イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝49

2013年08月08日 | 預言者伝関連

150.ハイバルの城壁に向かうイスラーム軍:
  信徒たちは、戦いを始める前の最後の夜をハイバルの近くで過ごしました。ユダヤ人たちは、まだそのことに気付いていませんでした。預言者(祝福と平安あれ)は、目的地に暗くなってから到着した場合、朝になるまでそこに近付かないのが習慣でした。そのため朝になって礼拝を捧げた後に、信徒たちと出発しました。代わってハイバルの住人は農具を持って作業のために外出したところで、まだ何も気付いていませんでした。それでも軍勢を見つけたときには、「ムハンマドだ!なんてことだ、ムハンマドと軍がいるじゃないか!」と叫び、一目散に自分たちの家に逃げ帰りました。そんな様子を見た預言者(祝福と平安あれ)は、「アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)!ハイバルは滅びる、アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)!われわれが彼らの土地に攻め入ったとなると、警告を受けた者達の朝の目覚めは悪いものとなることだろう」と言われました。

  預言者(祝福と平安あれ)はご自身の陣営に小屋をお造りになりました。そこにハバーブ・イブン・アル=ムンズィルが来て、言いました:「アッラーの使徒さま、これはアッラーがあなたさまに準備し給うたものですか、それとも戦における戦略ですか?」彼(祝福と平安あれ)は言われました:「いや、戦略です」ハバーブは続けて言いました:「アッラーの使徒さま、ここは敵の砦(とりで)に近すぎます。あの砦の中には、ハイバルの戦士全員が潜んでいるのです。彼らはこちらの様子を全て把握していますが、私たちは彼らのことが分かりません。その上、彼らの弓はこちらにすぐ届いてしまうのに、私たちの弓はあちらには届かないのです…そういったことからも、陣営の場として、危険のない場所をお命じください。」預言者(祝福と平安あれ)は言われました:「ではそれを採択しよう」そして違う場所へ移動することになりました。

  ハイバルに近づいた瞬間、「止まりなさい」と彼(祝福と平安あれ)が言うと、兵士たちは歩みを止めました。そして言われました:「アッラーよ、七つの天とそれらが覆う全てのものの主よ。七つの大地とそれらが持ちあげる全てのものの主よ。悪魔たちと彼らが迷わせる全てのものの主よ。私たちはこの村の善きもの、村人の善きもの、そこにあるあらゆる善きものをあなたに求めます。そしてこの村の悪、村人の悪、そこにあるあらゆる悪からの御加護をあなたに求めます。さあ、皆、アッラーの御名前のもと、進みなさい。」

151.勝利を与えられた指揮官:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はハイバルの砦(とりで)を一つ一つ開いて行きました。まず一つ目に開いたのはナーイムの砦でした。

アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はハイバルの戦の際に言われました:《アッラーがその者の手によって勝利をもたらしたまい、アッラーとその使徒を愛し、またアッラーとその使徒も彼を愛する者に明日、旗を渡そう。》

人々は朝起きると、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)のもとに向かいました。それぞれ皆、旗を望んでいたのです。そこでアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言われました:《アリー・イブン・アビーターリブはどこにいる?》皆が言いました:アッラーの使徒さま、彼は目が痛いと訴えています。彼(祝福と平安あれ)は言われました:《彼に使いを送りなさい。》そしてアリーが連れて来られました-ムスリムの伝承には次のようにあります-:サラマ曰く:アッラーの使徒さま(祝福と平安あれ)は私をアリーにお送りになったので、目の調子の悪いアリーを彼(祝福と平安あれ)のもとにお連れしました。アッラーの使徒さま(祝福と平安あれ)は彼の両眼に唾を吹きかけられました。すると、まるで痛みなどなかったかのように治りました…」そしてアッラーの使徒(祝福と平安あれ)はアリーに旗をお渡しになったのでした。アリーは、「彼らが私たちのようになるまで、私は彼らと戦い続ける」と言いました。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はアリーに忠言しました:「落ち着いて、彼らのもとへ向かいなさい。そして彼らをイスラームに誘い、至高なるアッラーに対する彼らの義務について知らせなさい。アッラーに誓って、アッラーがあなたを介して一人の人間を導くことは、あなたが赤ラクダを所有することよりも良いことなのだ。」

アリーは信徒たちと共にナーイムの砦に向かい、まずユダヤ人たちをイスラームに誘いました。しかし彼らは呼びかけを拒否したので、彼らの王であるムラッハブとの一騎打ちでアリーは彼を倒しました。次に、ヤースィルというムラッハブの兄弟が現れ、アッ=ズバイルはわしと戦うか?と挑戦してきました。アッ=ズバイルの母親であるサフィーヤが「アッラーの使徒さま、彼は私の息子を殺すのでしょうか?」と心配して言いましたが、「いや、あなたの息子があの男を殺すのです」と言われました。するとその通り、アッ=ズバイルが敵を殺しました。

  このナーイムの砦における戦は苦しいものになりました。ユダヤ人側で数名の死者が出たため、敵側は信徒たちの攻撃を防げなくなりました。この戦いは数日間続いたとも言われています。信徒側も苦しみましたが、ユダヤ人たちはムスリム軍には勝てないと希望を失って、アッ=サアブの砦に移動したため、ムスリム軍はナーイムの砦を開くことができました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P313~314
②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P259~262)