間差でイッキ見した。現在地上波のNHKでは、この前シーズンであるシーズン5が始まったところ。米英の本国では昨年のうちに放送が終わっているけど。

最後の本シーズンを一言で表すなら「旅立ち」。
「終わり」ではなく、新たな人生の「始まり」として描いた、製作・脚本のジュリアン・フェローズに大きな拍手を贈りたい。

いよいよダウントンにも近代のうねりが押し寄せる。多くの使用人を抱えて自適に暮らす貴族文化は過去の遺物となりつつあり、クローリー家も時代の流れに準じることになる。その前提には「自立」があり、使用人に任せるのではなく、貴族たちが自分たちで生活を営んでいく変化が必要となる。もともと柔軟であるクローリー家は、その変化に抗うことはせず、しなやかに受け入れいていく。一家の母であるコーラは病院の高度化治療を実現するため、運営する病院の合併に奔走し、その後、理事として辣腕を振るう。長女のメアリーはロバートに変わり領地運営に乗り出す。その妹のイーディスは今は亡きマイケルの会社を引き継ぎ、編集者として仕事を続けている。

その一方で、貴族文化の終焉は雇用関係にある使用人たちとの別れを意味する。

使用人たちの状況は、前シーズンで婚約した執事のカーソンと家政婦長のヒューズの結婚に始まり、アンナとベイツのオメデタ、デイジーの成長、パットモアのホテル運営、モールズリーの新たなキャリア、バクスターの過去からの解放などのエピソードが描かれる。前向きな変化が描かれるなか、バローこと、トーマスだけは特異な状況にあった。個人的には、本シーズンでの主人公はトーマスに思えた。少なくとも最も目立ったのはトーマスだった。

ダウントンでの人員削減のため、副執事であるトーマスが解雇の対象となる。オブライエンとの悪だくみの日々が懐かしく、その後も様々な悪さをしてきた男だが、本シーズンでのトーマスは孤独で哀れなキャラとして描かれる。新人下僕であるアンドリューに対して、純粋な良心で接するものの、相手にされない時の表情が切ない。他にもこれまでの悪行から、彼の善良な行いが疑われるシーンも多々あり、自業自得とはいえ、トーマスが可哀そうに思えてくる。それでも、彼を信じるバクスターの優しさがありがたい。思えば、トーマスは使用人メンバーの最古参の1人だった。これまでトガり続けてきたトーマスの成長と変化が印象深く、心を揺れ動かした。



本作のヒロインであるメアリーは前シーズンで予感したロマンスが発展するものの、まさかの紆余曲折に至る。やはり、前夫のマシューこと、ダン・スティーヴンスの輝きに匹敵するのは、マシュー・グッドくらいしかいなかった。彼が演じるヘンリーにはマシューにはない色気があってメアリーとお似合いである。妹のイーディスにも新たなロマンスが台頭する。これまでの「中心のメアリー」VS「脇役のイーディス」という構図が、本シーズンで逆転するのが感慨深い。個人的にはイーディスが好きだったので、彼女の人生が最良の形で報われたのは本当に嬉しかった。イーディスの相手役もナイスガイで良かった。



クローリー家の潤滑油であるトムは本シーズンでも大活躍する。前シーズンの終わりでアメリカに移住したトムがダウントンに戻ってくる。彼がいなけれな救われなかったエピソードも多い。

「でもこれだけは聞いて。僕たちは何度でも傷つくだろう。でもそれが生きていくってことなんだ。」

と絶望するメアリーに投げかけた言葉が心中に響いた。

最終シーズンということで、過去のシーズンを振り返るエピソードが効いていて涙を誘う。トムがダウントンに入るきっかけとなったのはクローリー家の三女シビルとの結婚であったが、そのシビルによって人生を大きく変えた元メイドのグウェンが大出世してダウントンに戻ってくる。グウェンを通して語られる、ありし日のシビルとの思い出。。。時代変遷の象徴的なテーマとして、自立する女性の姿が本作で多く描かれているが、その始まりはシビルだったと思い出す。

最終シーズンということで作り手の気合を随所に感じる。1920年代の時代の空気を、これまでにない大きなスケールで描き出している。特に際立っていたのは、メアリーの相手役となるヘンリーが活躍するカーレースのシーンだ。レトロなレースカーを何台も走らせ、エクストラのギャラリーを大量に増員し、レース会場の熱気と興奮を伝える。衣装、美術も手加減なしの豪華さ。貴族ファッションもさることながら、使用人たちの簡素な私服姿もかなり可愛くて良い。その衣装を来たキャラクターたちを捉えるカメラワークも秀逸であり、美しい風景に溶け込ませたショットの数々がイチイチ絵画的。圧倒的な眼福感。

本作はフィクションのドラマであるが、貴族時代のなかにも、本作で描かれていたように、身分を超えた貴族と使用人たちとの絆の物語がどこかで存在していたと感じる。このあとに待ち受けたであろう、第二次世界対戦下でのダウントンの姿も見てみたいと思ったが、貴族文化が輝いていた最後の時代での幕引きは最良の選択だと感じた。これ以上ないハッピーエンドに思わず拍手してしまった。

露骨な悪や毒っ気のない物語のなかで、ここまで笑わせて、人を引き付ける脚本力に改めて感心する。目の栄養と心の栄養に溢れた傑作のTVドラマだった。製作陣、キャスト、そして日本のボイスキャストに感謝。ありがとうございました。

【95点】

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