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青天の霹靂 【感想】

2014-05-31 05:30:01 | 映画


「青天の霹靂」を観る。
劇団ひとりの監督デビュー作だが、想定以上の完成度に驚く。
「新たな才能の誕生」みたいなこと言っても言い過ぎじゃないかも。

自分がこの映画を選んだ理由は1つ。劇団ひとりがツボだからだ。
バラエティ登場時のひな壇における外さないコメントの可笑しさや、
「ゴットタン」での、ド下ネタが堪らない。
そんな彼が原作、脚本、監督、出演とマルチに関わった映画とあれば見過ごせない。

本作は場末のマジックバーで働き、人生に絶望していた男が
タイムスリップして、自分が生まれる前の両親に出会う話だ。

「よく出来ているなー」というのが観終わった直後の感想。
映画製作の初心者が監督したとは信じ難いほどだ。

ストーリー自体はオーソドックスなのだけど、
安いお涙頂戴に走らず、笑いを織り交ぜ、
説得力のあるエモーショナルなドラマに仕上がってる。
自分も思わず涙くんだが、隣のお姉さん、お兄さん、普通に号泣してたな。

後で知ったことだが、物語の着想は、劇団ひとりが実際にマジックバーで目撃した、
とあるマジックに感動して、それを映像化したいと思ったことが起点らしい。

いわば、そのマジックシーンの映像化のために、
物語を肉付けしていったということらしい。

そのマジックシーンが見事、物語の象徴になっている。
クライマックスの見せ場における、その美しさに涙腺がゆるむ。

映画という映像表現でできることの有用性をよく知っているみたい。
どこまで本人がやっているのか怪しいが、編集にもセンスを感じる。

印象的だったのが、登場人物たちを俯瞰で見せるシーンよりも、
顔面アップに寄ったシーンが多いことだ。
演者たちの表情に、劇団ひとりが惚れ込んでいるのがわかる。

主演の大泉洋の顔面アップから滲むのは、みじめさや恥ずかしさだ。
誠実さを感じてしまう大泉洋でやってしまうと、浮いたシーンも少なくないが、
全編を通じて、大泉洋でないと成立しなかったと思う。

面白い映画を生み出す映画監督には作家性がある。

監督名を芸人名(「劇団ひとり」)にしていることがポイントだと思う。
芸人は人を笑わせるプロだということ。

劇団ひとりだから生み出せた笑いが本作の大きな功績だ。
どこかシニカルな視点がついて回るのが彼らしくて面白い。
狙いにいった笑いが見事にハマるだけでなく(劇場爆笑)、
物語の流れに違和感なく溶け込ませているのも巧い。
その笑いの使い方に、ウディ・アレンにも似た作家性を感じてしまう。

ストーリーテラーとしての才能、芸人ならではの演出力。
「笑って泣いて」というありがちだが
日本映画として希有な完成度だ。何か嬉しい。

監督、劇団ひとりのさらなる挑戦に期待してしまう。

【70点】
コメント
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