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バリー シーズン1 【感想】

2018-10-23 08:00:00 | 海外ドラマ


ボタンを押し間違って、Amazonプライム会員になってしまった。
年間ではなく1ヶ月400円なのでまあ良しとして、せっかくなので、久しぶりにプライムビデオを見ることに。エミー賞が終わったばかりで、チェックしていた「バリー」のシーズン1が配信されていたので見た。

全8話、1エピソードあたり30分前後なのでサクサク鑑賞、あっという間に終了。
小品ながら、予想以上に面白かった。高度なコメディドラマ。

アフガニスタンの帰還兵で、現在は殺し屋として働く男が主人公。依頼を受けた暗殺案件でたまたま演劇学校に潜入。そこで出会った人たちの勘違いで自身も演劇を習うことになり、新たな生きがいに目覚めていくという話。タイトルのバリー(Barry)は主人公の名前だ。オープニングの寸劇から「Barry」のタイトルまでの流れが秀逸。それだけでこのドラマのレベルが推し測れた。

バリーは凄腕の暗殺者であるが、演じるビル・ヘイダーはどこから見ても普通の一般人にしか見えない。ギャップが面白いというよりも、案外、そういう人こそ裏の稼業があったりするのではと生々しく思えた。ドラマのファーストショットは死体が映る殺しの現場であり、コメディだと思っていたのでかなり面食らった。ただ、本作は間違いなくコメディ。



人間の生き様はコメディから逃れられない、名作「ブレイキング・バッド」でも描かれてきたテーマが本作でも生きている。傍らで深刻な事態が起きているのに、それに気付かない現実生活の表裏、真面目にやればやるほど空回りして、些細なコミュニケーションのすれ違いが思わぬ方向へ向かい、笑いへ転じていく。ユーモアの発生方法が高度だ。

バリーは良識ある人間であり、自身の仕事に罪悪感をもっている。足を洗いたいと思っていた矢先に、演劇というものに出会うことになる。舞台は夢追い人が集うロサンゼルス、役者として成功しようと学ぶ演劇学校の仲間たちとの友情、そして恋愛。孤独だったバリーは新たな生活に溶け込もうとするが、裏稼業の縛りから解放されるのは難しく、演劇学生と暗殺請負人の2足草鞋の生活を続けていく。暗殺待ちのなか、必死に台本を読み込む姿が可笑しい。そんな状況にバリーを追う警察も加わり、さらに面白くなってくる。

バリーが恋する女子を中心に、ドラマや映画への出演を切望する役者たちのリアルが丁寧に描かれているのが面白い。成功パターンではない、もう1つの「ラ・ラ・ランド」の姿だ。アルバイトとオーディションに追われる日々、ライバルとの役の奪い合い、端役ですらキャスティングされることの喜び、良くも悪くも俳優たちのキャリアを左右する「エージェント」との関係性などなど、多くの俳優たちが経験するであろうエピソードは悲喜こもごもだ。

バリーの暗殺請負と演技学習。相容れない2つの生き方だが、暗殺現場での出来事が演技に思わぬ幅を広げるなど、双方に影響を与えるのが面白い。コメディの枠のなかでギリギリを攻めるスリルが絶妙だが、最終話で起きた事件は余計に思えて残念。あのまま「仲良く」終わったほうがコメディとして収まりが良かった。

主演のビル・ヘイダーは監督、脚本も兼任しており(共同だが)、実は凄い人だった。

【70点】

コメント
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