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スイス・アーミー・マン 【感想】

2017-10-14 08:00:00 | 映画


珍味。たまらなく好きな映画。
相方が「死体」という前代未聞のバディームービー。いったいどんな映画になるのかと、期待と不安を巡らせていたが、そうきたか。「スイス・アーミー・マン」のタイトルの意味にも合点w。奇想天外な青春サバイバルアドベンチャー。見えてくるのは「男子が生きるということ」。妄想の中に生きる傾向は、女性よりも男性のほうが強いのではないかという仮説(?)に賛同。ブッ飛んでいて、下品でブラックなユーモアが、ツボに入って笑いが止まらない。死体役のダニエル・ラドクリフが素晴らしいパフォーマンス。彼のお尻が脳裏に残る。手作り主義な美術も大きな見所。2人の奇妙な友情と、たどり着いた終着点にグッと来てしまった。

無人島に漂着して絶望していた青年が自殺の間際、浜辺に流れ着いた死体と出会い、共に故郷に戻るための冒険に出る話。

死体を放置すると、体内に腐敗ガスが溜まる(らしい)。そのガスがオナラのようにお尻から噴射され、動力になったとしたら。。。。そんな、小学生が思いつくようなアイデアを具現化するところから、本作の冒険は幕を開ける。無表情な死体に、主人公の青年がまたがり、死体の放屁(腐敗ガス)でジェットスキーのように海面を滑走、無人島からの脱出を目指す。くだらない妄想と、ダイナミックな絵のマッチングが何ともシュール。爆笑。

放屁作戦により無人島からの脱出に成功した青年は、命の恩人でもある、その死体を見捨てることができない。無人島ではない陸地にたどり着いたは良いが、今度は町に出るためのサバイバルが始まる。水の供給、食料の供給、険しい難所の通行、猛獣からの回避。。。「生きた」死体となったメニーが次々と多機能ツールとして活躍し、様々な局面を打開していく。「そんなアホな」のツッコミの連続ながら、呆れるよりも、無邪気で逞しい想像力に圧倒される。2人のコンビネーションがいちいち楽しく、突き抜けたユーモアに抱腹絶倒する。また、コルク、セクシー雑誌など、彼らが道中拾い集めるアイテムが伏線となり、ことごとく展開を動かす鍵になっていく脚本も巧い。

そんなサバイバルを通じて、みえてくるのが友情とロマンスの青春劇だ。ややグダグダになったのが玉にキズだが、バスでの再現シークエンスが本作のハイライトの1つ。そのきっかけは、メニーの「コンパス」を復活させるためで(実にくだらなくてイイ)、頭と下半身が分離している男子のしょーもなさを再認識させる。過去の回想を経て、主人公はこれまでの人生を振り返り、新たな生き方を模索する。死体のメニーも生きた感覚と、失われた人間性を取り戻す。実際の過去のシーンと、森の中で繰り広げる即席舞台のシンクロが見事。監督のダニエルズ(ダニエルさん同士の2人コンビ)は、ミュージックビデオで名を馳せた人らしく、映像の魅せ方には強いセンスを感じさせる。また、パンフ情報によると、森の中で2人が作ったことになっているセットなどの美術は、すべて実際にスタッフが森の中で拾い集めたもので作られているらしい。凄いクオリティーだ。

物語は、ほぼ主人公とメニーの2人だけで展開する。主人公演じるのは若き性格俳優のポール・ダノで、死体のメニーを演じるのは、ハリポタのダニエル・ラドクリフだ。まったく異なるキャリアを積んできた2人が本作のような映画で共演したのが感慨深い。個性的な役柄が多かったポール・ダノに変わり、本作を牽引するのは何といっても死体役のダニエル・ラドクリフのパフォーマンスだ。振り返れば、ハリポタを卒業以降、そのイメージを払拭するため(たぶん)、変化球なキャラクターばかりを演じてきたラドクリフだが、本作でいよいよその呪縛から解放されたと思われる。片目が常に半開き状態の顔面作りや、死んでいる肉体で生きたキャラを演じる動作は、相当な身体能力が伴ったと考えられる。そのテクニックと役者魂に恐れ入った。

妄想からリアルに引き戻される終盤の展開は、俗にいうご都合主義であるが、ここまでファンタジーに徹した作りであれば、違和感なく流れに身を任せられる。人生に絶望した男子の「生きる」ことへの肯定が、ラストの放屁による再出発に込められていたと勝手に想像して、少し感動してしまった。

【75点】

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