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シングルマン 【感想】

2011-03-19 01:23:19 | 映画
酔いしれる。。。という感想が最もふさわしい映画だ。

私の2010年度ベストワン映画は「英国王のスピーチ」。
主演のコリン・ファースは同作でオスカーを獲ったが、前年度もオスカーにノミネートされていた。
それが本作「シングルマン」での主演。
昨年度注目していた本作であったが、これもまた単館でしか上映しておらず、
公開時、観に行くことができず、レンタルを待ってようやく観ることができた。

ラブ・ロマンス俳優として、個人的にヒュー・グラントなどと同じ括りにあった、コリン・ファース。
「英国王のスピーチ」でまったく次元の違う、名優としてのキャリアを確立したと感じたが、
本作「シングルマン」が、彼のキャリアにおける大いなる布石であったことを本作で思い知る。

本作は、1962年11月30日(金曜日)、恋人(ジム)に先立たれた男、ジョージの一日を追った話だ。
ジョージはある決意を胸にその1日を全うしようとする。。。

ジョージとジムは同性愛者なのだが、その特異な関係性に注視するように本作は作られていない。

本作について「どんな映画か?」と尋ねられたら「人間賛歌の映画」と私は答える。

過去いくつもの映画で、「愛」や「孤独」といったテーマが唄われてきたが、
本作も同様のテーマが根底にあるものの、それらがトリガーとなって、
日常に潜んでいた人間の美しさが華開いて見えてくるというところがユニークだ。

「人間賛歌」「人間の美しさ」をどのように映像をもって魅せられるのか。。。
本作が映画初監督だという、有名なファッション・デザイナー(らしい)トム・フォードの
美的感覚が如何なく発揮されるているようだ。

寸分の狂いなく、計算つくされたであろうフレーミング。
キャラクターの佇まい、所作、60年代のアメリカのファッション、インテリア、風景。。。。等々
1シーン、1シーンが芸術的な絵画のよう。完全にツボ。観るたびにため息が出た。

しかし本作では、それらの絵画が単純に映画の中のお飾りになっているわけではなく、
キャラクターの心情、あるいは、人間に美しさを見出すための表現になっており、
抜群の巧さを感じる。

なので、本作では印象に残るシーンが多い。

中でも、銀行内でジョージと隣に住む少女ジェニファーが出会うシーンが好きだ。

 カバンの中の探し物をするジョージ、下を向く視線の先に、少女の影が映る。
 カメラはジョージの視線に合わせ、少女をゆっくりと見上げる
 少女の影から、足元、細くしなやかな足、鮮やかなブルーのドレス、少女美しい顔、瞳、頬。。。
 純粋無垢という美しさに出会ったジョージ。「何て美しいのだろう」と彼の瞳が語った刹那、
 セピア色のフレームがにわかに色づいていく。
 「皆あなた(ジョージ)の眉毛おかしいというけど、私は好きよ。」と少女が真っ直ぐな瞳で
 ジョージに話しかける。微笑むジョージ。。。
 その後の少女とジョージの会話もなんとも素敵だ。

他にも思い出す度に、鮮やかに蘇るシーンが本作にはホント多い。

そんな本作にあって、ジョージ演じるコリン・ファースのキャスティングが見事に融合した。
抑えた演技の中に、複雑な心境を見事に表現。
これまでの、ただ顔がよい英国ハンサム俳優から見事に脱却した感じだ。

そしてあの抜群のスタイルと佇まい。カッコよすぎるわ。
60年代のクラッシクで細身のスーツが最高に似合う。
スーツが似合うといえば、新生007のダニエル・クレイグの胸筋で着るスーツも
斬新で印象的だったが、本作コリン・ファースの着こなしもインテリスマートで相当よい。

ジョージの親友役(?)のジュリアン・ムーアも貫禄の存在感、巧さを見せるが、
ツイストを踊るシーン、寸胴ぶりなスタイルがちょっと残念。

美しき人間賛歌を映像で表現する本作。
単純に目の保養にもなる。
お酒をやりながら観るのもよいかも。

BD買おう。。。。

【85点】




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