から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

マツコ・デラックスMCの風俗特番が素晴らしかった件。

2018-10-10 23:00:00 | 日記

一昨日の月曜日の深夜、日本テレビで放送された、日本における「風俗産業史」を取り上げた特番があまりにも素晴らしかったので、日記として残しておく。
永久保存版の情報番組。攻めに攻めた企画であるのは勿論のこと、知的好奇心を刺激する教養番組であり、激動の時代を己の身1つで逞しく生きた女性たちを描いたドラマだった。

毎週「月曜から夜ふかし」がやっている時間帯であり、この特番の放送を知らずして、毎週録画にたまたま入っていた。番組名は『かたせ梨乃が進駐軍の前で踊り狂った時代…とマツコ』。映画「肉体の門」から引用したタイトル名だ。「●●が輝いていた時代」の第2弾で、前回は「不良」文化、これもまためちゃくちゃ面白かったのだ。

「風俗」

テレビ局の放送コードがどんどん厳しくなるなか、「エロ」ではなく「文化」として大真面目に向き合った情報バラエティだ。「イッテQ」しかり、大衆迎合する日本テレビ気質が個人的に好きではないのだが、この番組を見て、日本テレビの心意気と覚悟に感動してしまった。

番組では、現代→近代→創成期(江戸時代)→戦後と、変わりゆく風俗の形を追っていった。いつの時代も、男にとって「秘密の園」である一方、女性にとっては「孤独な戦場」。女性たちへの敬意を強く感じる内容だった。

風俗の店舗数は増加の一途をたどり、ある調べによれば風俗嬢と言われる人たちは30万人に上るとのこと。2004年の石原都知事による浄化作戦により店舗型が一掃され、新たな業態としてデリヘルが台頭、手軽さと便利さは現代にマッチしたサービス形態だ。そんななか、今も残る「料亭型」風俗として番組では「飛田新地」を取り上げる。

自分が社会人2年目くらいだっただろうか。大阪に赴任した学生時代の友人を3人くらいで訪ねたことがある。学生時代のノリで「飛田新地を見に行こうぜ!」と車で向かったものの、その異様な雰囲気に尻ごみして引き返した思い出がある。番組では現在の飛田新地の様子をカメラに捉え(スゴい!)、その「お作法」までも細かく解説する。まさに異空間であり、店先で女性と客が顔を向き合わせて、サービスに流れる、かつて旺盛した失われた風俗の原風景のよう。その一方、笑かせのパートとして、風俗近代史の「産業革命」として評される「あべのスキャンダル」が取り上げられる。このノーパン喫茶で誕生したコンセプト型エロスは、現在のAV文化にも通じていると感じた。

国の公認形態として風俗産業が最初に起こったのは江戸時代で、女歌舞伎と湯女の裏仕事を取り締まるためだったという。そこで遊郭が誕生。働く遊女たちには明確なカーストがあり、その頂点に立つ「花魁」は吉原のなかでも片手で数えるくらいしかおらず、客に性的なサービスを施す仕事人というより、大衆に愛されるアイドル、もしくはファッションリーダーだった。遊郭といって、自分が真っ先に思い浮かべるのは映画の「吉原炎上」。番組内でも取り上げられており、古い日本映画に疎い自分も何度も見た名作だ。映画の主人公同様、家族の借金の肩として売られてきた女性たちが多く働いていた。番組に出演していた専門家曰く、遊郭で勤めたのち、その多くは梅毒で亡くなったらしい。娘を預けた家族はその亡骸を引き取ることはほとんどなかったとのこと。生前は遊女になった娘に甘えて追加借金をすることもあったという。遊女たちはそれでも懸命に家族のために働いた。通勤電車でこっそり見ながら、悔しくて涙ぐんでしまった。漫画家の村上もとかが「JIN-仁-」を描いた気持ちがよくわかった。いつか、彼女たちが投げ込まれたという浄閑寺に手を合わせに行きたいと思う。

哀れみと同時に感じるのは、その世界で生き抜いた女性たちの強さだ。戦後まもなく、連合国に占領された日本で進駐軍の相手をしていた娼婦たち(「パンパン」)の存在。GHQによって、解体された遊郭。そして誕生した「赤線」が、停滞する経済活動を支えていた事実。娼婦たちの縄張り争いと勢力図は、暴力団のようであり、まさに「肉体の門」で描かれた状況があったと知る。公認の「赤線」に対抗する形で、非公認の「青線」ができて、その地点をみると、池袋、新宿、五反田などがあり、現在の風俗エリアであることに驚かされた。その姿や形を変えても、必ずルーツというものがあるのだ。番組は最後に、赤線地帯の高級娼婦であった老女「ヨコハマメリー」を取り上げる。番組時間が短いので、彼女の紹介シーンがやや駆け足になってしまったのは残念。彼女のドキュメンタリー映画を見てみたいと思う。

「男は絶対風俗で仕事はできない」、最後にMCのマツコ・デラックスが発した言葉に大きく頷いてしまった。男は女性にかなわない。男は女性に敬意を払うべきと思えた。

未知の史実に触れ、大きな感銘を受けた番組だった。欲をいうと、1時間では収まらないテーマであり物足りなさもあったが、よくこの短時間でまとめたともいえる。
これでかなりハードルが上がってしまったが、次の第三弾はいったい何を扱うのだろう。

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イコライザー2 【感想】

2018-10-10 08:00:00 | 映画


またまた痛快な続編。
善良な市民を脅かす悪党たちをたった1人で一掃した前作。今回は主人公自身の過去や背景にスポットを当て、自身の復讐のために「処刑」が執行される。「お前はどうなんだよ?」と、もっともなセリフが飛び出すように、前作と比べると、敵側への憎悪が小さく、目的達成時のスッキリ度も低い。一方で、イコライザーvsイコライザーの構図は新たな切り口として面白く、両雄がぶつかるクライマックスのアクションシーンは熱い。ここでも空間が巧く使われている。主人公の無敵ぶりはパート2でも揺るがず、「こうでなくちゃ」と前作ファンの期待を裏切らない。多くのヒーロー映画で危機に瀕する局面を主人公に与えるが、本作シリーズは別。襲いかかる脅威を知力と攻撃力で返り討ちにするのが醍醐味。「強い男」に憧れを持つ中二男子としては堪らないヒーロー像だ。危険が襲う前兆を音楽でバラしてしまうのは勿体ないか。個人的なツボはクライマックスよりも、前半で描かれる、女性に乱暴した卑劣男たちへの強烈なお灸シーン。しがないオッサンと侮る男たちを、正義の鉄拳で粉砕する。演じるデンゼル・ワシントンの冷静さと重量感がカタルシスに輪をかける。本作では近所の若者を導くメンターのような一面も描かれるが、主人公の「お節介」によって大迷惑を被ったとも受け取れ、散々な目に合った若者を見てちょっと可哀そうにも思えた。
【65点】
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