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ジュピター 【感想】

2015-03-07 07:46:14 | 映画


「映画界の一発屋」。で、思い浮かべる監督の1人(2人)、ウォシャウスキー兄弟の新作「ジュピター」を試写で観た。あっ、兄弟じゃなくて「姉弟」か。。。

家政婦をやっている平凡な女子が、ある日突然、銀河系を巡る壮大な兄弟喧嘩に巻き込まれるという話。宇宙規模でみると、地球は小さな1惑星に過ぎず、宇宙を支配する王族兄弟(宇宙人?)の支配下にあったという設定だ。「ザ・SF」な設定に対して、必然性を求めるのは野暮なことだろう。主人公の女子が、宇宙の世界と繋がることになる動機も実に強引だけど、まあ許容できる範囲だ。
本作は「マトリックス」以来のウォシャウスキーの完全オリジナルストーリーとのこと。仮想世界を舞台にして無現と有限の世界を同 居させてしまった「マトリックス」。その想像性には遠く及ばないものの、劇中の映像からはウォシャウスキーの気合いが漲っている。

スタイリッシュなデザインで統一された世界観。ハイテンション&ハイスピードなアクションの連打。3Dを意識した壮大で奥行き感たっぷりな映像描写。人物のアクションまでもコテコテに作られた視覚効果の嵐。印象的なのはレザービームによるフラッシュの凄まじさで、テレビで放送したら「フラッシュに気をつけてください」というテロップが間違いなく入りそうだ。目まぐるしく変わる展開とアクションだけでもかなりの満腹感である。
「マトリックス」で魅せた海老ぞりに対抗するのは、重力から解放されたエアースケート。空中を自由自在にスケートできる代物で、既視感は否めないものの、地球の高層ビル群から宇宙まで飛び回るシーンは観ていてテンションが上がる。欲をいえば「Mr.インクレディブル」のフロゾンばりのスピード感が欲しかったか。

「マトリックス」のアクションの秀逸さは、スローを多用した緩急にあり、世界観の秀逸さは「行き止まり感」のある空間の中にあった。それらによって観る者の興奮とスリルが醸成されたと思うが、時は流れ、できることが大きく広がり、本作では「無制限」な世界が作られた。
同じ監督が手掛けたことを裏付けるのはビジュアルセンスのみで、演出面にはあまりセンスは感じられず。個人的にかなり期待していた映画だっただけに、この点は残念だった。多種多様な宇宙キャラは目に楽しく、時に人間、時にモンスター、時にロボットと言った具合。遺伝子操作によってオオカミ人間として生まれた、主人公のボディーガードの背景がもう少し描かれてたら面白かったはずだ。

主演にミラ・クニス、チャイニング・テイタムという今を輝く2人を据える。しかし、その2人を喰っていたのが、王族の長男で敵役を演じたエディ・レッドメインだろうか。あっちゅう間にオスカー俳優に上りつめた彼だが、悪役でありがちな「カッコいい」ではなく「ヘタレ」っぷりが実に楽しい(本人の狙いじゃないかも)。大味な色調の映画にあって、彼の厚ぼったい上唇が妙に安っぽくて似合う。低いバリトンボイスも手伝い、発する言葉に凄みがあるのだが、やることなすことがショボくて、そのギャップに笑いがこみ上げる。これをユーモアとして織り交ぜたならウォシャウスキーを見直す。

大スクリーンで楽しむSF大作としては次第点。ただ「マトリックス」の幻影を追うと落胆は隠せない。その前作の「バウンド」といい、ウォシャウスキーは絶対にセンスがある映画人だと思うんだけどな。

【65点】

コメント
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