そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

生前退位の考察

2016-08-12 22:24:39 | Politcs
今朝の日経新聞に、天皇陛下による先日の「お気持ち表明」を受けての世論調査が出ている。
生前退位を容認する率は、89%と極めて高い。

皇室に関わる現行の制度が作られた当時には考えられなかった超高齢化社会となった今、制度が時代に合わなくなっているのは明らか。
天皇に「生涯現役」を強いるのは無理があるし、だからこそ「お気持ち」に共感する人が多いのは当然のことと思う。

一方で、象徴天皇制における生前退位をどう考えるかは、非常に難しい問題だ。
象徴天皇制においては、天皇はかつてのような為政者・権力者ではなく、存在している限り象徴である、という考え方は成り立ち得るし、寧ろそう考える方が素直にも思える。
国民統合の象徴たる天皇の地位には生涯在り続けていただき、高齢により負担の重い国事行為については代行者を立てるというソリューションだ。

これは、現行制度でも認められている「摂政」を置けばよいのではないか、という案に通じる。
Wikipediaによると、摂政は、「法律上の原因(天皇が成年に達しない時、重患あるいは重大な事故といった故障によって国事行為を行うことができないと皇室会議で判断された時)の発生により」設置されるとのこと。
上記の「重患あるいは重大な事故といった故障によって」という部分を、高齢で国事行為に耐えきれない場合にも適用できるように制度手当てをすればよいのではないか、という案。
ただ、摂政という言葉の響きは、天皇が為政者だった時代の名残りを色濃く感じさせる一方、代行者というニュアンスが強くてやや重みを感じさせない面もあるところに難しさがある。
天皇ではないが、天皇と同等の象徴性を以て国事行為を代わって行なう者、という存在が求められる。
結局、天皇に代われる者は天皇しかいない、だから生前退位なのだ、というのが陛下の「お気持ち」の真意と解釈できる。

では、仮に生前退位を是とするとして、その要件はどのように定めるべきか。
天皇自身の良識に任せた意思表明に基づき、皇室会議などで有識者の判断を入れて結論を出す等の制度設計になることが予想できるが、何れにしても恣意が入り込む余地があることは否定できない。
本当は、例えば一般では後期高齢者相当の75歳以上でないと生前退位は認めない、とか客観的に判断可能な必要条件があったほうがよいとも思うけど、皇位にそんな定年制みたいなのを適用するのが相応しいかと問われれば答えに詰まってしまう。

考えれば考えるほど論点百出で悩ましい。
陛下も、国民と政権に対して随分と重いボールを投げかけたものだ。
どうせいつかは考えなければならない課題をここまで先送りしてきたことが悪いのだが…

しかも、これで皇室典範改定とかなると、同じく棚上げして見ないふりしてきた女性・女系天皇や女性宮家の問題も蒸し返されることになり収集がつかなくなる。
いっそのこと女性・女系天皇、女性宮家についても「お気持ち」をお示しいただけないものか。

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