ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

映画「バトル・シップ」

2012-04-24 | 映画

 

先週末は「The Iron Lady」に続き、この「Battleship」を観てきました。
ところが、バトルシップ鑑賞後、エリス中尉は毎年恒例の「春の高熱祭り」に突入してしまい、
風邪でもないのに40℃の熱が出て、一応病に伏しており、インターネットも見られない状態。
それでもこの稿だけは、なんとか一日も早くアップしたい!という執念で書いております。
しかし、やはり高熱というのは人の判断力とか、注意力を散漫とさせるのか、
絵をアップしてから見直すと、誤字脱字が三か所も見つかりました。
この調子で果たして文章がまともに書けるのか、我ながら危ぶまれるのですが、それでも書く。
一日でも早くこの映画について皆さんにお知らせするために。
なぜなら、このブログに来て下さる方なら、この映画、無茶苦茶楽しめると思うからです。

このバトルシップ、ユニバーサル映画100周年記念作品だそうです。
その記念すべき作品に、こういうテーマを選ぶとは。
「ネタばらし」にもなるのですが、もしかしたら
「それなら観にいってみようかな」と思う方がいると信じてあえてここで言うと。

かつてガチで戦い合ったアメリカと日本が、今、その同じ真珠湾で外敵と戦う。


エイリアン襲撃のシーンのCGは、いかにも「ああ、トランスフォーマーと同じ製作者だからね」
と言うものではありましたが、そっちは全くこの映画にとって見どころではないのよ。
わたし的には。
でも、一言だけ言わせてもらうと、トランスフォーマーの時も思ったけど、このCG、
いまいち「重力感」が感じられないのはなんとかならんものか。
なんで、こんなに巨大なモノがこんなに素早く動けるんだ?みたいな。


さて、「バトルシップ」。
事件は、環太平洋海軍合同演習真っ最中に起こります。
いきなり日米艦隊の眼前、太平洋上に現れる謎の物体。
襲いくるエイリアンの軍隊。
それになすすべもなくやられてしまう「サンプソン」と「みょうこう」(T_T)

余談ですが、このイージス艦の英語訳は
Guided Missle Destroyer
で、つまりデストロイヤー=駆逐艦なのですが、(菅野大尉のことではなくってよ)
我が自衛艦だけが英語ではデストロイヤーを名乗りながら日本語では「護衛艦」なのです。
「駆逐」はだめで「護衛」ならいいと・・・。
なんだかなあ。
駆逐せずに護衛することができるのかと。

主人公は、米海軍イージス駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズ乗り組み、ダメ士官のアレックス。
そのダメぶりは、なぜか恋人のパパである司令長官シェーン提督の耳にも入っており、
アレックスはこの非常事態が無ければ「上陸後ただちにクビ」確定。

ところがJPJの上官は全員戦死。アレックスが最上位で指揮官になってしまいます。
絶望する下士官たち。(わかる)

下士官に具申されて初めて海上の「みょうこう」の乗員を救出することに気づくほど、
当初からまったくいいところなしのアレックスは、海上から救出した自衛隊イージス艦
「みょうこう」艦長の永田(これがまた無茶苦茶優秀)に指揮を譲ります。

ところがこのアレックス、戦ううちにだんだんと覚醒して、最後には永田もびっくりの大決断。
エイリアンを撃退、地球は救われ、めでたしめでたし。

という内容なのですが、いたるところに、「キーワード」がはめ込まれているのです。
それは、かつて同じ真珠湾で起こった、あの出来事に全てがまつわっています。

アレックスと永田との個人的関係が、日米のそれを暗示しているのも見ものです。
サッカーの試合でわざと顔を蹴った蹴らないの大騒ぎをし、次にばったり会ったトイレで殴り合い。
そんな二人が、いつの間にか手を取り合い、共に闘い、相手を認めあうに至る。

それはいいとして、専守防衛が骨の髄まで沁み込んでいる我が国の自衛官が、
他国の軍人相手に殴りかかりますか?
「みょうこう」の艦長(階級は一佐、つまり大佐)ともなると、さらにありえん。
さらに少尉のアレックスが先に手を出したというのも考えにくい。

それに、アレックスは、プーな生活を兄にどやされ海軍入りをした、という設定なのですが、
シーンが変わったらもう士官になっていて、おまけに意中の女性まで恋人にしている。
ダメ士官という設定の割には、ここまで順調過ぎませんか?
こんな早く士官になれるのなら、そんなにダメじゃないんじゃない?

と、まあ、映画的御都合的な突っ込みどころ満載の設定には、この際眼をつぶりましょう。


ところでこの映画の題、「バトルシップ」って、何のことだと思います?
「バトルシップ」というゲームをしたことのある方は、勿論、ここで実際に描かれる戦闘シーン、
「G-4攻撃!」「外れ」「I-2攻撃!」「命中!」
というゲームのようなノリのイージス艦の戦闘シーンにワクワクされるでしょう。

しかし、この映画におけるバトルシップ、その主役は?
「みょうこう」?「ジョン・ポール・ジョーンズ」?「サンプソン」?

いずれも違うんですね。

それは・・・、戦艦ミズーリのことなのです。

ミズーリと言えば、あれですよ。
かつて日本と戦い、そして日本の降伏調印式がその艦上で行われた、あの戦艦。
エイリアンとの戦いに、この記念艦ミズーリを引っ張り出してくる。
これが、実はこの映画一番の見どころなのです。

そしてそのとき、合同演習の開会式に招待されていた退役軍人のじいさんたちが
「おう、若えの、そいつは俺たちでないと動かせんぜ」
とばかりに、スローモーションでばーん!とあらわれるシーン。

あれ・・・なぜか涙が・・・・。


この映画と(あまりに業腹なのでいまだに観ていない)映画「パールハーバー」との違いは
「昔のことは昔のこと、これからは、日米こうでなくちゃ!」
「俺たちはもう気にしてないよ。未来志向で仲良くやろうぜ」的なメッセージを
(特に)日本に向けていることでしょう。
どこかで震災後の日本に対して、「日本には俺らがついてるぜ!元気出せよ」
みたいなサービスだという映画評を見ましたが、そういう面もあるかもしれません。

対して、映画の中で、謎の兵器が街を破壊したそのとき、
「中国政府に確かめたところ、我が国のものではないと表明している」とか
「北朝鮮のものではない」ということをニュースの形で言わせています。

北朝鮮はともかく、中国という国の野心を、アメリカがかなり警戒するレベルに来ている、
というニュースを最近も南沙諸島の件で見ましたし、この映画にも見られるように、
アメリカが中国を敵対する国と位置付けているというのはかなり真実かもしれません。
そこで、

「万が一、中国と戦争することになったら、日本はアメリカの味方だからよろしく」

ってメッセージが、日本と中国に向けて込められてたりして・・・。
常識的に見て経済大国同士が戦争なんて、クラウゼヴィッツに聴いてもあり得ない話なんですが、
今後はジャイアン同志の「盟主争い」「覇権争い」っていうのがあるからなあ。

しかしながら、現実はさておき、このたびはハリウッドムービーにありがちな

「U.S.A! U.S.A!」(トモダチ作戦、ありがとう。助かったわ)
「ニッポン(ちゃちゃちゃ)!ニッポン(ちゃちゃちゃ)!」(ガチンコ勝負したからこそ、俺達わかりあえるんだよな)

みたいな単純明快な快感に身を任せるのも、また一つの楽しみ方でありましょう。


最後に、我がイージス艦「みょうこう」が大破沈没してしまう件。
これまで自衛隊は「国民の税金を投入して作った自衛艦が破壊されるなどというシーンは困る」
という姿勢であったとどこぞで聴きましたが、このたびの破壊許可の陰には、なにが?

「そのかわりナガタ艦長を活躍させるから」って口説かれたのかなあ。