そもそも論者の放言

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グーグル・ヤフー提携は何が問題なのか

2010-11-16 23:26:52 | Economics
本日付け日経新聞朝刊「経済教室」は、「グーグル・ヤフー提携を考える」というテーマで滝川敏明・関西大学教授が執筆(今頃になって何故このテーマ?という気はするが…)。
日本のヤフーが検索エンジンにおいてグーグルと提携するのは、健全な競争を制限し、独占禁止法上大きな問題がある、との立場。

指摘されている問題点は大きく2点あります。

・検索連動広告市場におけるシェアが極端に大きくなることで価格競争が失われ、広告主に対する課金が引き上げられる懸念がある。
・グーグルとヤフーの検索連動型広告のイノベーション競争が停止ししてしまう懸念がある。

2点とも理屈は分かるんですが、素人的にはどうも納得しかねるところがあります。

まず前者について。
以前にも書いたことがあるけど、検索連動広告というのは数多ある広告手段の1つに過ぎないのであって、広告主は様々な広告媒体の中からネット広告を選択し、さらにその中で費用対効果を勘案して検索連動広告を選ぶわけです(実際そういう立場で仕事をしたことがあるのでよく分かる)。
検索連動型広告の料金が高止まりすれば、広告主の立場からすると検索連動型広告の費用対効果が小さくなることを意味するので、他の広告手段・広告媒体へ選択をシフトさせるだけではないか。
そうすると、媒体側としては結局、検索型広告の価格競争力を取り戻すために料金を元の通り下げざるを得なくなるんじゃないでしょうか。

後者についても、検索エンジンは絶え間ない技術イノベーションを繰り返してきたことにこそ価値があったのであって、イノベーションを停止してしまい利用者に価値を認めてもらえなくなったら、単に使われなくなってしまうだけではないでしょうか。
そんな自らの首を絞めるような道をグーグル・ヤフーが進むとも思えないし、仮にそうなったとしたら、新陳代謝が大きいネットの世界のこと、取って代わるプレーヤーが代替手段としていくらでも出現するんじゃないかと思います。

何となくこの論文を読んでいると、今の独禁法って、旧来のモノ中心の経済、且つ、相対的にモノが希少であった時代に合わせて作られたものなんだな、と感じました。
モノづくりで高シェアを取るには莫大な設備投資が必要、だから市場を支配されてしまうと簡単には逆転はできない。
一方で、よいモノが希少だったので、価格が高止まりしても消費者は簡単には離反しない。
そういう経済を前提にしてるのかな、と。
ネットでのサービスって、それとはまったく違う世界で、アイデアと技術さえあればあっという間にシェアの劇的な逆転が起こり得るし、成熟社会では質が悪くなればすぐに消費者にそっぽを向かれる。
そういう変化に独禁法がついていけてないのかなという気がします。

グーグルによる検索市場独占は、この論文で書かれているのとは別のところに問題があるような。

同じテーマで明日は別の論者による論考があると思われるので、どんな感じなのか楽しみにしています。

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